1. いきなり団子 熊本の郷土おやつの味わい方

達人指南

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いきなり団子 熊本の郷土おやつの味わい方

  熊本を代表する郷土菓子といえば、「いきなり団子」だ。サツマイモと小豆のあんを小麦粉の生地で包んで蒸した素朴なおやつは、昔から熊本の人々に愛されてきたもの。そのおいしさの秘密から誕生のルーツまでを、幼いころからいきなり団子を食べ続けてきた“達人”が紹介する。

いきなり団子のもちもちの皮の中には、サツマイモとつぶあんが

  熊本で生まれ育った人なら、誰もが必ず食べたことがある「いきなり団子」。もともとは家庭で作られていたおやつだったものが、今では県内の専門店や和菓子店などで購入できるようになっている。生地やあんに工夫を凝らしたいきなり団子も登場しており、昔ながらの素朴な味わいはそのままに、新たな味わい方も広がっている。

取材/熊本の編集プロダクション「ポルト」、2016年 3月


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山崎向子さん
(やまさき さきこ)
山崎 向子さん

いきなり団子の達人
  熊本市食生活改善推進協議会顧問。地域の食生活改善を中心とした活動に取り組み、いきなり団子をはじめとする郷土料理の作り方を指導している。指導の回数は、定期的に行うものだけで年間30回~40回を数える。小さいころから作ることと食べることが大好きで、8人姉妹の長女として育ち、多くの人とにぎやかに過ごすことも大好き。現在は、子どもたちに料理を教えるのが楽しみだそう。

サツマイモと小豆と小麦粉。シンプルな郷土菓子

熊本に伝わる郷土菓子、「いきなり団子」

  「いきなり団子」とは、輪切りにしたサツマイモと小豆のあんを、小麦粉を薄く伸ばした生地で包んで蒸し上げた素朴なおやつ。団子屋の軒先にある蒸し器からもうもうと蒸気が上がる様子は、熊本県民には馴染み深い光景だ。

蒸し上がったいきなり団子は生地が半透明になり、中のサツマイモやあんがうっすらと透けて見える。ほんのり塩味が効いたもちもちの生地と、ほっくりとした厚切りのサツマイモと小豆あんの甘さのバランスは絶妙。シンプルながら後を引く味わいだ。近年は、熊本を代表する郷土菓子として、県外からの観光客にも知られてきている。

家庭で食べられてきた素朴なおやつ

サツマイモとあんを一つ一つ手作業で生地に包み込む

  いきなり団子は、いつごろから熊本で食べられるようになったのだろうか? また、なぜサツマイモなのだろうか? ―― 戦後の日本では、サツマイモは穀物に混ぜて主食として食べられていたほか、おやつとしても親しまれていた食材だ。

「私が小さいころは甘いお菓子などはなくて、おやつといえばサツマイモ。学校から帰ると、戸棚の中にふかしたサツマイモが当たり前のように置かれていました。そんなサツマイモをアレンジしたおやつとして、いきなり団子が生まれたのだと思います」と達人・山崎さんは言う。「当時は砂糖が高級品だったので、もちろんあんはなし。塩を効かせた生地でサツマイモを包んだだけの、本当にシンプルな団子でしたよ」

時を経て、やがて小豆のあんが気軽に手に入るようになり、現在のいきなり団子へと変化していった。ちなみに、熊本県は菊池郡大津町をはじめ、全国有数のサツマイモの産地でもある。熊本でいきなり団子が誕生し、親しまれてきた背景には、サツマイモが豊富にあったことも関係しているだろう。

“いきなり”の名の由来は……?

手近にある材料で作れるのも、いきなり団子の魅力だ

  “いきなり”という言葉は、熊本弁では「そのまま」や「直に」、「簡単に」といった意味を持つという。「いきなり団子」という名前は、昔の家庭で祖母の家に孫が急に遊びに来た時、孫のためにおいしいものを作ってあげようと、手近にある材料で得意の団子を作ったことが名前の由来だという説もある。

「いきなり団子は、急に来た客をもてなすために作っていたもの。とにかく簡単に作れるのも魅力ですね」と語る山崎さんは、自身の家庭でも、子どもたちのためにいきなり団子を作っていたという。そんな郷土のおやつを後世に伝えていきたいという思いから、山崎さんは子どもたちやその親の世代に、いきなり団子の作り方を教えている。

一見すると同じ中にも、味の違いが

使用される材料にも、店ごとのこだわりが見える

  いきなり団子は、現在では熊本県内各地の専門店や和菓子店で販売されている。一見どの店の商品も同じように見えるのだが、よくよく注目してみると、店舗ごとに工夫を凝らした作り方をしている。

