1. “新町と古町” 熊本の城下町を巡る

達人指南

現地の達人が旅行の楽しみ方を伝える観光コラムです。人気の観光地から知る人ぞ知る穴場まで、達人だからこそ分かる一歩踏み込んだ“通”な情報を紹介しています。

“新町と古町” 熊本の城下町を巡る

  熊本駅と熊本城の間に広がる新町と古町。今から約400年前に熊本城が築城された際に造られた城下町だ。熊本ならではの伝統工芸や食を伝える店が軒を連ねる、風情あふれる城下町の魅力を紹介する。

古い町屋の風景が残る新町の一角で、代々続く「森からし蓮根」

  熊本城の正面にあたる新町地区は、5つの城門に囲まれた城内町で武家屋敷と町人町が混在していた全国でも珍しいエリア。一方、古町地区は碁盤の目状に整備された“一町一寺”の町割が特徴で、物流の拠点として発展していた地区だ。

現在も新町・古町地区には、熊本の繁栄を支えた城下町の面影を今に伝える風情や人情が残っている。そんな城下町を楽しく巡るポイントを達人に教えてもらった。


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赤垣敏さん
(あかがき さとし)
赤垣 敏さん

城下町巡りの達人
  宮崎県出身。史跡や旧跡など、気になったら独自に調べて回ってしまうほどの歴史好き。18歳の時に新町に住んだことをきっかけに、新町・古町の歴史調査を始める。現在、観光客に新町・古町の街を案内する「和samon青年隊」にてガイドを務める。城下町巡りの案内料は1000円。約60分。問い合わせは☎096-324-4488(肥後象嵌 光助)。

達人が語る熊本城下町の巡り方

樹齢千年を超えるクスノキが7本。パワースポットとしても注目だ

  新町・古町地区は、加藤清正が築城とともに造り、栄えた町。歴史上の有名人が多く訪れた場所でもある。このエリアには、今なお古い町屋が残り、寺社や石橋など、往時の名残を見ることができる。

新町地区には、江戸末期から続く老舗薬問屋の「吉田松花堂」や、坂本龍馬や西郷隆盛も宿泊したといわれる「御客屋跡」など。対する古町地区には、寺が多く存在している。これは、碁盤目状の町割の中心に寺を置いた“一町一寺”の痕跡だ。また、坪井川の荷揚げ場を持つ問屋が軒を連ねた古町は、物流の拠点としても繁栄した場所であり、街中には今も問屋が見られる。

新町・古町は徒歩で巡るといい。なぜなら、新町・古町の史跡は、すべてが目立つ場所にないからだ。大通り沿いだけではなく、道から少し入った場所や、車では入れない狭い路地にも多く残っている。また、歩いて城下町を歩いていると、熊本城を別の角度から眺めることができる。

おすすめは、熊本城の西大手門から出発し、藤崎台県営野球場の方向へ。藤崎台のクスノキ群を見ながら新町へ降りるコース。ちなみに西大手門は、熊本城の正門である。

達人とっておきの城下町散策コース

中世の隈本城の水堀を埋め立てた古城堀端公園

  さて、先ほどおすすめしたコースを実際に歩いてみよう。まずは藤崎台県営野球場の裏手へ。ここには全部で7本のクスノキ群があり、ともに樹齢1000年を超える。かつて熊本の鎮守社である藤崎八幡宮があった場所としても知られる。八幡宮は現在、井川淵町へ移転している。空を覆うほどに枝を伸ばした巨大なクスノキは、パワースポットとして人気を集めている。

そこから新町方面へ降りていくと、熊本の伝統工芸である肥後象嵌づくりを今に伝える「肥後象嵌 光助」と、郷土食である辛子蓮根を提供する「村上カラシレンコン店」と出合う。両店では、職人の技を見学したり、お手軽グルメとして味わったりできる。休憩ポイントとしても最適である。

その後は、かつて隈本城があった場所である古城堀端公園を経由して、熊本城へと戻るルートがおすすめだ。所要時間は30分程度。古城堀端公園は、熊本城築城以前の城壁が残る公園だ。本丸や長塀などの城壁と比べてみるのも面白い。

ちなみに、古城堀端公園の奥には小さなため池がある。1450年から現在まで、涸れることなく、こんこんと地下水が湧き出ている場所だ。池の中にはもしかしたら、刀などの歴史的価値のあるモノが静かに眠っているかもしれない。新町・古町エリアには、熊本の人でも気付いていない、多くのロマンが残っているのだ。

新町・古町地区の見どころを紹介

明治時代創業の冨重写真所

  時間があるなら、紹介したコースから古町地区まで足を延ばすのもよい。古町の唐人町通りには、築100年を超える古い建物を利用したカフェやレストラン、雑貨屋などが軒を連ねる。熊本城下町の風情を楽しむならココだろう。

