湯の川温泉 函館の人気温泉街の楽しみ方
湯の川温泉は北海道三大温泉郷のひとつに数えられる名湯。海に面したロケーションや地の利を生かした料理、函館空港から車で約5分というアクセスの良さが魅力だ。函館エリアの宿泊客の約半数・130万人が宿泊するという、湯の川温泉の楽しみ方を紹介。
![海沿いの宿泊施設では海を眺めながら入浴できる 温泉街の写真]()
湯の川温泉は、箱館(函館)戦争時に、旧幕府軍の榎本武揚も入湯したとされる歴史ある名湯。湧出量は一日に7000トンと豊富。サラサラとした無色透明の湯が特徴だ。湯の川温泉エリアの宿泊施設は、老舗旅館から現代的なホテルまで多様な施設が並び、近隣には飲食店や商店街もある。年間約130万人が宿泊する人気エリアだが、日帰り入浴を楽しみに訪れる観光客も多い。
取材・文/函館・みなみ北海道観光情報誌「函館comodo」編集部 壁下優子
投稿/2016年 1月
500年以上とも言われる歴史を誇る、湯の川温泉
![昭和元年(1926)の温泉風景/函館市中央図書館所蔵 昭和元年(1926)の温泉風景/函館市中央図書館所蔵]()
湯の川温泉の歴史は、湯の川温泉街の鎮守・湯倉神社の成り立ちが関係している。500年以上前のある日、一人の木こりが現在の湯倉神社のあたりに沸き湯を発見。湯治で腕の痛みが治り、その御礼に小さな祠を建てたのが湯倉神社の起源であり、湯の川温泉の始まりといわれている。
この話は伝説として残っており、実際に史実にあらわれるのは1653年のこと。難病に冒されていた松前藩主九代・高広(幼名・千勝丸/ちかつまる)の母が、ある夜「松前城の東にある温泉に行けば病が治る」という夢を見た。そこで実際に湯治させたところ全快。そのお礼に社殿を改造した鰐口を奉納したのが正式な由緒とされており、湯倉神社には湯川温泉発祥之地碑も建立されている。
箱館戦争の際には、旧幕府軍の傷病兵とともに、のちに数々の政府大臣職を歴任することとなる武士・榎本武揚も入湯していたのだとか。湯の川の隣町には、このことが由来とされる「榎本町」という町もある。
明治期には100度以上の湯が毎分140リットル湧く温泉が掘り当てられ、湯治場として発展。残念ながら現在は残っていないが、一時期は遊園地や動物園などもあった。町の変遷はありながらも、現在では函館に宿泊する年間約270万人のうち、約130万人が宿泊する一大温泉郷となったのだ。
サラサラとした泉質と、海に近いロケーションが特徴
![国道278号線沿いに旅館やホテルが建ち並ぶ 国道278号線沿いに旅館やホテルが建ち並ぶ]()
泉質は、主にナトリウム・カルシウム-塩化物泉(中性等張性高温泉)。無色透明でサラサラとしたクセのない湯で、塩分を含んでいるため湯冷めしにくい。近くには津軽海峡が広がり、海に面した宿に宿泊すれば水平線を眺めながら入浴することも。ほかにも風情ある老舗旅館や大型ホテル、低価格な宿からラグジュアリーな宿まで、温泉街に建ち並ぶ宿泊施設は多種多様。中には日帰り温泉として利用出来る場所もある。
そして、函館空港から車で約5分、JR函館駅からは車で約20分というアクセスの良さも湯の川温泉の特徴。多くの温泉街が郊外にある中、街なかに位置しているのも珍しい。「主な観光名所には、30分もあれば車や公共の交通機関を使って行くことができます」と達人。函館市電の電停も近いため、旅の拠点にもなる。自由に行きたいところへ行ける気軽さも感じられる場所だ。
宿泊をするなら、海鮮料理も必ず味わうべき
![北海道の旬の味覚を堪能しよう 北海道の旬の味覚を堪能しよう]()
「割烹が前身の宿や、料理自慢の宿が多いのでぜひ味わっていってください」と達人。かつて北洋漁業の拠点として多くの海産物が集まってきた場所でもあることから、函館の料理人たちは古くからその調理・加工技術を高めてきた。明治期から人々をもてなしてきた湯の川温泉街の料理人たちも例外ではない。現在も料理にこだわる宿が多いのだ。
