「南大東島」
独自の地形が作り上げた
唯一無二の島をめぐる旅

沖縄本島の東方海上約360km、北緯25度50分47秒、東経131度14分23秒に位置する南大東島。北に約8km隔てる北大東島と相対し、南に約160km離れた沖大東島を含め、大東諸島と呼ばれます。南大東島の港は、太平洋むき出しの岸壁でうねりが強いため、船が接岸することが難しく、停泊しても波の影響を受け易い環境にあります。そのため船の乗客をゴンドラに乗せ、クレーンで釣り上げるというテーマパークのような到着を果たすことができるのです。この体験を目的に、船で訪れる人も多いのだとか。人口約1400人が暮らしており、周囲20.8kmのコンパクトな島なので自転車で気軽に巡るのもおすすめです。

島は全体がお椀型になっているため、ゆるやかな坂道が多いのも特徴。通常の自転車だと地味にきついので、自転車をレンタルする際は電動自転車を選びましょう。高台から島を眺めると、中央にいくにつれてくぼんでいる様子を確認できます。自然がいっぱいなので、車を走らせるだけでも島の爽快感を感じることができますよ。夜になるとあたりは真っ暗になりますが、光害が無い分星空の美しさは計り知れません！星空観賞をするなら西港もしくは北港がおすすめです。運が良ければダイトウオオコウモリやダイトウコノハズク（ふくろう）など、南大東島の希少動物が見られるかも。日が暮れると車道にカエルが現れることが多いので、運転には十分気をつけてくださいね。

南大東島は沖縄の他の離島と比べても珍しい島で、それは長い間、無人島だった歴史が関係しています。というのも、南大東島をはじめて開拓したのは、伊豆諸島にある八丈島出身の玉置半右衛門。そのため、南大東島は八丈島の文化を色濃く受け継いでおり、沖縄と八丈島がチャンプルー（ミックス）になった文化が根づいているといわれます。

中でも人々の注目を集めるのが、年に一度開催される島1番の催事「豊年祭」。毎年秋に行われる豊年祭ではまず、それぞれの字（あざ）ごとに派手に装飾された山車（だし）が走り、荷台からは太鼓の音が聴こえてきます。さらに島民らがお神輿を担ぎ、境内の階段をかっこよく駆け上がる姿も！沖縄県内ではお祭りでお神輿を担ぐ文化がないため、八丈島文化の根付きを感じられます。また、1番の目玉である「奉納相撲（ほうのうずもう）」では、沖縄では珍しい江戸相撲を見ることができ、島中の男たちがこのためだけに一年中身体を鍛えているほど島民にとって重要なイベントで、その本気度もあって毎年かなり白熱するそう。祭りのために年中努力を繰り返しているというから島への愛情をより感じますね。大人同士の相撲はもちろん、中学を卒業して島を出る直前の子どもと親が相撲を行う「親子相撲」も実施され、思わずジーンとくる場面も。最後はお決まりの沖縄文化・カチャーシー（沖縄の踊り）で締め！琉球✕八丈島のチャンプルー文化をひと目観ようと、毎年県内外から人が集まります。その人気により豊年祭の日には毎年飛行機の便も追加されますが、気になる方は早めのご予約がおすすめです。

無人島だった時を経て、明治時代から開拓がはじまり、主にサトウキビが栽培されてきた南大東島。「シュガートレイン（別名：さとうきび列車）」は、その名の通りサトウキビを運搬するために使われていた軽便鉄道で、蒸気機関車やガソリン機関車、ディーゼル機関車などの鉄道軌道がありました。軌間762cm・総延長は約30kmにおよび、最盛期には島中に路線が張り巡らされていたそうです。今もなお、島の数カ所に線路跡が刻まれており、各線路跡も観光スポットとして知られています。
シュガートレイン含む鉄道全般は1917年に敷設され、1983年の収穫期を最後に全廃し、トラック輸送へと変わりました。現在はほとんどの鉄道施設が撤去されていますが、「ふるさと文化センター」隣に、復元された蒸気機関車「2号」、ディーゼル機関車「8号」、貨車、客車が保存・展示されています。現在はシュガートレインを走らせる計画がささやかれているとか、いないとか。

島内にはさまざまな観光スポットが点在しますが、中でも南大東島ならではの独自性が象徴される、不思議なスポットもいくつかあります。例えば「バリバリ岩」や「星野洞」。約4800万年前に誕生した後、フィリピン海プレートに乗って少しずつ移動をし、現在の場所にやってきた南大東島は、現在も1年で北西方向に約4～7センチメートルずつ移動しているといわれています。移動による地殻変動により岩が裂けた場所「バリバリ岩」や、星野洞内の石筍とつらら石のズレなどからは、この島がゆっくりと移動していることを実感します。

また「海岸棒プール」は、太平洋に浮かぶ岩礁をくり抜いて人工的に造られた、プールと称した海。海の中をくり抜いてプールを作るという斬新なスポットですが、そんな造りには理由があります。岸壁に覆われた南大東島は他の沖縄離島と比べ、ビーチなど海に降りられる場所がありません。そんな島に泳げるスポットを作ろうと誕生したのが海軍棒プールなのです。プールと言えど、すぐ隣の海からは波がザブザブ入ってくるため小さな魚もたくさん泳いでおり、シュノーケルにも最適。他ではできない遊泳を楽しむことができます。

ほかにも、かつてシュガートレインが走っていたとされ、島のあちらこちらに点在する線路跡や、ふるさと文化センター内で見ることができる貴重な五右衛門風呂なども必見です。また、南大東漁港付近では、赤、青、黄などカラフルな色が何層にも重なる不思議な石「レインボーストーン」が見られることも！島外への持ち出しは禁止とされているので、くれぐれも持ち出さないように気をつけてくださいね。