小倉城 歴史と文化の観光散策
“九州の玄関口”ともいわれる小倉の中心部に位置する「小倉城」。城の周辺には歴史的な文化財に加え、小倉にゆかりのある文人の足跡も多く残されている。のんびりと散策しながら、歴史と文化を堪能しよう。
![小倉城と市役所の間に延びる「小倉城歴史の道」 小倉城と市役所の間に延びる「小倉城歴史の道」]()
福岡県の北部、北九州市の中心部に位置する「小倉城」。北九州市役所が隣接し、商店街や大型商業施設が立ち並ぶ都心部にありながら、周辺には広々とした公園や「松本清張記念館」などの文化施設、八坂神社や小倉城庭園などの歴史観光スポットが集まっている。
古きものと新しきものが混在するこのエリアは、交通アクセスも良く、のんびりと散策するのに最適だ。まずは小倉城天守閣へと向かい、天守閣内を見学してみよう。“小倉城の達人”の案内で、小倉城の見どころを紹介する。
取材/Photo Office K、平成28年(2016)2月
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野趣あふれる野面積みの石垣と、唐造りの天守閣
![小倉城を近くから見上げると、「唐造り」の様子がよく分かる 小倉城を近くから見上げると「唐造り」の様子がよく分かる]()
関ヶ原合戦の功労で入国した小倉藩主・細川忠興(ほそかわただおき)が、慶長7年(1602)に築城した「小倉城」。この城の天守閣には、全国でも珍しい「唐造り」と呼ばれる建築様式が用いられ、4階と5階の間に屋根のひさしがなく、5階が4階よりも大きく膨らんでいる。ななめ下から見上げると、その様子がよく分かる。
小倉城の本丸は、天保8年(1837)に城内から発生した火災で全焼し、2年後に再建されたが、その時に天守閣は造られなかった。その後、幕末期の慶応2年(1866)には第二次長州征討の第一線基地となり、戦線後退の折に小倉藩が自ら火を放って城は焼失した。現在の小倉城は、昭和34年(1959)に再建されて、在りし日の姿を蘇らせたものだ。
建物は焼失したものの、城の石垣は現在も築城当時の姿そのままで、切石を使わずに自然の石を積み上げる「野面積み(のづらづみ)」という技法によるもの。使われている石のほとんどは、同じ北九州市内にある足立山から運んできたものといわれる。
城下町のジオラマのほか、テーマパークさながらの展示や体験が
![海側から眺めた小倉の城下町を再現したジオラマ 海側から眺めた小倉の城下町を再現したジオラマ]()
天守閣の中に入ると、まず目に入るのは、小倉の城下町を和紙の人形で再現したジオラマだ。約1500体の繊細な人形が配されたジオラマでは、当時の小倉の街並みが、城内の武士や城下町の庶民の様子とともに生き生きと描かれている。
小倉藩主・細川忠興の妻・玉(洗礼名ガラシャ)は、キリスト教の信徒としても知られている。忠興は江戸時代の初めに小倉でキリスト教を保護したため、小倉城下には多くのキリスト教徒がいた。また、現在は小倉祇園太鼓で有名な「祇園祭」は、かつては華やかな装飾が施された山車が引かれる祭りだったという。ジオラマには、そういった当時の様子が細部まで活写されている。
2階や3階に進むと、歴史的資料の展示のほかに、体験ゾーンが設けられている。大人でも乗ることができる豪華な造りの大名かごは、スイッチを押すと動き出し、殿様気分を味わえる。他にも当時の暮らしを再現したコーナーや、映像・アニメ、からくり人形で歴史を知る視聴コーナーなど、まるでテーマパークさながらの体験ができる。できればたっぷりと時間をとって、全館をくまなく満喫してほしい。
平安を願い八方をにらむ「迎え虎」と記念撮影も
![ななめから見てもこちらを見ているような“八方睨みの虎” ななめから見てもこちらを見ているような“八方睨みの虎”]()
小倉城で見逃せないポイントの一つが、日本最大級といわれる二つの虎の絵だ。雄の「迎え虎」と雌の「送り虎」からなる雌雄一対の虎の絵は、それぞれ高さ4.7メートル・幅2.5メートルの大スケール。その大きさと眼力の迫力は、来城者を圧倒する。
これら二つの虎の絵は、小倉城が焼失した慶応2年(1866)が寅年だったことにちなみ、城の再建時に大分県の宇佐神宮のお抱え絵師・佐藤高越が描いたもの。幕末の戦乱で焼失した小倉城の再建にあたり、平安への願いも込められているという。
雄の迎え虎は、どの位置から見ても虎が真正面に見える“八方睨みの虎”となっている。絵の前に立って、いろいろな角度から、世の中の八方をにらむ虎の姿を確かめてほしい。写真撮影が可能なので、壮大な絵の前で記念写真を撮る人も多い。
城の最上階から、新しく古き小倉の街を眺める
![小倉城の展望ゾーン東側の眺め。街の向こうに足立山が望める 小倉城の展望ゾーン東側の眺め。街の向こうに足立山が望める]()
天守閣の最上階は、小倉の街が360度見渡せる展望ゾーン。和の風情あふれる小倉城庭園を眼下に見る東側には、小倉の中心エリアが広がる。その街並みの向こうには、小倉城の石垣のために石を運び出した足立山が見える。
南側に転じると、市立図書館と文学館の特徴的なフォルムの建物が目に入る。テレビドラマや映画のロケ地として使われた場所は、こちら側のエリアに見えるので、興味のある人はチェックしてみよう。
かつてはJR小倉駅から小倉城が見えていたというが、現在は背の高いビルが立ち並び、小倉城からも駅の様子は見えない。ここからの眺めは、まさに“新しい小倉”といったところだろう。
松本清張も歩いた道を、のんびりと散策
![小倉城エリアは松本清張なじみの場所でもある 小倉城エリアは松本清張なじみの場所でもある]()
春には桜の名所となる小倉城。城内にはおよそ200本の桜の木があり、多い日には約2000人もの花見客が訪れる。桜のシーズンだけでなく、晴れた日には城内のベンチに腰かけて弁当を広げる人の姿も見られる。時間に余裕があれば、そんなのんびりとした楽しみ方ができるのも、このエリアの魅力の一つだ。
城内を散策しながら西の口門方面に進んでいくと、「松本清張記念館」が見えてくる。小倉に生まれて半生を過ごした文豪・松本清張にとって、小倉城のエリアは、かつての県立図書館や小学校へ通う道があり、なじみの深い場所だったという。小倉城の歴史を堪能した後は、ぜひ文学の世界へ歩みを進めてみよう。