三方を海に囲まれ、北海道の中でも比較的温暖な気候の函館は食材の宝庫。数ある食材のなかでも、やはり食べるべきはイカ。真イカ(スルメイカ)漁が解禁となる夏~初冬にかけては、朝に水揚げされたばかりのイカ刺しを味わえる宿も。ほかにも、春のボタンエビや夏の毛ガニ、秋の鮭や冬のタラなど、函館近海で獲れる海鮮食材は多数。また、魚介だけではなく、地場産野菜やブランド肉も美味しいので必ず味わってみて。そんな食材たちを湯の川温泉街の多くの宿泊施設では、懐石料理やバイキングなどで味わえる。
季節の風物詩も楽しむことで、さらに思い出深い旅行になる
![短い夏を締めくくる花火大会は、イカ花火に注目! 湯の川温泉花火大会]()
湯の川温泉街には、季節ごとに様々な楽しみがある。代表的なのは、毎年8月下旬に開催される「湯の川温泉花火大会」。源泉などから採った湯を湯倉神社に奉納する「献湯式」が行われ、歴史ある温泉資源に感謝する祭りでもある。花火の打ち上げ場所は、湯の川温泉街を流れる松倉川下流。「間近で打ち上げられる花火は迫力満点です」と達人。夜空を彩る大輪の花が津軽海峡に浮かぶイカ漁の漁り火とともにあたり一帯を照らし、温泉街は情緒豊かな色とりどりの光に包まれる。花火が見える宿は早々に埋まってしまうので、部屋から楽しみたい人は早めの予約を。
夏だけではない。「12月〜5月の上旬まで、ニホンザルが温泉に入る姿を見られるんですよ」と達人。その場所は、湯の川温泉街にある「函館市熱帯植物園」。冬の間、サル山に園内の源泉を利用した温泉が作られ、サルたちが入浴を楽しむのだ。気持ち良さそうに湯に浸かる姿は人間さながら。2015年の湯の川温泉ポスターのメインビジュアルにも使われている。
春と秋には、温泉街から車で約5分の場所にあり桜や紅葉の名所として知られる「香雪園」の散策がおすすめだ。
湯の川温泉 日帰り入浴の楽しみ方
![創業70年以上の公衆浴場「永寿湯」 創業70年以上の公衆浴場「永寿湯」]()
「湯の川温泉に宿泊しないけれど温泉を楽しみたい」という人は、日帰り温泉を利用するという手も。湯処だけあり、この辺りの銭湯にも湯の川温泉の源泉が使われている。
市電「湯の川温泉」電停から、徒歩で約8分の距離にある「湯処 永寿湯温泉(えいじゅゆおんせん)」は、創業70年を越える老舗の公衆浴場。3本の源泉井戸から直接浴槽に注がれる、100パーセントの天然温泉が楽しめる。浴室には、壁面に大きく描かれた富士山が。これは、昔ながらの銭湯の風情を感じてほしいと、浴場を改装した際に東京の絵師に頼んで制作したものだ。浴槽は低温と高温の2つ。高温はなんと47〜48度、低温でも44〜45度という熱さ。十分に掛け湯をしてから体を湯に沈めていくと、皮膚にピリッとした刺激が。この「ピリッ」がたまらないと、遠方から通うファンも。銭湯だけではなく、日帰り温泉を実施している宿もあるので、詳しくは函館湯の川温泉旅館協同組合のホームページで確認を。
「ひと汗流した後は、商店街を散策するのがおすすめです」と達人。湯の川温泉街は、地域住民の生活の場と融合している。総菜店のコロッケや人気のソフトクリーム、老舗和菓子店の団子など、商店街ならではの食べ歩きを楽しむのが面白い。
湯の川温泉 への交通アクセス
空港から車で約5分という近さにある湯の川温泉。函館市電の電停が近く、バスも多く通っているので、観光名所各地へのアクセスも良い。
車で
函館空港からは車で約5分。国道278号線を函館山方面に進むと湯の川エリアにたどり着く。
JR函館駅からは車で約15分。こちらも国道278号線で、恵山方面に進むとたどり着く。
函館市電で
JR函館駅から函館市電2系統または5系統「湯の川行き」に乗車。湯の川温泉街の中心地までは「湯の川温泉」で下車。所要時間は約33分。湯倉神社まで行く場合は「湯の川」で下車。所要時間は約35分。
バスで
函館空港から函館空港連絡バス(函館空港→市内)で約5分、「湯の川温泉」で下車。
JR函館駅から6系統で約25分、「湯の川温泉」で下車。