1. 北海道立近代美術館、札幌のアートの殿堂へ

達人指南

現地の達人が旅行の楽しみ方を伝える観光コラムです。人気の観光地から知る人ぞ知る穴場まで、達人だからこそ分かる一歩踏み込んだ“通”な情報を紹介しています。

北海道立近代美術館、札幌のアートの殿堂へ

  札幌市中心部にある北海道立近代美術館は、道内屈指のアート施設。コレクション数は5000点以上。近隣には道立三岸好太郎美術館や北海道知事公館があり、緑豊かな散策エリアとしてもおすすめだ。学芸員歴20年以上の達人に、初心者からアート好きまで楽しめる美術館の魅力を聞いた。

道立近代美術館

  北海道立美術館の先駆けとして、1977年に誕生した道立近代美術館。オープンから約40年、地元・北海道の優れた美術作品はもちろん、1920~30年代にフランスで花開いたエコール・ド・パリ、国内外のガラス工芸などをコレクションの柱として収集し、収蔵品は5047点(2015年3月末時点)と、質・量ともに充実。1~2カ月ごとに多彩な特別展を展開し、年間の来館者数は26万人前後。

近年は海外の観光客も多く、人気スポットとして定着している。2014年には、札幌で初開催されたアートフェスティバル・札幌国際芸術祭の会場にもなり、文化拠点としての存在感を高めている。北海道を代表する”美の殿堂”で、極上のアートに触れる旅を楽しもう。

ライター/新目七恵 投稿/2015年 9月


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鎌田 享さん
(かまた たかし)
鎌田 享さん

北海道立近代美術館の達人
  神奈川県出身。大学で美術史を学び、卒業後は美術館の学芸員として北海道に就職。札幌や帯広などの道立美術館で勤務してきた。人生の半分以上を北海道で暮らし、すっかりここが第二の故郷に。どんな作品でも、見て、触れるたび、新しい読み取り方を発見するという。そんな喜びを感じながら、アートと鑑賞者の〝間〟に立つこの仕事にやりがいを感じている。

世界&北海道の名品と出合う! 近美コレクションの楽しみ方

コレクション展示室

  シャガール展やピカソ展…。美術館といえば、華やかな特別展に目が行きがち。しかし、「コレクション展をゆっくり味わうのもおすすめです」と鎌田さん。実は、美術館によってコレクションの対象はさまざま。たとえば、道立旭川美術館なら木の造形作品、道立函館美術館なら書道…などであり、それこそが美術館のこだわり・個性といえるのだ。

北海道立近代美術館の場合、林竹治郎(はやしたけじろう)や片岡球子(かたおかたまこ)、神田日勝(かんだにっしょう)など北海道ゆかりの作家作品を数多く収蔵。一方で、ジュル・パスキンを中心としたエコール・ド・パリの作品が特徴だ。それにしても、20世紀初頭のフランスで生まれたアートを、北海道の美術館が集めるのはなぜだろう。鎌田さんは「当時、北海道美術は”第一世代”の作家が育った黎明期。その頃の世界を知る上でも重要です」と教えてくれた。鑑賞の際は、同時期の北海道を思い浮かべるとまた違った感慨が沸くかもしれない。北海道立近代美術館コレクションの一部は美術館の公式HPで公開。気になる作品の展示時期は、事前に問い合わせてみよう。

無料のガイドツアーを利用して、アートをより身近に

ギャラリー・ツアー

  創作秘話や作家の人生を知ると、作品の理解も愛着も一層深まるもの。北海道立近代美術館では、近美コレクションの鑑賞ガイドツアー「ギャラリー・ツアー」を、平日は1日3回(11時30分、13時、14時)、土・日は1回(13時)実施。約30分で見どころを紹介するので、効率的に鑑賞したい人におすすめだ。案内するのは、一般社団法人北海道美術館協力会「アルテピア」のメンバー。

「美術が本当に好きな方ばかりで、なかには20年以上前から活動する人も。同じ作品の解説でも、好みで力の入るポイントが違うのもご愛嬌です」と鎌田さん。市民ボランティアなので、気さくに質問できるのもうれしい点。初心者からアート上級者まで幅広く対応してくれるだろう。

