宮崎発!「ローカル旅行」の楽しみ方から予約まで
更新:2019年12月24日
日南海岸国定公園の景色の美しい海岸線沿い、日向灘に面した神秘的な洞窟の中に、あざやかな朱塗りの本殿が鎮座する「鵜戸神宮」。昔から、「鵜戸さん」と呼ばれ、夫婦円満、安産祈願の御利益があると親しまれています。広い境内には、日向神話を彷彿とさせる見所がたくさんあります。
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ローカル案内役 藤田 秀樹(たびらい編集部)
福岡県出身。九州内の食べ歩きスポットを探し続ける編集スタッフ。カメラ片手に友人・知人を巻き込んで観光スポットにも出没。
ブリタニカ国際大百科事典小項目事典に、旧官幣大社として紹介されている「鵜戸神宮(うどじんぐう)」。官幣大社とは、戦前の日本において、朝廷や国から神様に供える幣帛 (へいはく) を受けた神社のことで、社格の高さを表しています。 宮崎市内から日南市にかけては、続く綺麗な海岸線や亜熱帯植物などが、南国ムードを醸し出す観光地。絶景を目的に訪れる人も少なくありません。日南市の鵜戸神宮の広い境内にある最初の門「神門」をくぐり、次に朱塗りの「楼門」をくぐると左手に、「吾平山陵(あひらさんりょう)」の看板が目に入ります。速日峯(はやひのみね)の頂上にあり、祭神の墓で日本書紀にも「葬日向吾平山上陵」と記されています。鹿児島にも吾平山陵があることから、こちらは伝説地として御陵墓参考地に指定されています。 ソテツの木が植栽された南国情緒漂う参道を進むと、「千鳥橋」と「玉橋」のふたつの太鼓橋が見えてきます。太鼓橋を渡ると本殿へと下る階段が見えます。階段を降りて本殿に入る「下り宮」は、全国的にも珍しいとか。太鼓橋の手前には、参拝前に身を清める手水舎がありますが、全身を清めるための「福注連縄」もあります。身のけがれを清めるためのもので、体の悪いところをなでて、罪・けがれを移します。 太鼓橋から見下ろすと、海のすぐ間際、断崖絶壁の横に開いた1000平方メートルほどの広さがある洞窟に鎮座する本殿が見えます。ここが、主祭神・ウガヤフキアエズノミコトの産殿の跡と言われています。神話では、山幸彦が海神の宮から帰ってきた後に、海神の娘である豊玉姫が身ごもったため、この地まで来て御子を産んだとされています。 創建のはっきりとした年代については分かっていませんが、社殿によると、崇神天皇の時代に、6柱の神を祭る「六所権現」と称して創建され、推古天皇の時代に社殿を建て、鵜戸神社と称したのが始まりとされています。 祭神は日子波瀲武鸕鷀草葺不合尊(ひこなぎさたけうがやふきあえずのみこと)で、日子波瀲武鸕鷀草葺不合命の父は山幸彦で知られる彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)で、母は豊玉姫と伝わっています。 782年に、桓武天皇の勅命を受けた天台僧の光喜坊快久が別当の地位に就き、神殿の再建や別当寺院の建立に尽力。天皇より「鵜戸山大権現吾平山仁王護国寺(うどさんだいごんげんあびらさんにんのうごこくじ)」の勅号を授けられたとされています。明治時代に入り、官幣大社へと昇格し、戦後は神社本庁の別表神社へと変わっています。 参拝後、左回りで本殿をぐるりと回ると、鵜戸神宮の神使であるウサギを祀った「撫でウサギ」があります。また、本殿の真後ろあたりには、主祭神誕生の際に使われたとされる「産湯の跡」や、出産後に海神の宮に戻る母・豊玉姫が、わが子のためにと両乳房を岩に貼り付けたとされる「お乳岩」が並びます。 参道から橋を通り、本殿に降りたところは広場になっていますが、参拝者が海に向かって願いを込めて何かを投げている姿が見られます。これが「運玉投げ」。本殿が鎮座する洞窟前に広がる、大小さまざまな形状の岩石の中でも1番手前にあり、亀のようにみえる岩が「霊石亀石」と呼ばれる岩です。霊石亀石は、豊玉姫が出産のために海宮から乗ってきたといわれています。 亀石の背中部分に、60センチ四方の枡形くぼみがあります。亀石の穴めがけて、素焼きした粘土で作られた「運玉」を投げ、見事くぼみに入ると願いが叶うといわれています。男性は左手、女性は右手で、1回につき5個の運玉を投げることができますよ。女性も男性もうまくくぼみに入れられた時は、喜びもひとしおです。
