自分の子どもに伝えたい平和学習
ひめゆりの塔・ひめゆり平和祈念資料館

沖縄本島南部の糸満市にあるひめゆり平和祈念資料館は、沖縄旅行の際に一度は訪れて欲しい観光スポットです。周辺にホテルなどの宿泊施設は多くありませんが、旅の要になるほど重要な場所なのです。戦争体験者が年々少なくなっていく今、国内唯一の住民を巻き込んだ地上戦となった沖縄戦がどんなものであったのか、元ひめゆり学徒たちの体験と関連資料を通して、若い世代に戦争の実態を伝えています。年間約60万人もの旅行者や修学旅行の生徒などが、平和学習や慰霊、観光でこの地を訪れます。

ひめゆり平和祈念資料館の館内は全部で6つの展示室で構成され、貴重な証言や写真などの資料がわかりやすくまとめられています。例えば、看護要員として動員された少女たち240名が配置された、 南風原の沖縄陸軍病院の様子が展示されている部屋、病院壕を再現したジオラマ、伊原第三外科壕を実物大に再現したジオラマ、生存者の証言映像や、米軍の記録フィルムを見ることができる部屋など。民間人、日本軍、米軍などにまつわるさまざまな情報が集まっています。「戦争の悲惨さ、愚かさ、そして人の命の大切さを後世に伝え残したい」という思いが、ここには生きています。

ひめゆりの塔は、沖縄戦で亡くなったひめゆり学徒・教師の鎮魂のための慰霊碑です。ひめゆり学徒隊の「ひめゆり」とは、沖縄師範学校女子部と県立第一高等女学校の愛称。沖縄戦で、南風原沖縄陸軍病院に動員された女子学生たちの総称を、戦後「ひめゆり学徒隊」と呼ぶようになりました。現在では沖縄観光の主要な交通手段であるモノレール安里駅近くの栄町市場から、大道小学校とお隣りの真和志中学校がある一帯、約1万坪の敷地内に両校と3つの寮がありました。昭和19年（1944）10月10日の十・十空襲では無事だった校舎も、翌年1月の空襲で破壊されてしまいました。

ひめゆりの塔は、終戦の翌年に学徒の遺族らによって建立されました。糸満市には沖縄県立の平和祈念資料館・公園をはじめ数多くの慰霊碑・塔がありますが、最も早く建てられた塔のひとつです。ひめゆり平和祈念資料館が設立されたのは、戦後43年が経った平成元年（1989）6月23日。それまでは、資料館をつくることよりも、失ってしまった学校をまず建て直したいと奔走していました。しかし現実的には厳しいものがあり、断念したといいます。