好きな作家や作品についてもっと調べるなら、1階美術情報コーナーも便利。ずらり並ぶ図録や書籍は閲覧自由。また、2台あるテレビ画面では北海道ゆかりの作家を紹介するオリジナル映像を見ることもできる。知れば知るほど、アートは面白い。時間に余裕を持って訪れ、心ゆくまでアートを愉しんでほしい。

アート好き必見! 3年に一度の「札幌国際芸術祭」

札幌国際芸術祭

  アートに関心がある人なら、3年に一度、札幌で行われるフェスティバル「札幌国際芸術祭」も要チェックだ。初開催の2014年は7~9月の72日間、「都市と自然」というテーマのもと、現代アーティスト64組による展覧会やパフォーマンスなどが行われた。

北海道立近代美術館は、18ある会場のひとつとして岡部昌生(おかべまさお)氏による夕張炭鉱遺構のフロッタージュ作品やスボード・グプタ氏の彫刻などを展示。都市の近代化への再考を促す作品群は迫力に満ち、「見慣れた展示室の印象がガラリと変わって驚きました」と鎌田さん。また、別の展示室では「雪」に関する作品を並べ、札幌芸術の森美術館会場への橋渡し役も担った。

美術館近くでは、携帯電話を石器に持ち替え、古代人の暮らした場所を訪れるというユニークな体験型プロジェクトも話題に。歴史的建築物や地下歩行空間など、札幌の街全体が舞台となるこのアートフェス。アートの街・札幌の新イベントとして注目してほしい。

アート鑑賞の後はグルメ。こだわりメニュー色々!

ハンバーグステーキ

  展示室を見て回ったら、館内2階のレストラン「ボーザール」へ。レンガ壁の落ち着いた雰囲気の中、アート鑑賞の余韻に浸りながら美味しい北海道グルメを味わえる。

人気メニューは、道産鶏肉と豚肉を使った「ハンバーグステーキ」(ライス付き、1200円/税込)。ジューシーな味わいを、カレーソースと一緒に楽しめる「ハンバーグカレーライス」(1150円/税込)も食べ応え十分だ。通常メニューのほか、毎年テーマを決めた特別メニューにも力を入れている。さらに、美術館の特別展に併せたスペシャルランチやデザートも期間限定であり、「学芸員とコラボしたメニューは美術館ならでは」と鎌田さんは太鼓判を押す。

「アートフル・ガーデン」で癒しの散策タイムも

アートフル・ガーデン

  札幌の都心というアクセスに恵まれながら、緑が豊かなのも北海道立近代美術館の良さ。前庭には流政之『雲の砦Jr.』など7機の野外彫刻が点在し、池の揺らめきとともに楽しむことができる。

鎌田さんのイチオシは、東側入口から入ると右手に見える伊藤隆道『回転螺旋・1月』。クルクル回るS字型の立体彫刻が、太陽の光を受けて輝き、背景にある美術館とともに壮観な眺めを作り出す。「特に気持ちがいいのは、緑が芽吹き始めた初夏の5月頃。休憩がてら、ぼーっと歩くだけでも癒されます」と鎌田さん。

道路を挟んで東側に隣接する道立三岸好太郎美術館北海道知事公館までは徒歩5分。知事公館の前庭にも安田侃(やすだかん)『意心帰』などの野外彫刻があり、3カ所を巡る散策コースは「アートフル・ガーデン」と名付けられている。スマホの「ふらっと案内」で詳細を紹介しているのでチェックを。


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北海道立近代美術館 おすすめ観光情報

これだけは見たい! 近美コレクション名作3選

  数ある近美コレクションのうち、「北海道の美術」「エコール・ド・パリ」「ガラス工芸」のなかから、達人とっておきの名品をそれぞれご紹介。

おすすめポイント
  『道産子追憶之巻』は、北海道の原風景を全長約29メートルの絵巻形式で捉えた日本画の大作。『花束をもつ少女』は、淡く透明な色調と繊細な線描というパスキンの良さをよく示す作品だ。『ランプ・きばなふじ』は、ガラス工芸ならではの華やかさを体感できる逸品。どれも実物は、写真以上の迫力がある。事前に問い合わせて、展示の時期にぜひ足を運んでほしい。コレクション展は、なんと写真撮影OK。旅の記念に名作を写そう。

