八重干瀬(やびじ)は、日本最大規模を誇る巨大なサンゴ礁群。宮古島(みやこじま)の北方沖・約5〜15キロの海域に位置し、周囲約25キロ、大小100以上の環礁からなる色とりどりのサンゴ礁には無数の熱帯魚が群がり、宮古島を代表するダイビングやシュノーケリングスポットとなっています。地元では「やえびし」や「やびじ」などと呼ばれており、サンゴ礁が幾重にも重なっているさまから名付けられたと言われています。「日本最大の卓状のサンゴ礁群として重要」という理由から、2013年に国の天然記念物にも指定。広大なサンゴ礁は大きく8つに分かれており、ウル(海藻の名前)、カナマラ(頭)、ウツ(奥)など、よく採れる生き物の名前や地形など、それぞれに方言で名付けられています。
定期船は就航していないので、八重干瀬を目指すにはダイビングやシュノーケリング、釣りのツアーを行っているショップを利用しましょう。宮古島の平良港(ひららこう)からは船で約40分~1時間、池間島(いけまじま)の港からだと約30分で到着できますよ。ボートで池間大橋(いけまおおはし)の下をくぐり、濃紺の深く青い色の沖合を進んでしばらくすると、海の色が鮮やかなエメラルドグリーンへと変化していくのが分かります。そこが八重干瀬の入り口で、やがて一面見渡す限りのサンゴ礁に囲まれます。
また、八重干瀬は普段は宮古島沖の海面下に広がっているサンゴ礁ですが、年に数回の大潮のときだけ海面上にその一角が現れます。特に、潮の干満の差が一年で最も大きい旧暦3月3日の「サニツ(沖縄本島の『浜下り』)」と呼ばれる日の頃(新暦だと4月頃)、サンゴ礁が陸地のように海上に現れるため“幻の大陸”とも呼ばれています。この時期になると、地元の漁師たちが船で八重干瀬に行って漁をしたり、一般の人でも釣りを楽しむ姿が見られますが、環境保護の観点から上陸はおすすめできません。2014年までは“幻の大陸”に上陸する1000名規模のツアーが開催されていましたが、現在は廃止になっています。