熊本発!「ローカル旅行」の楽しみ方から予約まで
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達人指南
現地の達人が旅行の楽しみ方を伝える観光コラムです。人気の観光地から知る人ぞ知る穴場まで、達人だからこそ分かる一歩踏み込んだ“通”な情報を紹介しています。
紺碧の海に大小120の島々が浮かぶ「天草」。全国屈指のキリシタン文化が花開いた土地として知られるが、「島原・天草一揆」の後には仏教再建の動きもあり、キリシタン文化と仏教文化の両方が残されている。また、天草西海岸は日本一の陶石の産地であることから、焼き物も見どころだ。
豊かな自然に恵まれた天草は、キリスト教が伝来し、華やかな南蛮文化が栄えた地。キリシタンの歴史を伝える史跡や施設が、天草の各地には点在している。また、日本一の陶石の産地として知られるほか、日本最大級の肉食恐竜の化石が発見された場所でもある。歴史と文化、自然に育まれた島の魅力を、達人に聞いた。取材/熊本の編集プロダクション「ポルト」、2016年 6月◆その他のおすすめ熊本観光情報→熊本観光のおすすめ情報8選九州ローカル案内役が厳選おすすめホテル特集
[たびらいセレクション]
(いわみ りゅうじろう) 岩見 龍二郎さん
入り組んだ羊角湾のほとりにある﨑津集落は、1638年の禁教令以降、激しい宗教弾圧が行われた場所だ。キリシタンの住民たちは、表向きは仏教徒を装って地元の﨑津諏訪神社を大切にしながら、密かに洗礼やオラショ(祈りの声)を伝承していた。アワビの殻やタイラギ貝、一文銭、鏡などを聖器としていたという。その後、250年間にもわたり、彼らは自らの信仰と神社の様式を共生させながら、潜伏キリシタンとして信仰を守り続けた。信仰の自由を許された潜伏キリシタンたちが再び祈りの火を灯し始めるのは、後に明治時代に入ってからのことだ。現在、﨑津集落の中心となる「﨑津教会(さきつきょうかい)」は、穏やかな羊角湾に面した港町にひっそりと佇んでいる。現在の建物は、1934年にフランス人宣教師ハルブ神父の指導のもと、長崎の建築家・鉄川与助の設計によって再建されたもの。「長崎の教会群インフォメーションセンター」で事前に予約をすると、教会の中は見学が可能だ。﨑津教会の外観は重厚なゴシック様式なのだが、堂内は国内でも珍しい畳敷きになっており、現在の祭壇がある場所で禁教時代には弾圧の象徴である“絵踏(えぶみ)”が行われたといわれる。厳しい弾圧を受けながら信仰が守られてきた﨑津の歴史を感じられるスポットだ。キリスト教の伝来から繁栄、そして弾圧と信仰の潜伏を経て復活へ ―― そんな世界的にも類を見ないキリシタンの歴史は、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を構成する資産「天草の﨑津集落」として、世界文化遺産への登録を目指している。
天草は、全国屈指のキリシタン文化が栄えた地だ。キリシタン大名・小西行長が領主だった16世紀末には、コレジヨ(キリスト宣教師大学)やノビシヤード(修練院)が開校。また、天正遣欧少年使節団がヨーロッパから持ち帰った日本初のグーテンベルク式金属活字印刷機が導入され、教科書や辞書、信仰のための本といった「天草本」と呼ばれる29種類の本が出版されている。華やかな南蛮文化が花開いた天草のキリシタンの歴史が、仏教と密接に関わっていることは、あまり知られていない。1637年に過酷な年貢の取り立てと厳しいキリシタン弾圧に追いつめられた民衆が、天草四郎時貞を総大将に蜂起した「島原・天草一揆」が勃発。乱後、一揆に参加した天草の村々は荒廃した。幕府直轄の天領となった天草に、1641年には初代代官として鈴木重成が就任する。重成は僧である兄・鈴木正三を天草に招き、人々の心の安定を図るために、「天草四ヶ本寺」(東向寺・円性寺・国照寺・崇円寺)などの寺を次々と創建していった。「私の好きなお寺は、天草四ヶ本寺の筆頭とされた東向寺。幕府の威光を示すため、本堂には徳川家康をはじめとする歴代徳川家の位牌が祭られています」と達人・岩見さんは解説する。「本堂の天井に花や鳥が装飾された『格天井絵(ごうてんじょうず)』や板戸に描かれた『梅に叭叭鳥図』は見事の一言ですね」重成の下で仏教の再建と天草の復興が行われる中で、住民は必ずどこかの寺院の檀家になるという寺請制度で管理され、仏教徒として暮らすようになった。現在でも当時の様子を垣間見ることがきるのが、キリスト教からの改宗を目的に建立された本渡町の「明徳寺」だ。明徳寺には、山門の入り口に掲げられているキリシタン禁制の高札や、石段の登り口にある彫りの深い顔立ちをした「異人地蔵」、釘で引っ掻かれたような十字架が刻まれた石段などが残されている。キリシタン弾圧の歴史を現在に残すものとして興味深い。
