日南海岸 南国ムードのコーストライン
年間を通してさまざまな表情を見せる海と、道沿いに並ぶ南国の花々。かつては“新婚旅行のメッカ”として日本中のカップルが訪れた日南海岸は、今また新たな試みの中で、人々に癒やしを与えるスポットとして注目されている。
![堀切峠から見下ろすダイナミックな景色は、日南海岸の象徴 堀切峠から見下ろすダイナミックな景色は、日南海岸の象徴]()
宮崎を代表する景勝地、日南海岸。日南市・油津を境にした北部40キロ、南部80キロという南北に長いコーストラインが特徴的だ。
沿岸から見える海はもちろん、その波間には、南下するに従って鬼の洗濯板(波状岩)から岩礁の並ぶ荒瀬まで、宮崎ならではのさまざまな海景が広がる。沿道では、県木のフェニックスや県花である浜木綿のほか、色とりどりの南国の花木が見られる。
海岸を通る国道220号線は信号も少ないことから、休日には車・バイクでのドライブや、自転車でのツーリングを楽しむ観光客も多い。昭和30年(1955)に国定公園に指定されてから60年。今また新たな癒やしのスポットとして注目されるエリアだ。
取材/宮崎の地元情報誌「じゅぴあ」編集部、平成27年(2015)7月
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“大地に絵を描く”理念がつくった日南海岸の絶景
![空と海、フェニックスや浜木綿のコントラストが美しい日南海岸 空と海、フェニックスや浜木綿のコントラストが美しい日南海岸]()
日南海岸の景色を語るうえで絶対に外せない人物がいる。その人物とは、故・岩切章太郎氏(明治26年~昭和60年)。バス会社である宮崎交通の創業者で、宮崎を観光地として確立させた立役者だ。
岩切氏は、現在では宮崎の県木となっているフェニックスの植樹をはじめ、県内各地の公園整備など多くの観光開発を、“大地に絵を描く”という理念のもと私財を投じてまで実行。また、宮崎を訪れる観光客にも考えうる限りのもてなしをしたことから、“宮崎観光の父”として各界の著名人はじめ、全国の観光業者にも影響を与えた。
「自然の美、人工の美、人情の美」という観光のあり方は、現在も“岩切イズム”として宮崎の観光業界に幅広く継承されている。そうして描かれた“大地=キャンバス”として美しい風景を今に残す場所が、ここ日南海岸なのだ。もちろん、時代とともに交通網の整備は行われているが、自然と見事に調和したダイナミックな景色は、現在も訪れる人々に変わらぬ感動を与えてくれる。
ゆったりのんびり、自分なりのお気に入りの景色を見つける
![季節や時間によって、さまざまな表情を見せる宮崎の海 季節や時間によって、さまざまな表情を見せる宮崎の海]()
国道220号線から448号線をつなぐ日南海岸沿いの道には、道の駅フェニックスがある堀切峠や、世界で唯一複製を認められたイースター島のモアイが並ぶ「サンメッセ日南」、岩壁の洞穴内に本殿がある「鵜戸神宮」、ジャカランダの花が咲き乱れる「道の駅なんごう」、野生猿の生息する「幸島」など、多目的に楽しめるスポットが点在。ドライブの休憩に使える駐車スペースも多数ある。日本で最初のロードパークとして整備されており、バイクや自転車などでも十分に楽しめる観光道路になっている。
そんな日南海岸を新たな視点で楽しむべく、達人・谷越さんが取り組んでいるのが「ポタリング」での観光の促進。ポタリングとは、自転車やロードバイクなどで、ゆっくりのんびりぶらつきながら巡ることで、散歩ならぬ「散走」ともいうもの。本格的なスポーツ仕様の自転車のみならず、一般的な自転車でぶらぶらと寄り道しながら楽しめるよう、サイクリストの休憩ポイント設置などが計画されている。
磯遊びに釣り、サーフィン、SUP、マリンレジャーも充実
![サーフィンの国際大会も開催されるほど豊富な波質 サーフィンの国際大会も開催されるほど豊富な波質]()
日向灘に面して南北に120キロ続く海岸線だけに、白砂のビーチや浅い岩礁の入り江など海沿いの形状もバラエティに富み、幅広いマリンレジャーやスポーツが楽しめるのも日南海岸の特徴。
休日の引き潮時には、鬼の洗濯板で磯遊びや貝とりをする家族連れなどが見られ、5月下旬あたりからは、ひと足早く訪れる夏を楽しむかのように素潜りやSUP(スタンドアップパドルボード)を楽しむ人々の姿がよく見られる。
特にサーフィンに関しては、太平洋のうねりがダイレクトに届く立地のため、日本はおろか海外の雑誌でも紹介されるほど、その豊富な波質を求めて、世界中から多くのサーファーが訪れるという。国内における“サーフィンのメッカ”として、いくつかのポイントではサーファー向けの施設も整えられている。
また、岩礁の多い日南市~串間市のエリアは、その海中の美しさから国内で初めて設置された「日南海岸海中公園」。グラスボートやダイビングで、その透明度や、テーブルサンゴと戯れる魚たちの姿を楽しんでほしい。
新鮮な海の幸とトロピカルフルーツで南国気分に
![目の前の海で獲れた魚介類や、名産フルーツに舌鼓 目の前の海で獲れた魚介類や、名産フルーツに舌鼓]()
日南海岸に点在する港では、南洋から北上してくる黒潮の恵みにより、一年を通して多種多様な魚介類が水揚げされる。沿道のレストランや飲食店などでは新鮮な海鮮を味わえ、港に隣接した食堂もあるので、海岸ドライブの合間に立ち寄るのもおすすめだ。
料理は、魚の刺身やみそ汁などの和食から、生け簀を利用した炭火焼き、創作フレンチにタイ料理までジャンルもさまざま。特に秋から冬にかけて解禁される伊勢海老料理は、沿道にあるドライブインなどで1500円前後から提供されている。大ぶりでやわらかな食感と滋味を味わおうと、シーズンになると県内外から多くの人が訪れる。
また、宮崎といえば完熟マンゴーに代表されるトロピカルフルーツも名産。ソフトクリームやジュース、スイーツなどに加工されたものが各所で味わえるほか、直売所や道の駅などでは、産地ならではの価格でマンゴーや宮崎原産の日向夏みかん、パッションフルーツ、ライチなどが購入できる。
自然と歴史に触れ、人や動物との触れ合いも楽しめるエリア
![串間市幸島には、芋を洗って食べる“文化猿”の姿も 串間市幸島には、芋を洗って食べる“文化猿”の姿も]()
“日向時間”という言葉をご存じだろうか? これは、(良くも悪くも?)宮崎で暮らす人々の生活リズムを表す言葉で、とにかくゆったりのんびりとした時間の流れのこと。
日南海岸は、海に面して緑豊かな山々が広がるエリアだが、その中にひとたび身を置けば、時の流れを忘れてしまうこともしばしば。波の音や心地よい潮風、鳥や野生動物たちの姿に、ゆっくりと癒やされるはずだ。
また、日南市油津港周辺の路地裏では、運河や赤レンガ倉庫など、タイムスリップしたような光景にも出合える。ぜひ車やバイクを降りて散策してほしい。地元の人々に気軽に声をかけてみれば、意外な歴史話が聞けるかもしれないし、宮崎独特の方言からも、南国リズムを感じとれる。
海と山、人と動物たち……。日南海岸の旅の醍醐味は、その鮮やかな色合いを魅せる景色とともに、ゆったりとした時間の流れを全身で感じることでもあるのだ。