加計呂麻島観光でしたい6のこと、17の体験
現地の人だから知っている、加計呂麻島観光の新しい楽しみ方。ありきたりではない“最高”に楽しめる観光情報だけをお届け。あなたの知らない「加計呂麻島観光」の世界へ誘います。
![強い生命力を感じられる加計呂麻島の自然 強い生命力を感じられる加計呂麻島の自然]()
加計呂麻島は、奄美大島南端の街・古仁屋(こにや)港からフェリーでさらに20分ほど渡るとたどり着く人口約1400人の島。リアス式の複雑な海岸線が織りなす島影が美しい。
加計呂麻島は、まるで一つの森のように緑豊かな山が連なり、その小さな入り江ごとに集落が30も点在。島のあちこちにある白い砂浜には、シュノーケルだけで熱帯魚が見られる青い海が広がる。
シマッチュ(島の人)は、自然や祖先を敬い感謝しながら、五穀豊穣・島の安泰を祈る旧暦の行事などを大切にしている。人々の暮らしの中で育まれてきた美しい里を選ぶ「にほんの里100選」にも選ばれている。そんな加計呂麻島に在住の観光ガイド、寺本さんに島の魅力について聞いた。
取材/しらはま ゆみこ、平成26年(2014)2月
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住んでいて居心地がいいから、来た人も気持ちいいはず
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奄美大島を訪れたついでに寄ろうとする観光客も多いが、加計呂麻島は周囲が約150キロもあり、観光しながら島を1周するには1日で回りきれない広さ。スーパーやコンビニはなく、小さな商店がいくつかある程度。宿泊もリゾートホテルはなく、ペンションや民宿が15軒ほど。
派手な観光施設はないが、プライベートビーチのように泳げる青い海や貝殻拾いに夢中になれる白い砂浜、大きなガジュマルや色鮮やかな植物があちこちにあり、圧倒的な生命力を感じられる自然に囲まれている。
集落にはサンゴの石垣が続き、ミャー(宮・庭)と呼ばれる広場や、かつて琉球王国から任命されたノロ神が稲作の祭りを行ったアシャゲという建物が残っている。島の人が自然・祖先信仰をする上で大切にしている聖域が存在し、「昔の沖縄や奄美のたたずまいが、ここには残っている」と言われる。都会の喧噪とは違う非日常的な空気感や、何もせずにただゆったりとした時間を過ごし、一度訪れると虜になってしまう人も多い島だ。
そんな加計呂麻島のさらなる楽しみ方を教えてくれるのが、ガイドの寺本薫子さん。加計呂麻島の達人・寺本さんと一緒に島を回ると、“シマッチュ(島の人)”の暮らしが分かり、何でもない風景にさまざまな魅力があることに気付かされる。
それは何より寺本さんが島に住むことを楽しんでいるからだろう。自然・歴史・文化と何でもござれ。個人的に加計呂麻島の楽しみ方は、寺本さんにガイドをお願いするのが一番だと思っている。
寺本さんが移住前に持っていた加計呂麻のイメージは”海”。だが、住んでみてこの島の奥深さに触れていったという。この島は海流の関係もあり、大和(日本) ― 奄美大島 ― 琉球(沖縄) ― 中国と、北と南からの歴史と文化が重なり移ろっていくところ。シマ唄や伝統芸能にもその影響が見られ、ロマンと伝承がある。
入り江が多いので見る人によってはどこも同じ景色に見えるが、シマ(集落)ごとにも魅力があって、その裏にあるストーリーや歴史を知ってもらいたいとガイドしている。「知れば知るほど面白い島で、伝えたいことがいっぱい。いろいろな土地に住んだ中で、ふるさととして選んだのがこの島。住んでいて居心地がいいんだから、来た人も気持ちいいはず」と笑う。
加計呂麻島を巡るなら、テーマを絞るのがいい
![島内でも最大級の大きさを誇る武名(たけな)集落のガジュマル 島内でも最大級の大きさを誇る武名(たけな)集落のガジュマル]()
寺本さんおすすめの島の巡り方は、1日で一気に回ろうと欲張らずに島を半分ずつ回ること。観光や見てほしいポイントがかたまっている東半分をまずは訪れて、時間や道路の感覚を掴んでから次回来た時に西半分を。また、デイゴやガジュマルなどの巨木シリーズ・戦跡・縄文土器・ロケ地など、テーマを絞って巡るのも楽しい。他に、塩づくり、冬から春にかけて黒糖工場の見学もできる。