例えば、生地は塩味を効かせたタイプが定番だが、少し砂糖を加えて甘めに仕上げていたり、小豆のつぶあんが主流のところを、こしあんにしていたり、白あんだったり、あんを入れずにサツマイモだけを包んでいたり……。

また、サツマイモの種類にもこだわりが表れる。甘みが強いものやほっくりとした食感のものなどを、全体の味のバランスを考えながら、店ごとに異なる基準で選び使用している。産地や品種にこだわる店も多いので、食べ比べの際には注目してみよう。

ちょっと変わった“個性派”のいきなり団子も

見た目に華やかないきなり団子も登場

  さらに近年は、バラエティに富んださまざまな“新世代”のいきなり団子が登場している。生地にヨモギや黒糖、桜、ムラサキイモなどを加えたものは、見た目もカラフルで華やかになる。さらには、カレー味や阿蘇辛子高菜味などのおかずのような味に、冷やして味わうタイプや、油で揚げたものまで……。

家庭の素朴なおやつとして誕生したいきなり団子は、現在もさまざまなアイディアのもとで進化を続けている。可能であれば、まずはオーソドックスなものを数軒味わったら、その後は“新世代”のいきなり団子まで手を伸ばしてみてほしい。


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定番から個性派まで、おすすめのいきなり団子を紹介

“定番”のいきなり団子3選

  ほくほくのサツマイモとあんのシンプルな組み合わせは、子どもからお年寄りまで親しめるやさしい味だ。まずはオーソドックスな“定番”のいきなり団子を味わってみよう。

  • 有機栽培のサツマイモを使用した「かんしょや」のいきなり団子
  • 城彩苑の一角にある「いきなりやわたなべ」
  • 好みで藻塩をまぶして食べる「くま純」のいきなり団子
おすすめポイント
  いきなり団子は、生地がシンプルなほど、小さいころに食べていた懐かしい味を思い出す ―― そう達人・山崎さんは語る。「かんしょや」は昔ながらのオーソドックスな味が楽しめる店で、自家農場で有機栽培したサツマイモを使用。「いきなりやわたなべ」は、厚切りサツマイモのほくほく感がポイント。「くま純」のいきなり団子はボリューム満点で、熊本産と宮崎産、鹿児島産などから、季節ごとにサツマイモを使い分けている。

“個性派”のいきなり団子3選

  近年、進化を遂げているいきなり団子は、今やバリエーションの豊富さも楽しめるように。生地やあんに独自の工夫を凝らした個性的ないきなり団子を紹介しよう。

  • 色とりどりで見た目にも鮮やか。新触感の「冷しいきなり」
  • りんご入りの「きなこいきなり」はリピーターも多い
  • 5種類のいきなり団子のセット「照々姫」
おすすめポイント
  「華まる堂」のおすすめメニュー「冷しいきなり」は、その名の通り凍った団子を冷たい状態で食べるいきなり団子。もっちりとした生地と、しゃりしゃりとしたイモの食感は新鮮だ。いきなり団子にきな粉をまぶした「むさし本舗」の「きなこいきなり」は、りんごのコンポート入りで、スイーツ感覚で味わえる。「山水本舗」はバリエーションが豊富で、生地にヨモギやムラサキイモ、黒糖などが練り込まれている。素材の風味とともに華やかな色合いも特徴だ。

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いきなり団子のQ&A

Q いきなり団子の材料は?
A 作り手によって少しずつ異なるが、達人・山崎さんが作る生地は、小麦粉とだんご粉、片栗粉、白砂糖、塩を使用する。中身はサツマイモと小豆のあんのみ。手近にあるシンプルな材料で作れるのが、いきなり団子の特徴の一つだ。
Q 賞味期限はどのくらい?
A 保存料などの添加物は入っておらず、基本的にあまり日持ちしないため、できたてをその日に食べるのがおすすめだ。すぐに食べられない場合は冷蔵か冷凍で保存しよう。
Q 土産物として持って帰りたいのだけれど……。
A 渡すまでに日数を要する場合は、常温での持ち帰りは難しいが、蒸したてを冷凍の状態で販売している店舗も多い。冷凍のいきなり団子は、レンジで温めるか蒸し器で蒸すと、できたてのようなおいしさが楽しめる。
Q 取り寄せも可能?
A 冷凍の状態で販売している場合は、ほとんどの店舗で地方発送を行っている。現地で食べて気に入った店舗のいきなり団子をリピートすることも可能だ。
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