「函館ベイエリア」函館港の定番&穴場スポットの楽しみ方
ベイエリアは、函館港に沿って倉庫群が建ち並ぶ、函館の定番観光スポット。ショッピングやグルメはもちろん、明治期の函館の雰囲気を感じる歴史的な楽しみ方もできる。初めて訪れる人にもうれしい定番観光地の情報から知る人ぞ知る穴場の観光地情報まで、函館ベイエリアの魅力を、観光ガイドとして20年以上のキャリアをもつ達人の視点から紹介する。
![函館港に沿って赤レンガ倉庫が建ち並ぶベイエリア 函館港に沿って赤レンガ倉庫が建ち並ぶベイエリア]()
函館観光のメインスポットのひとつ・ベイエリア。このエリアを代表する景観といえば、レンガ造りの倉庫群が有名。明治時代に活躍していた倉庫で、現在はレストランやショッピングモールとなっている。海を間近に倉庫群が並ぶノスタルジーな景観は、「ミシュラン・グリーン・ガイド・ジャポン」でも紹介。「函館港の散策」としてひとつ星を獲得している。ベイエリアは、潮風を感じながら函館の歴史に触れ、ショッピングやグルメも楽しめる観光スポットだ。
ライター/函館・みなみ北海道観光情報誌「函館comodo」編集部 壁下優子
投稿/2015年 6月
《この記事を読む人におすすめの情報》
定番の赤レンガ倉庫群を散策。明治期の函館に想いを馳せる
![明治期に建てられたレンガ造りの倉庫群 明治期に建てられたレンガ造りの倉庫群]()
ベイエリア観光といえば赤いレンガ造りの倉庫群が定番。もともとは明治の政商・三菱商会が、横浜~函館間の航路開設に伴い、明治初頭に建設したものだった。しかし1887年、すでに不要となっていた倉庫や跡地を、長崎から函館に渡り洋物店や船具店を営んでいた渡辺熊四郎が購入。倉庫業を始めた。北海道が海産物の生産地として急成長をすると、倉庫を増設。その隆盛は続き、規模拡大も続いた。しかし、昭和後期には輸送形態の変化や北洋漁業の縮小などで倉庫業が衰退。その一方で、レトロな雰囲気の建物や、海に面したロケーションが注目を浴びるようになっていた。
1988年には倉庫を再利用したショッピングモール「金森赤レンガ倉庫」が誕生。その2年前には明治期の郵便局を再利用した「はこだて明治館」もオープンし、観光地へと変貌していった。現在では「ベイエリア」と呼ばれ、近くには「ラッキーピエロ」や「ハセガワストア」などのご当地グルメが楽しめる施設も並び、年間150万人~200万人が訪れている。
ショッピングに訪れたなら「函館オルゴール堂」にも立ち寄りを
![さまざまなオルゴールが並ぶオルゴール堂 さまざまなオルゴールが並ぶオルゴール堂]()
旅の楽しみのひとつといえば買物。「金森洋物館」や「はこだて明治館」などのショッピングモールには、生活雑貨からガラス製品、土産品など個性豊かなショップが揃う。
達人のおすすめは、「BAYはこだて」にあるオルゴール専門店「函館オルゴール堂」。「さまざまなオルゴールが並び、見るだけでも楽しいですし優しい音色にも癒されます。オリジナルのオルゴールも作れます」と達人。天使タイプのガラス製オルゴール、ハート型の宝石箱オルゴールなど、女性ならキュンとするようなラインナップ。自分だけのオルゴールが欲しいという人は、オリジナルオルゴール制作体験を。オルゴールに好きなガラス小物を接着するだけの作業なので、子どもから大人まで簡単に制作できる。所要時間は1時間程度。時間がないという場合は、オルゴールとガラス小物を購入し自宅で作ることもできる。
「函館ビヤホール」 達人おすすめのグルメスポット
![倉庫を利用した「函館ビヤホール」の店内は広々 倉庫を利用した「函館ビヤホール」の店内は広々]()
