柳川の歴史と文化にふれる町歩き
「お堀めぐり」で有名な柳川は、かつて柳川藩10万9000石の城下町として栄えた城下町。昔ながらの白壁の建物や藩主の別邸、柳川ゆかりの詩人や小説家の記念館など点在する歴史スポットを探訪しよう。
![どんこ舟が連なる柳川ならではの光景が見られる どんこ舟が連なる柳川ならではの光景が見られる]()
柳川の観光といえば、柳川城の堀割をどんこ舟でめぐる川下りを楽しんだあと、史跡や資料館をめぐったり、名物のうなぎのせいろ蒸しを食べたりするのが定番。堀割沿いには柳川ゆかりの作家たちの文学碑や歌碑があり、柳川の歴史を知っておけば、よりいっそう楽しめること間違いなし。下船後にゆっくり歩いてめぐるのもいい。柳川藩主立花家の歴史を紹介する国の名勝「柳川藩主立花邸 御花」の庭園はぜひ見ておきたい。
◆その他のおすすめ福岡観光情報
→福岡観光のおすすめ情報10選
柳川の歴史と文化の楽しみ方
![柳川城や堀割を作った田中吉政の銅像 柳川城や堀割を作った田中吉政の銅像]()
10万9000石の城下町柳川は、鎌倉時代から戦国時代に柳川を治めていた蒲池氏が築城した平城が始まりといわれていますが、柳川城が本格的に整備されたのは江戸時代に入ってからのこと。天正15年(1587)、蒲池氏に代わって柳川の領地を得た立花宗茂が柳川城の改修を始めますが、慶長5年(1600)の関ヶ原の戦いで豊臣秀吉に味方したため宗茂は改易され、浪人となりました。その後、石田光成を捕らえた功績によって田中吉政が柳川藩の初代藩主となります。吉政は柳川城の大規模な修築を行い、天守閣や櫓、堀割などが完成。歴代藩主の居城となりました。柳川城は明治5年(1872)に火災で焼失したため、天守跡の高台が柳川指定の史跡として残っているのみです。残念なことに、柳川には歴史的建造物があまり残っていません。一方で、町割りや堀割はほぼ江戸時代のままで、300年前の地図を見ても歩けるといわれるほどです。江戸時代につくられた町並みを眺めながら、お堀めぐりや町歩きが楽しめます。
藩主立花氏と柳川の関わり
![桃山時代から江戸時代に立花家で使われた金箔押桃形兜 桃山時代から江戸時代に立花家で使われた金箔押桃形兜]()
江戸時代のはじめに柳川藩を治めていた田中家ですが、後継がなく二代で改易となります。そこで、大名として福島県棚倉を与えられていた立花宗茂が旧領の柳川藩に復帰します。宗茂は、関ヶ原の戦いで改易した大名で旧領に復帰した唯一の武将です。元和6年(1620)から明治4年(1884)に廃藩置県で藩制度が廃止されるまで、12代にわたって立花氏が柳川藩主を務めました。
元文3年(1738)、5代藩主の貞俶が「御花畠」と呼ばれていた柳川城の敷地内に別邸を移築します。明治期には、100畳の大広間からの眺めを計算してつくった庭園「松濤園」を整備。これが現在の「柳川藩主立花邸 御花」で、平成23年(2011)には庭園を含む7000坪の敷地全体が「立花氏庭園」として国の名勝に指定されました。御花には歴代藩主の甲冑や立花家の歴史を伝える大名道具などを展示する史料館「立花家史料館」、明治43年(1910)に迎賓館として建てられた「西洋館」などがあります。お堀めぐりの終着点の近くにあるので、お堀めぐりとあわせて必須の観光スポットです。
柳川ゆかりの文豪に思いを馳せる
![北原白秋の生家を復元した記念館 北原白秋の生家を復元した記念館]()
柳川出身の有名人といえば、まず名前が挙がるのが詩人の北原白秋。明治18年(1885)に熊本県南関で生まれた白秋は、実家のある柳川で育ちます。実家は江戸時代から栄える商家で、造り酒屋を営んでいました。白秋が16歳のとき、火災で実家の大半を焼失。酒蔵は全焼し、家計が傾きます。そのころから白秋は詩歌の創作にのめり込みはじめ、家出同然で上京しました。以後、43歳になるまで実家のある柳川に帰ることは一度もありませんでしたが、詩集「思ひ出」をはじめ故郷への思いをうたった作品を多く残しています。火災で焼失した実家は昭和44年(1969)に一部復元を行い、一般公開を始めました。館内には白秋の作品や愛用品、デスマスクなどを展示しています。また、昭和60年(1985)の白秋生誕100年を記念して記念館を併設。柳川の歴史を紹介する史料の展示や白秋の生涯をまとめた映像などを上映しています。
白秋のほかにも柳川には長谷健や檀一雄などゆかりの文人がいます。北原白秋生家・記念館から車ですぐのところにある無料の足湯「からたち文人の足湯」では、白秋をはじめ柳川ゆかりの7人の文人の写真や作品などを紹介するパネルを展示していて、足湯につかったまま堀割を眺めたり、文人の足跡をたどったりすることができますよ。
柳川発祥のうなぎのせいろ蒸しは必食
![柳川発祥のうなぎのせいろ蒸しは必食 柳川発祥のうなぎのせいろ蒸しは必食]()
かつて柳川ではウナギが特産でした。江戸中期頃、老舗のウナギ料理店「元祖 本吉屋」の初代の本吉七郎兵衛が考案したといわれる「うなぎのせいろ蒸し」は柳川の名物料理です。タレをまぶしたごはんをせいろに詰め、ウナギの蒲焼きをのせて蒸します。ウナギは一度焼いたあとに蒸すため香ばしく、ふっくらと柔らかい仕上がり。独特の甘さがあるタレの秘密は、なんと飴。「元祖 本吉屋」などでは、柳川で130年以上続く「大松下あめ」のもちあめを使っています。もちあめはもち米と麦芽だけで作っていて、ウナギにほどよい甘みと照りが出るそうです。柳川には20軒を超えるウナギ料理店がありますが、タレの濃さは店によってなどさまざまです。個人的にはタレが濃い店が好きですが、好みの味を探して何度か柳川に足を運んでみてはどうでしょうか。