加計呂麻島は、映画やドラマのロケも多く、最近はNHK土曜ドラマ『島の先生』(主演・仲間由紀恵)のロケ地に。そのロケ地は、島の集落の作りが分かるところばかりでおすすめ。こういった観光の合間に、どこかで泳いだりするという楽しみ方もありだとか。
加計呂麻島は看板やパンフレット類がまだ少ないが、イチオシは町が作ったガイドブック『まんでぃ 加計呂麻島・請島・与路島をめぐる旅』(発行:瀬戸内町役場まちづくり観光課)。これでしっかり予習して回ると、景色がきれいだと思ったら戦跡だったり、神様が通る道カミミチがあったり、集落の人にとって大事な場所があることも分かる。
それを理解して回ると、“加計呂麻島は100倍楽しい島”(寺本さん)。そして写真に描かれている以上の、いい空気感がこの島にはあるのだという。
シマ(集落)のなかを歩くと、暮らしが見えて面白い
![根っこが空洞のほこらデイゴの中に入ると、子宝に恵まれるとか 根っこが空洞のほこらデイゴの中に入ると、子宝に恵まれるとか]()
加計呂麻島で一番人口の多い集落は諸鈍。琉球との交易の地として盛え、海岸には航海の目印として植えられたといわれるデイゴ並木があり、樹齢推定300年以上。諸鈍湾に沿って長くつづく海岸は諸鈍長浜と呼ばれ、その白波の美しさを乙女の歯の美しさに例えた「諸鈍長浜節」という奄美のシマ唄があり、映画『男はつらいよ』のロケ地として記念碑も建っている。寺本さんは言う。
「諸鈍は歴史もあるし、街並もきれい。歩いてみないと分からない面白さがあるから、ぜひ集落の中を歩いてほしいですね。デイゴ並木も長いので奥まで歩いて入ってみて。サンゴの石垣やT字路には魔除けの石敢当があり、集落に唯一の林商店には美味しい黒糖が売っている。島の暮らしの一端として商店をのぞいて、集落の人との会話も楽しんでほしい」
シマッチュ(島人)との出会い
![シマッチュと出会ったら、まずは「こんにちは!」 シマッチュと出会ったら、まずは「こんにちは!」]()
寺本さんのガイドで島を回ると、道ばたに生えている野いちごや桑の実、バンシロウ(グァバ)などを食べたり、草花の名前を教えてもらったり、畑仕事をしている島のおじぃ・おばぁと会話ができたり。観光客だけでは気付かない寄り道をすると、シマッチュの暮らしを垣間見ることができ、加計呂麻島の旅をより味わい深く印象づけてくれる。
人生のあわただしさから離れ、いい空白の時間が持てる島
![この風景を眺めてると、「何もしなくていい」と思えてくる この風景を眺めてると、「何もしなくていい」と思えてくる]()
筆者は、加計呂麻島からフェリーでほんの20分、対岸の奄美大島に住んでいる。それでも加計呂麻島の港に降り立った瞬間、時間がゆっくりと流れ出すのを感じる。空気の味も心なしか違う気がする。それは寺本さんの言う「加計呂麻島にある清浄感」のおかげかもしれない。
「宗教とは違う、島のみんなの自然を大事にする気持ちが、行事、海や山、空気にも宿っているような。海から戻ってくる神など、人間と仲のいい神様が、この島にいらっしゃるような気がする」 ―― この感覚はいくら口で言っても、実際に体験しないと分からないもの。とにかく“来れば分かる”ところなのだ。
「島のゆったりとした空気感を味わってほしいから、やっぱり泊まるのがいい。最低でも2泊3日かな。朝は波の気配を感じて起きて、昼は気に入ったビーチを見つけてそこに1日いるのもいい。人がいないから、ビーチの独り占め感もすごい」(寺本さん)
島が好きでツアーをやる人が集まっているため、ダイビングやシーカヤック、パドボをしたりも可能。それを1日楽しんで、もう1日は何もしない時間を過ごす。夜は浜に寝転がって独特の湿り気のある夜風を感じ、満天の星空を眺める ―― そんな楽しみ方がおすすめだと寺本さんは言う。
「漆黒の闇で人間以外の生き物の存在や自然に対する恐れを感じることもできるしね。泊まると、長い時の流れに身をゆだねる過ごしかたができるんです。あわただしく来て帰るのは、加計呂麻には合わない。この島では、ネジがゆっくりと回ってぜんまいがほどけてゆく感じを味わってほしい。加計呂麻島に来たら、なにより“時間の贅沢”をしてください。それができるのが、この島です」