鵜戸神宮の本殿は、八棟造の朱塗りの色鮮やかな社殿です。社殿の装飾は見事で、社殿の上部には唐獅子や麒麟(きりん)、象の装飾が施されています。本殿正面から左回りに回りながら、社殿上部の装飾を見てください。装飾のひとつに、耳に蓮の花を飾った象があります。花を飾っている象の装飾は、このひとつだけです。 また、本殿のちょうど後ろ部分にあるのが、「お乳岩」です。岩からしたたり落ちる水は「お乳水」と言われ、子どもを持つ母親が飲むと、母乳の出が良くなるとか。お乳水で作った「おちちあめ」は、主祭神が母乳代わりに飲んで育ったという伝説があり、子育て中の女性が、母乳が出るようにと願いを込めて購入する姿が見られます。 鵜戸神宮の境内には、さまざまな撮影スポットがあります。最近SNSなどで密かに話題となっているのが、亀石近くの岩に見えるハート型のくぼみです。柵から見下ろすとちょうど真下に見え、縁結びにもご利益がある神様だけに、見つけると良いご縁に恵まれるかも。 ハート型のくぼみのある岩や亀石から少し目を上げると、さまざまな形状をした岩石が目に入ります。「洞窟前の嚴岩」といわれており、人間の手は全く加えられていません。その奇岩の連なりと海とのコントラストで、どこにも類を見ない神秘的な風景を構成。風の強い日には、太平洋の荒波が岩にぶつかり、激しい波しぶきが上がります。 鵜戸神宮の自動車参道沿いにあり、鵜戸崎の南面に広がる波上岩は、その広さから県指定の文化財にも指定されています。「鵜戸千畳敷奇岩」と呼ばれていますが、日向灘一帯で波状岩は見られ、通称として「鬼の洗濯岩」とも。砂岩と泥岩が交互に堆積してできたとされ、長い年月にわたって日向灘の波浪や風雨にさらされてできたものです。 本殿や鵜戸千畳敷奇岩は、宮崎県の有形文化財にも指定。公式ホームページでは、境内の観光名所や地図、基本情報、周辺の観光情報、アクセスなどの旅行者にとって嬉しい攻略情報も分かりやすく解説されていますので、観光ガイドを参考に、順々に巡っていくのがおすすめの攻略法です。 遠くから全景を撮影するのもいいですが、道路沿いにある階段から岩の上に降りて撮影すると、SF映画のような世界観の写真が撮影できますよ。
縁結びや安産の御利益があるパワースポットとしても有名な鵜戸神宮は、昔から夫婦やカップルの参拝が絶えません。そのため江戸時代中期から明治時代まで、新婚の夫婦が鵜戸神宮を詣でる「シャンシャン馬道中」が行われてきました。 「シャンシャン」とは、馬の首にかけられた鈴が鳴る音を表したもの。七浦七峠(しちうらしちとうげ)と呼ばれる険しい道のりを、花嫁を馬に乗せ、花婿が手綱を取って鵜戸神宮へ向かい、宮参りをして家路につくという旅でした。現在はこの風習はありませんが、参拝の様子をそのまま歌った「鵜戸さん参り」民謡大会や、3月の春の縁日大祭に合わせて、「シャンシャン馬道中鵜戸参り」を再現する行事などが行われています。 縁日大祭は、毎年春と秋の2回。五穀豊穣と家内安全を祈願し行われます。縁日大祭の終了後に行われるのが、奉祝行事の獅子舞や、豊栄(ほうえい)の舞、舞楽です。特に舞楽は、県内で唯一鵜戸神宮だけで行われる珍しいもの。鵜戸神宮の神官たちにより雅楽器が演奏される中、納曽利(なそり)と蘭陵王(らんりょうおう)が、毎年交互に奉納されています。神楽(かぐら)とは違う、独特の世界観を堪能できます。 鵜戸神宮の駐車場から続く道のりを進むと、古い石段にたどり着きます。