「泡盛」おすすめの銘柄とおいしい飲み方
沖縄の海の幸・山の幸を味わうならば、地の酒を選びたい。沖縄生まれの泡盛は独特の香りとすっきりとした喉ごしが魅力。発祥の地で飲む一杯は格別の美味しさです。個性豊かな銘柄に多彩な飲み方、初心者でも楽しめる泡盛から上級者向けの古酒まで、泡盛のイロハを紹介しましょう。
![長い年月甕の中で熟成され、風味を増す泡盛 長い年月甕の中で熟成され、風味を増す泡盛]()
600年以上の歴史を持つ泡盛は、日本最古の蒸留酒と言われています。その源流は東南アジア諸国に始まり、沖縄で独自の進化・発展を遂げました。現在は県内で46酒造所1協同組合から個性豊かな銘柄が販売され、日本国内のみならず、「AWAMORI」として世界へ魅力を広げつつあります。泡盛の歴史からタイプ別のおすすめ銘柄、一風変わった飲み方や料理との相性まで、泡盛の楽しみ方を達人に教えてもらいました。
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更新日/2023年1月
日本最古の蒸留酒・泡盛の歴史に触れる
![泡盛まさひろギャラリーに並ぶ泡盛の歴史がわかる昔の醸造道具 泡盛まさひろギャラリーに並ぶ泡盛の歴史がわかる昔の醸造道具]()
泡盛の歴史は15世紀末までさかのぼります。海洋国家として中国やタイなど、東南アジア諸国と盛んに交易を結んだ琉球王朝時代、衣食住さまざまな文化とともに蒸留酒の製造技術が伝えられました。「泡盛は中国からの冊封使(使者)をもてなす歓待の酒。1671年には薩摩藩を通じて江戸幕府に献上されるなど、琉球王国の歴史とは切り離せない存在でした。一口含めば血行を促進し、体が温まります。当時の江戸の人々は薬として珍重していたようです」と達人の照屋さんは教えてくれました。
泡盛の基本的な原料は主にタイ米・黒麹・水・酵母、この4つだけ。黒麹を使用した蒸留酒は世界的にも珍しいですが、温暖で多湿な沖縄では、雑菌に強いクエン酸を多く生成する黒麹が必要不可欠でした。夏の暑さでも腐敗を防ぎ、特色あるコクまで引き出す。当初は琉球王府を中心に製造された泡盛でしたが、次第に県内各地に浸透し、民衆に広がり親しまれるようになりました。
初心者におすすめの泡盛とおいしい飲み方
![口当たりがまろやかな減圧蒸留方式の泡盛 口当たりがまろやかな減圧蒸留方式の泡盛]()
現在は約600もの銘柄がそろう泡盛ですが、どれを選べばいいのか迷うところです。照屋さんに聞くと、初めて挑戦する人は減圧蒸留で造られた泡盛がおすすめだといいます。「減圧蒸留方式は1983年に請福酒造が初めて泡盛に用いた技術です。伝統的な常圧蒸留に比べて沸点を低く保つことで泡盛独特の臭いが消され、フルーティーな飲み口に仕上がります」減圧蒸留の代表的な銘柄は同酒造所の「請福マリンボトル」。ほかにも、瑞穂酒造の「ender(エンダー)」、比嘉酒造の「残波(白)」なども初心者に最適です。
さらに、美味しく飲むにはちょっとしたコツがあります。水割りの場合、硬水と合わせるとしっかりとした飲みごたえを感じ、軟水は柔らかな喉ごしに。カクテル風にジュースを加えたり、シークヮーサーをキュッと絞るのもいいでね。達人のおすすめは、泡盛を注いだグラスにキュウリ・スティックを添えるアイディア。「マドラー代わりにステアしつつ、キュウリをかじる。爽やかな香りが泡盛のクセを緩和しますよ」
香りに酔う。時を重ねた熟成古酒の美味しさ
