太宰府天満宮で5つの体験 境内アートも盛りだくさん
「太宰府天満宮」は、年間1000万人が訪れる人気の観光スポット。天神さま(菅原道真公)をお祀りしていることから、学問の神として有名ですが、実はそれだけではないディープな魅力にあふれています。天神さまの意外なご利益、アート、自然に触れて、新たな発見をしてみませんか?
![太宰府天満宮。美しく迫力のある楼門は記念撮影ポイント 太宰府天満宮。美しく迫力のある楼門は記念撮影ポイント]()
豊かな自然に囲まれながら、福岡市中心部から車や電車で30分ほどとアクセス利便性も高い太宰府市。その中でも、ほとんどの人が最初に訪れる場所は、ここ太宰府天満宮だ。
太宰府天満宮に祭られている菅原道真(すがわらのみちざね)公は一般的に「学問の神様」として有名だが、単にそのひと言では語れない。学者としてだけでなく、詩人に教育者、政治家とマルチな顔を持ち、日本の歴史に非常に大きな影響を与えた人物だった。
境内には道真公の人となりや歴史を感じられるスポットがいくつもある。深く由縁や背景を知ると、観光への興味ももっと深くなる。参拝だけで帰るなかれ! 太宰府天満宮を最大限に満喫しよう。
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なぜ年間800万人も訪れるのか
![太宰府天満宮。おみくじを結ぶ女性は、埼玉県から訪れたという 太宰府天満宮。おみくじを結ぶ女性は、埼玉県から訪れたという]()
皆さんは、太宰府天満宮建立の由来を知っているでしょうか?
太宰府天満宮に祀られている菅原道真公は、平安時代のすぐれた学者、教育者であり、政治家でした。忠臣として時の天皇に仕えるも、左大臣藤原時平の陰謀によって「大宰府」へ左遷されてしまいます。その後、汚名は注がれないまま逝去。弟子たちは道真公の無念を思いながら亡骸を運びました。この際、棺を引いていた牛が現在の太宰府天満宮の場所で動かなくなったため、「これは神になった道真公のご神託だ」と考えた弟子たちがその場に亡骸を葬り、廟を建てたのです。
つまり、太宰府天満宮は道真公の墓所。全国には道真公を祀る神社が1万2000社ほどあり、そのなかで太宰府天満宮は天神信仰の聖地とされています。これが、数多くの参拝者が訪れる理由の一つだと思います。道真公のご神徳にあやかりたいという人々の願いがここに足を向けさせるのでないでしょうか。
ほかに福岡市内から近く気軽に来られること、安土桃山時代の日本文化を目の当たりにできること、梅や紅葉など四季折々の自然が楽しめることなどが挙げられます。アジアとの交流史の紹介や多彩な特別展を行う「九州国立博物館」と合わせて訪れるのもいいでしょう。
菅原道真公はこんな人
![太宰府天満宮所蔵の菅原道真公の掛け軸 太宰府天満宮所蔵の菅原道真公の掛け軸]()
今から1150年ほど前に京都で生まれた菅原道真公。当時は学問がとても盛んで、学界が大きな力をもった時代でした。抜きんでて学問ができた道真公は、中国語が堪能であったことから外交の際に万葉集を中国語に翻訳して唐に贈ったといわれます。
道真公は、日本で最初の百科事典と考えられる『類聚国史』の編纂も行いました。これは私の考えですが、中国の漢字を日本の仮名の中に訓読みとして振り分けていったのも道真公ではないかと推測します。なぜなら、あの時代に道真公ほど中国語を使いこなし、学問に秀でた人はいなかったのですから。
そういう意味で、彼は「日本文化」の基礎を築いた人といっても過言ではないと思います。およそ800年後の江戸時代に天神信仰ブームが起こったことからも、道真公がいかにすぐれた人であったか、また、いつの時代も人々に尊敬されていたことがうかがえます。
道真公については、趣味もわかっています。子どものころからずっと菊が好きだった道真公は、虎が口を開いたかのような大輪菊をつくっていたのだとか。太宰府に来てからは京より持ってきた本を売って、少年から菊を買っていたそうです。道真公の人間性が伝わるエピソードだと思いませんか?
境内には見どころがたくさん
![境内の御神牛は、頭をなでるとかしこくなるといわれる 境内の御神牛は、頭をなでるとかしこくなるといわれる]()
神社を訪れたら、まず手水舎でお清めをしますね。太宰府天満宮の手水鉢は一枚岩でできていて、約6メートル×約4メートル×約2メートルの大きさは日本最大級。宝満山の御影石を使った立派な鉢です。それから楼門をくぐって本殿へ。この楼門は本殿に向かって前から見ると二重門、裏から見ると一重の山門。一般的に楼門は前後左右対称につくられるので、非常にめずらしい造りといえます。
本殿は天正19年(1591)に、小早川隆景によって再建された五間社流造の安土桃山建築。参拝したあとは右側の欄間を見てください。そこに彫られているのは、中国に古くから伝わる登龍門伝説です。「鯉が黄河を登っていく途中に龍門と呼ばれる場所があって、そこに滝が流れる。その滝を登りきった鯉は龍になる」というもので、鯉に乗っている道真公の姿が描かれています。
化粧垂木には川の神をあらわす瓜紋、海の神をあらわす三つ巴、道真公をあらわす梅紋が刻まれ、これらは本殿を火災から守る役目を担っています。一つ一つの構造や造られた背景を知るとおもしろいですよ。