雲仙天草国立公園に含まれる天草には、海と島々の雄大な自然が広がっている。その中でも岩見さんが特におすすめする自然スポットは、御所浦町(ごしょうらまち)だという。天草諸島の南東部に浮かぶこの町は、三つの有人島を含む大小18の島々で構成されている。訪れる際には、上島や下島からの定期船かフェリー、海上タクシーなどを利用する。御所浦には、約1億年前から4700万年前の地層が分布しており、日本最大級の肉食恐竜の化石をはじめ、多くの恐竜や哺乳類の化石が発見されている。「御所浦白亜紀資料館」では、地元で出土した肉食恐竜やアンモナイトなどの化石標本が展示されているほか、資料館は有料だが近くの化石採集場では無料で化石採集体験ができる。二枚貝や巻貝の化石が多く採れるが、運が良ければアンモナイトなどの化石を発掘できることも。ハンマーの貸し出しも無料なので、家族でも団体でも気軽に体験が可能だ。
景色のいい場所として達人・岩見さんがおすすめするのは、天草の夕日の絶景が望める「荒尾岳」と「天草西海岸サンセットライン」の二つ。標高342メートルの荒尾岳の山頂までは、車で登ることができる。山頂の展望所からの視界は360度。東シナ海の水平線を背景に、天草灘に浮かぶ大小の岩礁や、大ヶ瀬・小ヶ瀬などを一望する大パノラマが広がる。また、西海岸沿いを走る国道389号と県道35号は天草西海岸サンセットラインと呼ばれており、その名の通り夕日鑑賞に絶好のドライブコース。特に下島の西海岸では、黄金色に輝く夕日が東シナ海の水平線に沈む光景を見ることができる。天草市では夕日の素晴らしい8カ所について、「天草夕陽八景」として紹介している。もう一つ、景勝地として外せないのが、下島の天草西海岸にある「妙見浦(みょうけんうら)」だ。天草灘の波風によって長い年月を経て作り出された奇岩の連なりは、国指定天然記念物および名勝に登録されている。この妙見浦を鑑賞するなら、与謝野鉄幹・晶子夫妻の歌碑が立つ「十三仏公園」から眺めるのがおすすめだ。奇岩の形が象に似ているため、まるで象が海を歩いているように見える。
天草西海岸で掘り出される天草陶石は、品質・埋蔵量ともに日本一といわれている。この良質の陶石で作られた「天草陶磁器」は強度に優れており、透き通った美しい色が特徴だ。江戸時代の発明家・平賀源内も、「天下無双の上品」と絶賛したという逸話が残る。天草の各地には個性ある窯元が点在しており、茶碗や湯飲み、料理皿など、日常的に使用できる作品が並んでいる。天草観光の目的の一つとして、窯元めぐりもぜひ候補に入れてほしい。ゴールデンウィークや秋などには、「天草西海岸陶器市」なども開催されている。また、天草観光の一日の締めくくりにおすすめなのは、何といっても温泉だ。天草を代表する温泉地としては、松島温泉や下田温泉などが挙げられる。「日本三大松島」の一つに数えられる景勝地・松島にある松島温泉は、やわらかな泉質で“美人湯”とも呼ばれる。下田温泉は、今から約700年前に発見されたと伝えられる天草最古の温泉で、国民保養温泉地にも指定されており、温泉街には十数軒の旅館や民宿、ホテルが並んでいる。天草の夕日とともに味わうのがおすすめだ。観光を楽しむならホテル選びも重要!ホテル・宿を見つけて、旅行に行こう!
天草では各地に温泉が点在している。今回はその中でも、絶景や泉質が自慢の温泉を紹介する。
日本一の陶石の産地・天草で作られる「天草陶磁器」は、天草を代表する伝統工芸品だ。天草の各地に個性ある窯元があるが、近年は若手陶芸家が手掛ける窯元も登場。
下島の天草西海岸は、絶好の夕日鑑賞スポット。海岸沿いを走る国道389号と県道35号は「天草西海岸サンセットライン」と呼ばれ、ドライブ途中に黄金色の夕日が東シナ海の水平線に沈む光景を眺めることができる。達人・岩見さんが特におすすめする3カ所を紹介。
天草には鉄道が走っておらず、JRあまくさみすみ線の三角駅(宇城市)が最寄駅となる。同駅近くの三角港からは、松島港(上天草市松島町)を経由して本渡港(天草市港町)までの定期船(天草宝島ライン)が運航している。空の便では、熊本空港・福岡空港・大阪空港のそれぞれと天草空港(天草市五和町)を結ぶ「天草エアライン」が運航している。ただし、定期船・航空機ともに便数が少ないので、天草旅行では事前に周到な計画を立てる必要がある。天草での交通手段は、交通の便を考えると車(レンタカー)の利用がおすすめだ。
・熊本空港から国道57号・324経由で約85キロ、約1時間50分・天草空港から国道47号経由ですぐ・熊本駅から国道266号・324経由で約100キロ、約2時間10分・松橋インターチェンジから国道266号・324経由で約70キロ、約1時間30分
・熊本市街地から国道266号経由で、車で約2時間40分・九州自動車道松橋インターチェンジから、車で約2時間10分・天草空港から、車で約45分
・「教会入口」バス停から徒歩約1分
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水平線に沈む天草西海岸の夕日
“天草夕陽八景”として、八つの夕日の景色が設定されている天草。天草西海岸に沈んでいく夕日は、温泉街を散策がてら見てほしい絶景だ。赤い夕日が水平線の中へと消えてしまう最後の一瞬までを、しっかり味わい尽くしてほしい。
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