粟国島 独特の景観や特産品など魅力多き絶海の孤島
慶良間諸島のさらに北西にある絶海の孤島・粟国島。周囲12.8キロメートルの小さな島ですが、火山活動による特異な景観や粟国島ならではの特産品、フクギ並木や石垣に赤瓦古民家が残る昔ながらの集落など見所はたくさんあります。
![海抜87.6メートル、島の西端にあるマハナ展望台から東を望む 海抜87.6メートル、島の西端にあるマハナ展望台から東を望む]()
那覇市から北西約60キロメートルに位置する粟国島。東部にはリーフに囲まれた美しい砂浜が広がる一方、西部には高さ70メートル以上もある疑灰岩の断崖が数十メートルも続きます。また、北部には鍾乳洞が存在し、多面的なロケーションが楽しめます。
何と言っても粟国島の名前を全国に知らしめたのは、沖縄民謡の大御所を起用し、人気を博したミュージカル的映画『ナビィの恋』(1999年公開)の舞台として。いくつかのロケ地は当時のままの残り、今日なお多くのファンが訪れます。
粟国島の南部にあるメインの集落に目を移すと、樹齢300年からなるフクギの防風林や、石垣に囲まれた伝統的な赤瓦の古民家が数多く残ります。時代とともに失われつつある古き良き沖縄の原風景を見ることができる場所は、沖縄県内でも貴重です。また、ソテツや海水塩、黒糖など、粟国島の風土が生んだ特産品も魅力の1つです。
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ライター/小川 研
更新日/2018年 7月
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火山噴火の堆積物が造り出した粟国島のダイナミックな地形
![溶岩の熱によって生まれた赤い層が特徴の「ヤヒジャ海岸」 溶岩の熱によって生まれた赤い層が特徴の「ヤヒジャ海岸」]()
粟国島は数百万年前の火山活動による堆積物がベースとなってできた島です。そのため、独特な景観が随所に見られます。特に島の南部にある海岸「ヤマトゥガー」「ヤヒジャ海岸」から、西部先端の「筆ん崎」(ふでんざき)にかけて、黒、灰色、赤、白などさまざまな岩や地層がダイナミックな景色を織りなし、かつて火山活動が活発だった粟国島の名残を見ることができます。長い時間をかけて作り上げた大自然の様相は、村指定の名勝地にも指定されています。
火山灰や溶岩が堆積した土壌や島の温暖な気候を活かしたした特産品にも注目したいですね。かつては粟が農産物の中心であり、「粟国島」という島の名前は“アワグニ”が後に転訛して“アグニ”なったものだといわれていますが、現在は主にキビが主要な農産物になっています。また、川が無く水が極端に少ないため、水の少ない環境にも強いソテツが飢饉対策として多く植えられていて、その実を利用した味噌「そてつ実そ」も名物として製造されています。他にも、サトウキビの生産も盛んで、新鮮な原材料をから作られた黒糖の糖度は、県内にある8つの製糖工場の中でもトップクラスに位置付けられています。
海塩工場の伝統行事と島に根付く塩の歴史
![濃縮した海水を竹から流し、循環させる製塩法 濃縮した海水を竹から流し、循環させる製塩法]()
粟国島は製塩との関係も深いです。「粟国の塩」は、島北部にある「沖縄海塩研究所」で製造されており、観光客の見学も受け付けています。同社では40年以上かけて製塩を研究し続けており、にがりや天日塩の販売を全国的に行っています。澄んだ海水から得られる栄養価の高いミネラルが粟国の塩の特徴です。製塩所の自慢は立体式の塩田タワー。施設内に吊るした15000本の竹は高さが約10メートルもあり、海水を上から流し一日に20回海水を循環させます。その工程を一週間以上繰り返し、海水の約6~7倍の濃度に濃縮させた塩水(かん水)が完成します。その後、釜炊きや天日干しを行いミネラル分が豊富な塩ができあがります。