散策や買物を楽しんだ後はレストランで腹ごしらえ。飲食店はたくさんあるが、「歴史的な建物」「海を望む眺望」「地場産食材を使ったメニュー」と3拍子揃うのが金森倉庫群の一角にある「函館ビヤホール」。「明治期の倉庫を使った店舗は雰囲気たっぷり。料理も美味しく、昼間から飲む地ビールは格別ですよ」と達人。「函館ビヤホール」は建築当時から大きな改装をしていない。高い天井に入り組んだ梁(はり)やレンガ造りの屋根を支える直径150センチのヒノキの柱など、当時のままの建築技術がレトロな雰囲気を漂わせる。
また「函館ビヤホール」で、やはり楽しみたいのが「地ビール」。甘めが好きな人にはエールタイプの「函館赤レンガ地ビール」(小ジョッキ630円、中ジョッキ860円)、苦みがたまらないという人にはピルスナータイプの「函館開拓使ビール」(小ジョッキ650円、中ジョッキ890円)がおすすめ。フードメニューが豊富で、定番メニューのほかに地場産の旬の食材を使った料理を月替わりで10種類程用意。お子様ランチ(800円)は女性にも人気。ファミリーでも利用しやすい。
童謡「赤い靴」の悲しい物語が伝わる、隠れた名所
![赤い靴の少女の像の横には童謡「赤い靴」の歌碑も 赤い靴の少女の像の横には童謡「赤い靴」の歌碑も]()
「倉庫群を抜けた先に赤い靴の少女の像があります。この少女の秘話に、皆さんホロリとされるんです」と達人。
この像は「赤い靴~履いてた~」で始まる有名な童謡「赤い靴」の少女・きみちゃんの像。横浜・山下公園の像が有名だが、彼女は6歳まで函館に居た。きみちゃんの母は今でいうシングルマザー。静岡から函館にわたり、きみちゃんが3歳の時に再婚。夫婦で平民農場(現在の北海道留寿都辺り)へ入植する時に、病弱だった娘の幸せを願いアメリカ人宣教師・ヒュエット夫妻へ預けた。しかし、きみちゃんが6歳の時、ヒュエット夫妻に帰国命令が。一緒に渡米する予定だったが、病弱な彼女を連れていくことができず孤児院に預けた。しかしその後、肺結核となり、きみちゃんはわずか9歳で、ひとり亡くなってしまった。それを知らない母は、娘をアメリカ人宣教師に預けたこと、きっと今では幸せになっているだろうことを、転職先の新聞社で同僚に話した。その同僚こそ「赤い靴」の作詞家・野口雨情(のぐち うじょう)だった。
倉庫群から像への道のりには、石畳の中にハート型をした自然石がある。「見つけるのは難しいのですが、石畳を探しながら像まで歩き、きみちゃんに想いを馳せてみてはいかがでしょう」と達人は提案する。
ラクに、効率的に、観光を楽しむならバスや市電が便利
![大正時代の車両を復元した函館市電「箱館ハイカラ號」 大正時代の車両を復元した函館市電「箱館ハイカラ號」]()
ベイエリアをはじめとした西部地区は、歩いてまわれる距離ではあるが疲れてしまうことも。そんな時は市電やバスが便利。市電は2系統と5系統の二つに分かれていて、ベイエリア付近の「十字街」で分岐。「緑の島」や「中華会館」など、さらに西に向かう場合は5系統「函館どつく前」行きに乗車を。時間にもよるが、始発の「湯の川」から分岐点「十字街」までは約6分おきの運行。「十字街」から5系統「函館どつく前」行きと2系統「谷地頭」行きは、それぞれ約12分おきの運行。レトロな外観の「箱館ハイカラ號」も人気だ。
函館バスが運行している「元町・ベイエリア周遊号」は、その名の通り元町とベイエリアを回る観光に最適なバス。函館駅前を起点に、はこだて明治館や金森洋物館、函館山ロープウェイ山麓駅、元町公園など主要な観光名所を巡り、9時~18時頃まで約20分間隔で運行している(11月以降は変更となる場合も)。市電・バスともに、それぞれの専用1日乗車券などを発行しているが、どちらも利用したいなら乗り放題の「市電・バス1日・2日乗車券」(1日乗車券1000円、2日乗車券1700円、ともに小児半額)が便利だ。