シャンシャン馬道中でにぎわっていた頃からあるといわれている「八丁坂」です。駐車場から隧(ずい)道を抜ける新参道と、吹毛井(ふけい)の港から神門まで続く本参道のふたつがあり、本参道は長さ約800メートル(八丁)の石段が続いています。新参道と合流する八丁坂から神門までの間には数軒のカフェが並び、ノスタルジックな独特の景色を作り上げています。 八丁坂参道に並ぶカフェは、「RT871(アールティヤナイ)」や「Rain forest café三ツ和荘」など、どこも個性的。「RT871」は、和食の店で腕を鍛えた店主が、チキン南蛮やうどん、パスタなどの定食やドリンク、軽食を提供。特にチキン南蛮は、酸味と甘みをおさえたマイルドな味わいでおすすめ。 また「Rainforest café三ツ和荘」は、環境にやさしいこだわりコーヒーを提供。サクサクとしたシュー生地とぎっしり詰まったカスタードが自慢の「シュークリーム」や、マンゴーの実がトッピングされた「クラッシュマンゴー」など、スイーツもコーヒーと一緒に楽しめます。参拝後の休憩や、八丁坂の石段の昇り降りで疲れた体を休ませるのにもぴったりです。 スポット周辺には、イースター島の長老会認定のモアイ像が建つサンメッセ日南や、美しい海岸線を眺めながらのドライブが楽しみな国定公園日南海岸などのおすすめ観光スポットも。交通機関やホテルがセットになった格安ツアーも多数ありますので、出発地や宿泊施設に合わせて選ぶ楽しみもありますよ。
鵜戸神宮 【住所】宮崎県日南市大字宮浦3232 【開門時間】6時~19時(4~9月)、7時~18時(10~3月) 【問い合わせ(TEL)】0987-29-1001 【公式サイト】http://www.udojingu.com/
車で
九州自動車道 宮崎インターチェンジより約45分
電車で
JR日南線「油津」駅にて下車。油津バスセンターから路線バス(宮崎駅・空港駅行)で約20分
バスで
宮崎駅または宮崎空港バス停から 「空港・日南行」または「飫肥行」または「空港・都井岬行」で約60~70分。「鵜戸神宮」バス停から徒歩10分
鵜戸神宮の本殿までは徒歩でどれぐらいかかりますか?
路線バスのバス停や観光バスなどの大型バスが停められ、駐車場にある鵜戸神宮バス停から徒歩10分。地元の人がよく利用する、海岸沿いの参道を進んだ先の第1駐車場からは本殿まで徒歩約5分。
周辺に駐車場はありますか?
海岸参道を進んだ先にある第1駐車場と第2駐車場や、旧国道沿いから入る観光バス駐車場が利用できます。
公共の交通機関を利用して行くことができますか?
宮崎交通の路線バスを使って、宮崎駅や宮崎空港から日南駅や飫肥方面のバスに乗りましょう。宮崎駅から1便だけ出発する「日南レトロバス」という、オシャレなデザインのバスも利用できます。電車はJRの日南線を。最寄り駅は伊比井駅ですが、路線バスがあまり通らないため、油津駅や日南駅まで行って、タクシーかバスを利用するのがおすすめです。
車いす用トイレはありますか?
神門前のトイレは車いすに対応しています。ただし、本殿までの参道には急な階段もあるため、車いすでの参拝は難しいです。
参拝時に気を付けることは?
鵜戸神宮参道は、岸壁沿いの岩の上に造られており、階段や起伏が多く足元が悪いところもあります。また、柵の外は断崖絶壁のため、小さな子どもや高齢者は、足元に充分注意をして参拝しましょう。ハイヒールも、不安定な場所があり転倒防止のため避けたほうが無難です。
おすすめのお土産や名物は?
お乳岩から滴り落ちたお乳水で作る「おちちあめ」や、ショウガがほのかに効いた「おちちあめ湯」は、昔からの名物。ご神使のウサギをデザインした「御朱印帳」や「ハンカチ」、運玉のお守りなどもおすすめ。
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