九州国立博物館 太宰府でアジアに出会うアカデミック&カワイイ
「九州国立博物館」は、古くからアジアの玄関口として栄えた九州・太宰府の地にある人気のアカデミックスポット。日本にいながらにしてアジアの風を感じる体験をしてみませんか?自然あふれる近隣エリアでの、神社参拝やかわいさ満点のカフェ巡りも楽しみです。
![印象的な流線形の屋根は、玄界灘の波をイメージしたデザイン 印象的な流線形の屋根は、玄界灘の波をイメージしたデザイン]()
古くから福岡がアジアとの文化交流の玄関口であったことから、アジア諸地域から渡ってきた品々を中心に収蔵・展示する九州国立博物館。東京・京都・奈良にある国立博物館が美術系であるのに対し、同博物館は歴史系の博物館として設立されている。常設の展示室では800~900点の文化財を展示。年に数回はトピック展示も公開され、いつ訪れてもその充実した展示品をたっぷりと楽しむことができる。また全国的にも珍しい「バックヤードツアー」では、博物館の収蔵庫を見学することができるほか、遊びながら文化財に触れられる展示室「あじっぱ」も人気。子どもから大人まで楽しめる、まさに“体感型”の博物館だ。
取材/江頭 睦美、平成27年(2015)5月
九州国立博物館の設立は、九州人100年の夢
![メインエントランスの天井は、約4000本の丸太を組みあげて メインエントランスの天井は、約4000本の丸太を組みあげて]()
美術行政家・思想家の岡倉天心が「九州に博物館を」という構想を提唱したのは明治32年(1899)のこと。それから約1世紀もの時を経て平成17年(2005)、九州国立博物館が開館した。「地元の方々の粘り強い活動によって、ようやくその熱意が形になった博物館です。設置費用の一部は募金でまかなわれていますし、約16万平方メートルの敷地面積のうち、約14万平方メートルは太宰府天満宮から寄贈されているんですよ」と澤野さん。地域にとって悲願の博物館は、“九州人100年の夢”といわれている。
太宰府天満宮の旧境内、丘陵地にたたずむ蒲鉾型の建物は、玄界灘をイメージした流線型の屋根が特徴的。吹き抜けのエントランスホールでは、九州の杉の間伐材、約4000本を組み上げた天井の迫力に圧倒される。いずれも九州らしさを取り入れたデザインだ。
展示室の舞台裏に潜入。毎週日曜日の「バックヤードツアー」
![窓の向こうに見えるのは、温度・湿度が厳密に管理された収蔵庫 窓の向こうに見えるのは、温度・湿度が厳密に管理された収蔵庫]()
博物館を訪れても、通常ならば目にすることのできない展示室の裏側。九州国立博物館では、この裏側を「バックヤードツアー」で公開している。収蔵庫や文化財保存修復施設を窓越しに見学し、さらには展示品や収蔵品を地震から守る免震層なども巡る。毎週日曜日、ボランティアガイドのナビゲートによって約50分のツアーを体験できる。
「この博物館の建設が決定した当初から、このように博物館の裏側を公開することも決まっていました。収蔵庫に見学用の窓があるのはそのためです。ほかの博物館ではなかなか見ることのできない部分ですので、ぜひ参加していただきたいですね。文化財を守る大切さについて、考えるきっかけにしていただければ嬉しいです」と澤野さん。
ボランティアスタッフも大活躍。地域・市民とともに歩む博物館
![「太宰府 古都の光」。博物館前には地域児童の手作りの灯明が 「太宰府 古都の光」。博物館前には地域児童の手作りの灯明が]()
展示解説に、外国語にも対応できる館内案内など、九州国立博物館にはさまざまなボランティア活動グループがある。これらのボランティアは、「地域・市民とともに歩む博物館」をめざす同博物館のシンボル的な存在だ。「ボランティアの募集は三年に一度ですが、毎回たくさんのご応募をいただきます。中には県外から通う方もいらっしゃるなど、熱心なメンバーばかりです」と澤野さん。初めて訪れる広い館内で、迷った時や困った時、すぐに快く対応してくれる人がいるのは安心だ。
また、同博物館の開館を記念してスタートした地域ぐるみのイベントもある。毎年9月下旬に開催される「太宰府 古都の光」だ。太宰府の町が1万本のろうそくの光に彩られ、太宰府天満宮から九州国立博物館までの通路も光の道に。同博物館では支援団体「九州国立博物館を愛する会」による影絵などが披露されている。太宰府天満宮の神幸式大祭に合わせたイベントでもあるので、9月に太宰府を訪れるならあわせてチェックしておきたい。
子どもたちに人気の体験型展示室『あじっぱ』
![『あじっぱ』の一角。手前に見えているのはモンゴルのコーナー 『あじっぱ』の一角。手前に見えているのはモンゴルのコーナー]()
「私が最も気に入っているのは、1階の展示室『あじっぱ』です。日本と交流のあった国々の文化を、遊びながら体験できる展示室で、お子さんは大喜びされますよ。常設展示で入場無料。地域の小学生が放課後に遊びに来ている姿もよく見かけます」と澤野さん。『あじっぱ』というネーミングは、“アジアのはらっぱ”という意味。各国のコーナーごとにその地域の楽器を演奏したり、衣裳を羽織ったり、さまざまな国の文化を体験できる。同博物館の開館当初のキャッチフレーズ「学校より面白く、教科書よりわかりやすい博物館」を、そのまま形にしたような展示室だ。
また、奥には静かに作品を鑑賞できるギャラリー『あじぎゃら』も。展示品には子ども向けの解説付きで、親子で一緒に楽しめる。子どもたちが文化財に興味をもち、博物館に親しむきっかけにもなりそうだ。また、年に数回開催される「なりきり学芸員体験」では博物館の仕事も体験できる。