志賀島の古代ロマンと絶景を 現地編集部が徹底ガイド
福岡から日帰りでも観光できる志賀島は、福岡市内からフェリーでも電車でもアクセスが可能です。福岡市内から訪れる際に必ず通る、海の中道はドライブコースとしても人気。この志賀島橋は砂浜だけで続いているなんともインスタ映えポイントですよ。福岡中心部から1時間もかからない距離に位置しますが、海の色が綺麗なこともこの島の魅力です。志賀海神社は、海の神様の総本社とされ、実は隠れパワースポットでもあるのです。歴史的にも知れば知るほど奥が深い、ただ綺麗だけじゃない志賀島の魅力について紹介します。
![海上安全の神として古代より篤く信仰されてきた「志賀海神社」 海上安全の神として古代より篤く信仰されてきた「志賀海神社」]()
古代より大陸や朝鮮半島との交通拠点であったとされる志賀島は、車で渡ることができる陸続きの島。「金印」発掘の地としてはあまりにも有名だが、海神の総本社「志賀海神社」や史跡もあり、歴史スポットが点在している。
また、もう一つの見どころといえば、島の各所から見晴らせる海の美しさ。古代ロマンと海の絶景の魅力について教えてくれたのは、2008年から3年間「志賀島 歴史と自然のルートづくり事業」で志賀島の周遊ルートを整備し、地域を活性化する活動に参加していたNPO法人「グリーンシティ福岡」の浅田真知子さんだ。
取材/江頭 睦美、平成26年(2014)9月
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自然への畏敬の念を覚える、海神の総本社「志賀海神社」
![陸続きの砂州から島へ入って、ほど近い場所にある「志賀海神社」 陸続きの砂州から島へ入って、ほど近い場所にある「志賀海神社」]()
「志賀島の歴史スポットとして、私がいちばんおすすめしたいのは、志賀海神社(しかうみじんじゃ)です。山が迫ってくるような深い緑に包まれて、その山の中腹にあたる境内からは海を見晴らせる。神秘的で厳かな雰囲気があります」と浅田さん。志賀海神社は、三大海神の一つである綿津見神(わたつみのかみ)を祭る海神の総本社。海上安全の神として古代より篤く信仰されてきた。
緑地保全事業などに携わる浅田さんが特に関心を持ったのは、この神社の年中行事だという。「海神を祭る神社でありながら、山を愛でて、その年の豊作と豊漁を願う『山ほめ祭』という神事があるんです。海の恵みを得るには山を育てなければならない、という考え方。自然の摂理にかなった興味深い神事だと思います」(浅田さん)
この「山ほめ祭」があるのは4月15日と11月15日の年2回。県の無形民俗文化財にも指定され、毎回、島外の人々も見物に訪れる行事だ。
島の史跡を巡り、古代に思いをはせる
![沖津宮には、志賀海神社が祭る三神の一人、表津綿津見神を祀る 沖津宮には、志賀海神社が祭る三神の一人、表津綿津見神を祀る]()
志賀島といえば、「金印」が発掘された島。出土したとされる場所につくられたのが金印公園だ。この公園を訪れると、目の前の博多湾を囲むように広がる福岡市の街を眺めることができるので、立ち寄ってほしい。
また志賀島の古代ロマンが感じられる散策コースとしておすすめなのは、島内に10基ある万葉歌碑めぐり。万葉集には志賀島に関する23首の万葉歌が詠まれており、その歌を紹介する歌碑が建てられている。
「女性の観光客の方々がジャンボタクシーでめぐっている姿も見かけますよ」と浅田さん。小学校の敷地内にある歌碑などもあり、すべてを気軽に見られるわけではないが、島を巡る楽しみの一つになる。
島の北側にある、沖津宮(おきつぐう)と仲津宮(なかつぐう)も見ておきたいスポット。この場所には、かつて表津宮(うわつぐう)もあった。その表津宮が千数百年前に島の東側へ移り、現在の志賀海神社が興ったとされている。
「沖津宮は海を渡った小さな島にあって、大潮の時に渡ることができます。女人禁制ですが、渡らなくても鳥居を見ることができますよ」(浅田さん)
海と森。漁村と農村。さまざまな景色に出会える島
![下馬ヶ浜の「休暇村海水浴場」。夏には海水浴客でにぎわう砂浜 下馬ヶ浜の「休暇村海水浴場」。夏には海水浴客でにぎわう砂浜]()
「志賀島の景色の魅力といえば、海と森、いずれも豊かな自然の美しさを感じられることじゃないでしょうか」と浅田さん。志賀島といえば海岸沿いを走るドライブコースとして人気が高いが、島の中心はほとんどが森林地帯。展望台のある潮見公園までのコースも、山道を登るハイキングコースになっている。
「ぜひ潮見公園には行ってみてほしいですね。深い森を見晴らした先に福岡市街まで望むことができるのですが、『海の中道』に続く砂浜の美しさ、さらに福岡タワーなどが並ぶ対岸の景色も新鮮です」(浅田さん)
また、島を一周してみると、北側と南側とで、まったく異なる村の雰囲気も感じられて興味深い。島の南側は志賀漁港と弘漁港がある漁村地帯。北側へまわるとなだらかな地形で、農村地帯が広がっている。島の北側に位置する勝馬地区、下馬ヶ浜から眺める玄界灘も素晴らしい。海水浴シーズンにはたくさんの人が訪れる。
より歩きやすく、さらに見晴らしのよくなった周遊ルート
![3年間でボランティアやイベントの参加者は延べ900人以上に 3年間でボランティアやイベントの参加者は延べ900人以上に]()
浅田さんがNPO法人グリーンシティ福岡のメンバーとして志賀島のボランティアに携わるようになったのは、2008年からのこと。3年間にわたって、志賀島のウォーキングコースを造園の専門家や島内外のボランティアとともに整備した。
「志賀島は史跡もあって、美しい自然にも恵まれていて、本当に魅力的な場所。でも、そこに行くまでのルートが荒れていたので、もったいないと感じたんです」と浅田さん。特に、志賀海神社から潮見公園へ上り、勝馬の集落まで下るコースの一部には山の木々が鬱蒼と生い茂り、通りにくい道だったとか。
「3年かけて一部の木々を除伐したことで、道がぐんと明るくなりました。マイクロバスを走らせても木の枝にぶつかることがなくなり、観光客を案内される旅館の方々にも喜んでいただけましたね」(浅田さん)
潮見公園の周囲も山の木々に覆われていたそうだが、除伐の結果、階段式の展望台に上らずとも、福岡市街をゆったりと見晴らせるようになったとか。
“志賀島に来てくれる人を、もっと増やしたい”と始まった浅田さんたちの活動。ドライブの合間に車を降りて、見晴らしのよくなった志賀島を散策してみてほしい。