![熟成古酒は沖縄の酒器「カラカラ」に移す飲み方がおすすめ 熟成古酒は沖縄の酒器「カラカラ」に移して飲むのがおすすめ]()
長期熟成した泡盛・古酒(くーす)の大きな魅力は、なんといっても香りに尽きます。古酒とは泡盛を3年以上寝かせたものですが、「古酒には色々な香りのバリエーションがある」と照屋さん。「特にバニラのような甘い香りのする熟成香、これを持つ古酒は別格です」
香りをよりいっそう開花させる方法は沖縄に伝わる酒器・カラカラに移す飲み方が望ましいですが、ない場合は瓶を一度上下に揺するだけでもいいです。空気に触れると柔らかな口当たりとなり、眠っていた古酒の香りが目覚めます。その後10分以上は熟成香を待つことも大切。長ければ40分、年代物であればあるほど、ゆっくりと香ってきます。例えば、瑞泉酒造の「おもろ10年古酒」はカカオに似たコク深い香りが、池間酒造の「瑞光 古酒」は昆布のような磯の香りがするといいます。この個性的な香りこそ、各酒造所の腕の見せ所といえるでしょう。
お気に入りの泡盛はテイスティングで見つけよう!
![品揃えは約2000本以上!国際通りの「古酒家(くーすやー)」 品揃えは約2000本以上!国際通りの 「古酒家(くーすやー)]()
一般酒(新酒)と古酒、いずれも好みの銘柄を見つけるにはテイスティングするのが分かりやすいですね。2015年にオープンした「イオンモール沖縄ライカム」では1300点もの泡盛を集めた試飲コーナーを設置し、国際通り周辺にも「古酒家」をはじめとした泡盛専門店がいくつかあります。泡盛のソムリエともいえる「泡盛マイスター」が常駐する店も多いので、おすすめの泡盛を気軽に聞くことができます。また、酒造所によっては、見学時に作り手と直接話せる貴重な機会も。照屋さんは定期的に各酒造所を訪ね、その年の出来を自分の舌で確かめるそうです。さらに毎年注目しているのが、10月に開催される「沖縄の産業まつり」。ここでは定番銘柄の試飲だけでなく、酒造所の新作が一斉にお披露目されます。会場となる奥武山公園には県内各地の名産品や屋台も多く出店するため、旅行者も楽しめるはずです。
沖縄料理からスイーツまで。泡盛に合う料理とは?
![美ら海で獲れた鮮魚を刺身で。地産地消の料理にお酒も進む 美ら海で獲れた鮮魚を刺身で。地産地消の料理にお酒も進む]()
沖縄の人々によって育まれた泡盛は、やはりその土地の食材とともに味わいたいですね。元々は琉球の王家や士族層に愛されてきたことから、ラフテーやミヌダル(黒ゴマをまぶした豚の蒸し料理)といった伝統的な琉球料理との相性は言うまでもないでしょう。しかし、この酒のすごさはそれだけではありません。ジャンルを問わずさまざまな料理を引き立て、幅広い食べ合わせが可能です。照屋さんによると、あっさりとしたテイストの泡盛は野菜や果物との組み合わせが美味しく、重厚な飲み口の古酒には肉や魚、島豆腐などのタンパク質が合うそうです。また、スイーツとして楽しむ方法もあります。例えば、宮里酒造所「春雨」の古酒はチョコレートのような風味を活かして、バニラアイスクリームに数滴垂らす。すると思いがけないほど香りが際立ち、泡盛版「アフォガード」と呼ぶべき大人のデザートに変身しました。
「実は泡盛は糖質もプリン体も0%のヘルシーなお酒。スタイルを気にする女性にもぴったりです。洋食や和食にスイーツ、何にでも合うので気軽に試していただけると思います」
県内各地の飲食店では、お品書きに大抵泡盛の文字が並んでいます。多彩な料理とともに泡盛の美味しさを心ゆくまで堪能したいですね。