「浮島通り」の歩き方 国際通りの路地裏
那覇の国際通りから牧志公設市場への一本道、「浮島通り」には沖縄の今と昔が詰まっています。ファッショントレンドの発信地として注目が集まる通りを歩いてみましょう。
![古民家を再生してオーナーの個性を出すのが浮島流 古民家を再生してオーナーの個性を出すのが浮島流]()
“沖縄を代表するメインストリート”と言えば、那覇の国際通り。沖縄県庁やパレットくもじ前のスクランブル交差点から安里三叉路まで約1.6キロ続き、夜遅くまで賑わいます。
国際通りを初級編とするなら、中級編として沖縄の旅をもっともっと楽しむために、国際通りから足をのばして裏路地へ入ってみましょう。国際通りから牧志公設市場界隈へ向かう「浮島通り」は、戦後すぐから営んできた古い商店に交じって、流行に敏感なオーナーの個性あふれるセンスのいい新しいショップが仲間入りしています。「新」と「旧」が入り交じったチャンプルーな通り、「浮島通り」の楽しみ方を紹介します。
更新日/2015年 12月
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「浮島通り」散策の楽しみ方
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浮島通りの入り口は、国際通りの中ほどにあるローソンが目印です。「細い通りなので、ついつい見落としてしまいがちですが、通りへ入っていくと、独特の雰囲気に包み込まれますよ」と、通りの達人翁長麻貴子さんが語ります。「浮島通りの魅力は、昔ながらの町並みが残っていること。その古い建物を活かしたカフェやヘアサロン、雑貨やファッションの店が道の両脇に並んでいて、ちょっとタイプスリップしたような感覚になるはず」。
国際通りのにぎやかな雰囲気とは対照的に一歩裏道に入れば、通りごとに特色があるのが、このあたりの町の面白いところです。浮島通りも一本道をまっすぐ進んでいくと、あらゆる方向から他の通りと交じわり、迷路のようです。牧志公設市場へ続く「市場中央通り」、「新天地市場通り」、「サンライズなは通り」などのアーケード街を抜けて、市場常連客のおばぁたちも観光客に交じってこの浮島通りを行き来します。古くから地元に根付いた生活の道でありながら、今や沖縄のファッショントレンドの発信地ともなっている、沖縄きってのおしゃれな通りです。沖縄の若者、おじぃ、おばぁ、子どもたち、そして観光客も集まる懐の深い通り、それが「浮島通り」です。
浮島通りに歴史あり
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「もともと浮島通りには、靴屋、貸し衣装屋、薬局、写真館、菓子屋、理髪店などがあって、ここに来ればどんな用事も済ませられる、本当に地元の人たちの生活を支える通りだったんですよ。しかも、刃物店、塗料店、金物店などもあって、大工御用達の道具が揃う通りとしても有名だったと聞きました」と翁長さんが通りの歴史を説明してくれます。「公設市場に買い物に来た人たちが立ち寄るから、常に人の波が絶えることがなく活気に満ちあふれていたそうです。どのお店も年中無休で夜遅くまで店を開けていたと昔からやっているお店のおじぃが話していました」。
今は一方通行のこの通りも、沖縄の本土復帰ごろまでは両側通行で、今とほとんど変わらない道幅を車が行き交っていたといいます。
「浮島」の名は、以前この通りにあった「浮島ホテル」がその由来です。大きなホテルだったので通りのシンボルとなり、やがて通り名としても「浮島」が使われるようになりました。平成になり、浮島通りの通り会では既に無くなってしまった建物名ではなく、「平成通り」に名称を変更しようという意見もありましたが、「それまで馴染んだ通り名を変えることはしませんでした」と達人。
ちなみに「浮島」というのは、琉球王朝時代の那覇の通称で、その名のとおり、海(内湾)に浮かぶ島ということから名づけられました。那覇が昔は島だったとは……。
昔から商売を続けている店舗はかなり減ってしまいましたが、浮島通りの歴史を語り継ぐようにどっしりとした風格のある店を今でも見ることができ、常連客が足を運びます。
通りに魅せられたオーナーと常連客
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現在、浮島通りには、新しい店が年々増えています。オーナーたちは浮島通りに店を構えた理由を「国際通りから一歩入った通りだから」と口を揃えて話します。名の知れたメインストリートの国際通りから中に入り、浮島通りを目指してやってくるお客さんに向けて流行を発信するのが浮島通りのスタイルです。
通りの達人の翁長さんに浮島通りを案内してもらいながら、翁長さんおすすめのショップのオーナーに話を聞いてみました。
「ゆっくり買い物を楽しみたい観光客が浮島通りに遊びにきてくれます。初めての沖縄旅行では、やはり国際通りが中心になるんでしょうね。浮島通りに来る方は2回目以上のお客さんが多いと思います」と沖縄の素材を生かした手作り石鹸を販売している「LA CUCINA SOAP BOUTIQUE」の友寄由美子さんは話します。
「浮島通りはもともと古着屋が多かったんですよ。15年ぐらい前から通りを代表するようなショップが少しずつできて、それに惹かれるようにセンスあふれるショップが増えていったんです」と達人の翁長さんは言います。浮島通りのファッショナブルな雰囲気は若い力で作り出していったのです。
そんなひとりが、アロハショップ「Mountain」オーナーの照屋林山さん。「古くから浮島通りで商売をしている人たちのように、自分の店も何十年もこの通りで、地元の人はもちろん、観光に来られる方からも愛されるようになりたい」と夢を語ってくれました。
インテリア・雑貨を扱う「GARB DOMINGO」の藤田俊次さんは、「裏路地がもともと好きだったんです。ここに店を開こうと思った一番の決め手は、店舗前の街路樹と裏路地の情感ですね」と教えてくれました。
アジアン雑貨「chahatナハ」の志喜屋理恵さんは、「大家さんが古民家に自分たちでペンキを塗ってもいいよと言ってくれたんです。インドの雑貨を扱うにはぴったりの雰囲気だったんですよね」といいます。
「この通りのオーナーさんは、みんなこの通りが大好きで、自分の好きなものを発信する場所として、ここがいい!と決めた人ばかり。沖縄の伝統的なお土産もいいけれど、ここにしかない今の沖縄を探しに来てくださいね」と翁長さん。
その翁長さんが店長を務める「琉球ぴらす」も築50年の物件との出合いが出店の決め手でした。開店したころは、今ほど浮島通りの名が観光客には知られていなかったので苦労も多く、他の店主たちと通りを盛り上げる取り組みを試行錯誤し、ここまで通りを盛り上げてきました。「どの店もこだわって集めたモノや丁寧に手作りされたモノなど、商品に愛情が詰まっています。店の人とじっくり話をすると、モノの裏に秘められたさまざまなエピソードを聞かせてもらえるかもしれません。ただ買い物をするだけでなく、浮島通りでは人と人とのつながりを大切にして欲しいですね」
浮島通りは夜も営業している店が多いので、日が暮れてからのそぞろ歩きも楽しい。ショッピングの後には、カフェやワインバーでひと息ついて、旅の一日を締めくくってくださいね」と翁長さんはこの通りの楽しみ方を付け加えてくれました。