そのほか、新町エリアにある冨重写真所にも注目だ。1870年創業、小泉八雲や夏目漱石など、来熊した歴史上の著名人の多くもここで撮影されているという。

ところで、冨重写真所と熊本城とは深い関わりがある。明治時代の初期、写真は大変高価で貴重なものであった。西南戦争が始まろうとする時、官軍が写真所に大金を渡し、「熊本城はきっと焼けるだろうから、写真を撮っておきなさい」と伝えたそうだ。

言われた通り、同写真所は天守閣をはじめとする熊本城を写真に収めた。その後、1877年の西南戦争で一部を残し熊本城は焼失した。昭和時代になり熊本城再建の際、その写真が役立つこととなる。今の天守閣があるのは、この写真所があったからと言っても過言ではない。

また、冨重写真所自体も西南戦争で全焼。その後すぐに再建された建物は、国の登録有形文化財(建造物)としても登録されている。

そのように歩いて回れば、より熊本城下町の魅力に触れることができる。ぜひ時間をかけて、ゆっくり散策してみてほしい。


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城下町の歴史と文化に触れるおすすめスポット

熊本城下町で必見の史跡3選

  新町・古町エリアには史跡が点在。中でも、思わず写真を撮りたくなる、風情あふれる三つのスポットを紹介。

  • 精巧な石組みに技術の高さがうかがえる「明八橋」
  • 近くにはお洒落な雑貨屋やレストランも多い
  • ギャラリーとして開放されているレンガ造りの麹室の内部
おすすめポイント
  見た目にも楽しい史跡を選出。明八橋は、日本橋や通潤橋を手がけた名石工である橋本勘五郎が架橋したもので、その技術は見ごたえ十分だ。また、旧第一銀行熊本支店跡は国登録有形文化財にも指定されている旧第一銀行熊本支店の跡は、大正8年に建てられ、そのモダンな風貌が目を引く。兵庫屋本店は、正徳5年(1715)創業の味噌・醤油の店。築120年の赤いレンガ造りの麹室をギャラリーとして開放。江戸時代の台帳や古写真などの展示品を見ることも。

城下町の町人文化を体験できるスポット

  城下町文化や熊本ならではのグルメを体験できるお店をチョイス。職人の技を体感すれば、城下町通になること間違いなし。体験で作った品は土産にも最適。

  • 焼酎ともよく合うからしれんこん
  • 純金と純銀を小槌で打ち込む“象嵌”と呼ばれる作業を体験できる
  • 「My醤油作り」体験で自分好みの醤油を作ろう!
おすすめポイント
  村上カラシレンコン店では、歴史ある郷土料理である辛子蓮根づくりが体験できる。地金に純金や純銀を打ち込んで仕上げる肥後象嵌づくりは、「肥後象嵌 光助」で体験。肥後象嵌とは古くは刀の鍔(つば)の細工などに使われた技術だ。熊本を代表する伝統工芸の技に触れるチャンスである。My醤油づくりは、味噌・醤油の老舗「橋本醤油」で体験可能だ。数種類の醤油がニンニクチップ、カツオなどの材料を使い、オリジナル醤油をつくることができる。

熊本旅行をもっと楽しく。お得な旅行情報

編集部の視点
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新町と古町周辺への交通アクセス情報

車(レンタカー)で

  熊本空港から県道36号・28号経由18キロ、約40分。
熊本駅から国道3号・県道28号経由3キロ、約10分。

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路面電車で

  九州新幹線熊本駅から健軍方面行きで約15分、辛島公園電停で乗り換え、新町方面へ。新町電停下車すぐ。

高速バス

  九州新幹線博多駅から熊本交通センター行き高速バスで2時間

達人が答える城下町のQ&A

Q 城下町案内をお願いしたい場合は?
A 096-324-4488(肥後象嵌 光助)まで電話を。時間や内容など、希望がある場合はその旨も。
Q 新町・古町地区に宿泊施設は?
A 新町・古町地区にも宿泊施設は多数あり。徒歩圏内に熊本のバスターミナルである熊本交通センターがあり、その周辺にも多数ビジネスホテルが点在。
Q 熊本土産でおすすめは?
A 辛子蓮根や馬刺しをはじめ、熊本のお酒などもおすすめ。また、「肥後象嵌 光助」の肥後象嵌を施したペンダントやイヤリング、ネクタイ止めも人気だ。そのほか、創業100余年の下駄づくりの老舗「武蔵屋」の草履や下駄なども見逃せない。
Q おすすめ休憩スポットや食事処は?
A 古民家を利用したカフェ「器季屋カフェ」や、タイピーエン発祥の店といわれる「会楽園」など、新町・古町には休憩スポットや食事処も多い。事前にチェックしてほしい。
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