また、旧正月になると島内各所で、歌・口上や舞踊を披露しながら家々を練り歩き、豊穣を祈願する「マースヤー」(沖縄の言葉で塩屋。塩売りを意味する)と呼ばれる伝統行事も有名です。元は旧暦大晦日の夕刻から、塩を、地域で配って歩く風習からはじまったとされており、粟国村観光協会ではガイドツアーも企画されています。
沖縄海塩研究所
【住所】沖縄県島尻郡粟国村東8316
【電話番号】098-988-2160
【交通】粟国港から車で約20分
【駐車場】あり
【営業時間】24時間 ※見学は8時~14時(要事前電話連絡)
【定休日】年中無休
ダイバーたちをひきつける美しい海
![映画「ナビィの恋」で有名な西の浜(写真/粟国村観光協会) 映画「ナビィの恋」で有名な西の浜(写真/粟国村観光協会)]()
開発されていない環境ゆえに、粟国島を取り巻く風景は美しく、どこからでも澄んだ青い海が望めます。例えば、港からほど近い「西の浜」は、映画「ナビィの恋」で感動的なシーンの舞台ともなり、憩いの場として立ち寄る人も多いです。また、東部に広がる天然の砂浜「ウーグの浜(長浜ビーチ)」は、島を代表する天然のビーチ。リーフに囲まれた遠浅の地形で、オンシーズンは海水浴客やシュノーケルを楽しむ人で賑わいます。
さらに、年間を通して中上級クラスのダイバーが集うダイビングスポットも豊富。ダイバーたちの最大のお目当ては、4~7月に島西部のポイント「筆ん崎」にて、高い確率で目撃できる「ギンガメアジのトルネード」。無数の魚影が織りなす巨大な渦は迫力満点です。その銀色に輝く渦の高さはビルの3階分に相当することもあるといいます。
琉球石灰岩による神秘的な鍾乳洞と「むんじゅる節の歌碑」
![高低差のある洞内は、石筍やつらら石など見応えたっぷり 高低差のある洞内は、石筍やつらら石など見応えたっぷり]()
粟国島北部に位置する「洞寺公園(てらこうえん)」では、天然の鍾乳洞に入ることができます。200年以上前に那覇の雲水和尚(うんすいおしょう)という僧侶が問答に負け、島流しとなり、この洞内で生涯を終えたという伝説があり、洞寺という名称もここからきています。公園入口から林道をくぐり抜けると、ぽっかりと入口を開く巨大な洞穴・・・。夏でもひんやりとした洞内は、しっかりとした遊歩道や照明が数十メートルに渡って整備されているので懐中電灯なども必要なく、気軽に訪問することができます。
また公園の入口には粟国島が発祥とされる歌「むんじゅる節の歌碑」とむんじゅる笠を持った女性のブロンズ像が設置されています。「むんじゅる平笠ちゅらむぬや」(むぎわら平笠は美しい)から始まるこの民謡は、実際にあった恋物語や普段の生活が歌われており、琉球王朝時代から庶民に親しまれ歌い継がれています。
体験メニューの数々で粟国島の文化を感じる
![古き良き沖縄の集落を散策(写真/粟国村観光協会) 古き良き沖縄の集落を散策(写真/粟国村観光協会)]()
粟国島の文化を知ってもらおうと、粟国村観光協会は、様々な体験メニューを主催しています。一番の人気は気軽に参加できる「集落散策」。今も残る粟国島の生活習慣や風習、フクギ並木、石垣等を観光できます。また「海岸散策」では、ヤヒジャ海岸近辺の溶岩や凝灰岩(火山灰)を間近に見て触れられます。特に、黒・赤・白からなる3色の凝灰岩は必見。他にも、貝がら・サンゴ・ビーチグラスなどの「物作り体験」。星空観察を楽しめる「自然体験」。海水を使ったゆし豆腐作りなどの「料理体験」。フクギの木などを染料に用いた「染物体験」など。島民とふれ合い、伝統文化を味わえる体験ばかりです。事前予約が必要なので興味があるメニューがあれば観光協会まで連絡しましょう。