ここに注目! 知られざる近美スポット3選

  展示作品だけじゃない。北海道立近代美術館を訪れたらチェックしてほしい、達人おすすめの知られざる名スポットを紹介。

おすすめポイント
  道立近代美術館の設計は、北海道大学名誉教授で建築家の太田実氏が担当。大きな斜め屋根や開放感のあるガラス窓など、外から見ても、中から眺めても心地良い空間となっている。ロビー正面にあるブロンズ像は、フランス近代彫刻の巨匠、エミール・アントワーヌ・ブールデルの作品。2階から見下ろすと、ライオンの毛皮を身にまとっているのが分かるのでじっくり眺めてみてほしい。ロビー入口のミュージアム・ショップでは、ガラス工芸品からオリジナルグッズまでを取り揃えており、旅の記念品探しにもぴったりの場所だ。

近郊のおすすめアートスポット3選

  北海道立近代美術館を訪れた後に足を延ばしてほしい、周辺のアートスポットを紹介。

おすすめポイント
  道立近代美術館の東側には、道立三岸好太郎美術館と北海道知事公館が同じ敷地内にある。徒歩5分の近さなので、気軽に足を延ばしてみよう。知事公館は、館内の見学もOK。前庭には彫刻や史跡があり、散策コースとしても楽しめる。札幌市中心部から車で15分、閑静な住宅街にある本郷新記念 札幌彫刻美術館を含めて、「どこも〝私の〟美術館と思えるほど親密な雰囲気があり、展示内容も密度が濃い」と鎌田さんは語る。

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どこまでも広がるラベンダー畑…。

北海道立近代美術館への交通アクセス

  地下鉄やバスが利用でき、近隣に有料の契約駐車場もある。が、時間に余裕があるならば、札幌駅から徒歩で向かうのもおすすめだ。北海道庁旧本庁舎(通称・赤れんが)や北大植物園などを眺めたり、大通公園を通ったりして、約30~40分程度で到着する。

北海道立近代美術館の施設情報

  ・住所/北海道札幌市中央区北1条西17丁目
・電話/011‐644‐6881
・開館時間/9時30分~17時(入館は16時30分まで)
・休館日/月曜日(祝日または振替休日の場合は開館、翌火曜日が休館。ほか、展示入れ替え期間は休館の場合もあり。詳しくは公式HPをチェック)
・入館料/近美コレクション 一般510円、高大生250円。
特別展は別途必要。毎回観覧料が異なるのでお問い合わせを。
・公式HP/http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/knb/

地下鉄で

  札幌市地下鉄東西線「西18丁目」駅を下車、4番出口から徒歩5分

バスで

  JRバス(JR札幌駅・5番乗り場から約11分)、もしくは中央バス(札幌‐小樽・手稲方面)を利用し、「道立近代美術館」バス停で下車、徒歩1分。

車(レンタカー)で

  札幌駅前通から北1条通を西へ約10分、右手に見える大きな看板が目印。美術館の手前、左手に契約駐車場「ビッグシャイン88北1条駐車場」(北1条西15丁目)がある。駐車場から美術館へは徒歩5分。駐車場の料金は20分120円(20分を超える分は20分につき120円増し)、美術館利用者を対象とした割引もある。

徒歩で

  札幌駅前通を北1条通まで進み、右に曲がって真っ直ぐ。約30分程度。

近代美術館のQ&A

Q 作品鑑賞の際の注意事項は?
A 作品に触れないようご注意ください。展示室内での飲食も禁止です。アメやガム、ジュースの持ち込みもご遠慮ください。
Q 手荷物は預けられるの?
A 無料のコインロッカーが1階にあります。大きな荷物であれば、受付で預かることもできます。お気軽にお申し付けください。
Q 展示会場で撮影は禁止ですか?
A 近美コレクション会場の撮影は、個人的かつ非商業目的の撮影に限り可能です。ただし、複製の作成やネット上での公開は、著作権法に触れる場合があるのでご注意ください。フラッシュや三脚などの使用など、他のお客様のご迷惑になる行為はご遠慮ください。
Q 車いす・ベビーカーは借りられますか?
A はい、ご用意しています。車いす専用トイレは1階に、ベビーベッドは1階の女性トイレと2階の幼児室にあります。2階展示室への移動はエレベーターを利用できるので、お申し出ください。
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