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達人指南
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石造アーチの水路橋として日本最大級の規模を誇る「通潤橋(つうじゅんきょう)」。江戸時代末期の完成以来、今も現役で周囲の田畑を潤している。橋の中央部分から、放物線を描きながら勢いよく放水される光景は、迫力満点な名物として知られている。
九州のほぼ中央に位置する上益城郡山都町(やまとちょう)は、世界最大級のカルデラを形成する阿蘇南外輪山のほぼ全域を占め、南側は九州脊梁山地(せきりょうさんち)に接している。そんな豊かな自然に囲まれた町に、国指定重要文化財の「通潤橋(つうじゅんきょう)」がある。江戸時代末期、水源に乏しい白糸台地に農業用水を送るために、石造アーチ水路橋として建設された通潤橋。全国で唯一の“放水する石橋”としても知られ、豪快な放水を目当てに全国から見学客が訪れる。郷土の偉人が果たした大事業に触れよう。取材/熊本の編集プロダクション「ポルト」、2015年 11月九州ローカル案内役が厳選おすすめホテル特集◆その他のおすすめ熊本観光情報→熊本観光のおすすめ情報8選
[たびらいセレクション]
(いしやま しんじろう) 石山 信次郎さん
通潤橋のある山都町は、清らかな水と寒暖の差が激しい気候によって、良質な農作物が育つことで知られる。しかし、実は江戸時代までは、水不足に悩まされる不毛の大地だった。中でも深刻だったのは、阿蘇南外輪山の裾野の一角に南北約5キロ、東西約3キロに渡って広がる白糸台地。阿蘇の火砕流堆積物から作られた地質が侵食されることでできた白糸台地は、四方を笹原川、千滝川、緑川、五老ヶ滝川に囲まれている。それにもかかわらず、浸食作用による深い谷に阻まれて川の水が利用できず、民衆は飲料水にも事欠き、荒れた土地が深刻な貧困を招いていた。江戸時代末期、そんな窮状を見かねて、地元の民を救おうと通潤橋の建設に立ち上がったのが、時の惣庄屋・布田保之助(ふたやすのすけ)だった。保之助は38年間の在職中、道路や橋の新設から、用水路の延長、産業振興まで、多大な功績を残している。彼の最後の大仕事となったのが、前代未聞の通水橋「通潤橋」の建設だった。
従来にない技術を要する橋の建設は、困難を極めた。熊本城の石垣の頑強な石積技術にヒントを得た保之助は、全国にその名を轟かせていた八代郡種山手永(現・八代市東陽町)の石工集団「種山石工(たねやまいしく)」に協力を依頼。苦心の末、通常よりはるかに頑丈な石橋を造り上げて、継ぎ目に特殊なしっくいを塗った凝灰岩製の通水管を3本通し、崩壊や漏水を防ぐことに成功した。こうして1854年、全長75.6メートル、高さ20.2メートルの巨大な石造アーチの水路橋・通潤橋が完成。約6キロ離れた笹原川から通潤橋を経て、深い谷が立ちはだかる白糸台地に農業用水が供給されるようになった。その後、白糸台地では大規模な新田開発により棚田が造成され、人々の暮らしは豊かになっていった。
通潤橋は日本最大級の石造アーチ水路橋として、国の重要文化財に指定されている。今日に至るまで地震や洪水の影響をものともせず、約160年前と同じ悠然とした姿を保つ。傍らには布田保之助の銅像が立ち、通潤橋を見守る。ちなみに、保之助の尽力で通潤橋が完成した功績は、熊本県では小学校の社会科の教科書に載っている。ほとんどの熊本県民が知っている郷土の偉人でもあるのだ。そもそも通潤橋は、“通潤用水”と呼ばれる水路の一部。橋北側から取り込まれた農業用水が、橋の上部に埋設されている凝灰岩製の3本の通水管を通り、南側の吹き上げ口から白糸台地へ向かって流れていく。大気圧を利用して、管を使って液体を高い位置に持ち上げて移動させるサイフォンの原理を応用している。この通潤用水の整備により、白糸台地に一昼夜で7万4000立方メートルの農業用水を送ることが可能になった。現在も約100ヘクタール以上の棚田に、4万3200立方メートルの水を供給している。また、2008年には、「通潤用水と白糸台地の棚田景観」が国の重要文化的景観に選定された。通潤橋を含む通潤用水の建設と棚田の築造は、建設や費用、運営、管理などのすべてが地域で行われた。技術や規模などの難易度の高さが、全国的に評価されている。
通潤橋の橋上は徒歩で自由に渡ることができる。欄干などはなく、高さ約20メートルの橋上からの景色には、思わず足がすくむ。足元には十分な注意が必要だ。通潤橋観光の目玉といえば、やはり豪快な放水だろう。橋の中央部分から勢いよく放たれた水は、放物線を描きながら轟音とともに落ちていく。もともと放水は、通水管の中にたまった土砂を洗い流すために行われていたが、50年ほど前から観光客に一般公開されるようになった。現在は土・日曜、祝日を中心に、年間で100日ほど観光放水が行われている。ただし、毎年5月初旬~7月下旬は農地灌漑のため、また12月~3月は石材の凍結防止のため、放水が休止される。これも現役で水路機能を保っているため。年間の放水予定日は事前に公開されており、「山都観光ナビ」や「山都町観光協会」のHPでも確認できる。ぜひタイミングを合わせて訪れ、迫力ある放水を目の当たりにしてほしい。観光を楽しむならホテル選びも重要!ホテル・宿を見つけて、旅行に行こう!
特色の異なる二つの道の駅や、満天の星空を眺められる天文台……。足を延ばしてほしい山都町の見どころを紹介する。
澄んだ川の流れが育んだヤマメや、清涼な気候から生まれたブルーベリー、山都町の山の幸を使った新・ご当地グルメまで。山都町の自然の恵みを存分に味わおう。
九州自動車道御船ICから国道445号経由30キロ、約40分九州自動車道松橋ICから国道218号経由35キロ、約45分※「道の駅 通潤橋」に無料駐車場あり
熊本交通センターからバスで約1時間30分、「通潤橋前」下車徒歩すぐ
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落差は50メートル。豪快に水飛沫を上げる五老ヶ滝
通潤橋を訪れたら、橋から徒歩約10分の場所にある「五老ヶ滝(ごろうがたき)」まで足を延ばしてほしい。険しい峡谷が連なる山都町の旧矢部町エリアには大小さまざまな滝が点在し、“矢部48滝”と呼ばれている。その中でも、最大の規模を誇るのが五老ヶ滝だ。通潤橋を起点に、五老ヶ滝を真正面に望む吊り橋や棚田を通る約30分の周遊コースが整備されている。落差50メートルの滝が、断崖絶壁を垂直に勢いよく流れ落ちる様は豪快かつ美麗。吊り橋からの眺めはまさに絶景だ。平成27年(2015)3月には、同じく“矢部48滝”の一つ「聖滝(ひじりたき)」とともに国名勝に指定された。
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