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達人指南
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道南・檜山地方の江差町で毎年8月9日~11日に開催されるのが「姥神大神宮渡御祭(うばがみだいじんぐうとぎょさい)」だ。祭りの期間中は人口8000人のまちに4万人とも5万人ともいわれる人々が集まり、町内は熱気に包まれる。江差の人たちが一年で最も待ち焦がれるという姥神大神宮渡御祭とともに、歴史のロマンあふれる江差町の見どころを紹介する。
江戸時代、北前船による交易により「江差の五月は江戸にもない」とうたわれるほど繁栄を極めた江差。今も町内には古い社寺や建物が立ち並ぶ。始まりは1644年(正保元)頃といわれている「姥神大神宮渡御祭」は、ニシン漁で栄えた当時の江差の文化を物語る祭礼だ。370年余りの歴史を持つ、道内の神社の祭りでは最も古いもののひとつであり、2001年には北海道遺産に選定されている。ライター/萩 佑 投稿/2015年 8月北海道ローカル案内役が厳選おすすめホテル特集
[たびらいセレクション]
(なりた こうき) 成田晃貴さん
創立年代は定かではないが、1200年代あるいは1400年代ともいわれる姥神(うばがみ)大神宮。「姥神」の名は、江差にやってきたひとりの姥(うば=おばあさん)が、白髪の翁から授かった小瓶を海に注いだところ、ニシンが大漁となり、人々を飢えから救ったとするこの地に伝わる伝説による。社殿が現在の位置に移された1644年頃に祭りが始まったといわれているが、現存する山車のなかで最も古い神功山の人形が1754年(宝暦4)に納められたことがわかっており、その頃には渡御祭の形が出来上がっていたことがうかがえる。成田さんによれば「姥神大神宮渡御祭は江差の人たちが一年で最も楽しみにしている3日間。江差出身者たちは単なるお盆の帰省ということではなく、祭りのために全国から帰ってくる」のだそうだ。13台の山車は各町内の保存会が所有、祭りは住民の寄付によって運営されている。時代とともに少しずつ形を変えながら、370年余りもの間、江差の町の人々の手によって大切に受け継がれてきた貴重な遺産といえよう。
祭礼は、神輿の渡御に伴って各町内ごとの山車(ヤマ)が豊作・豊漁・無病息災を祈念してまちの中を巡行する。祭りの主役は、錦の旗やちょうちんなどで豪華に飾られた13台の山車。高さ約4メートル、幅は約3メートル、長さは約4メートルほどの2段構造の山車である。上には神功皇后、武田信玄、楠木正成など歴史上の人物の人形が守護神として乗り、下の段に祭囃子の笛や太鼓を担当する人間が乗り込む。唯一の例外が「松寶丸(まつほうまる)」。これは北前船の形を模したもので松の絵が描かれた大きな帆が掲げられており、北海道指定文化財にもなっている。「精巧な人形や贅を尽くした豪華な飾りなど、それぞれの山車に特徴があるので、いろいろな山車を見比べてみるのも楽しいです。大人から子供まで精一杯力を合わせて運行する姿に注目してください」山車とともに大切にされているのが祭り囃子だ。「7月半ばぐらいから祭り囃子の練習が始まり、町内のあちこちから笛や太鼓の音が聞こえてきます」。京都の祇園祭の流れをくむという祭り囃子は、各山車ごとに異なっており、代々受け継がれている。若い世代を中心に皆が熱心に練習して、一人前と認められて初めて山車にのって演奏ができるようになるそうだ。1978年からは「祭り囃子コンクール」も実施されている。祭り囃子の競演も見どころのひとつだ。
祭りの初日は、日中子どもたちを中心に各山車が町内を一巡し、その後姥神大神宮でお祓いを受ける「魂(たましい)入れ」が行われる。その後また各町内を巡り、夜になると姥神神社で神事が行われ、さらに、その年の山車行列の先頭を決める「先山車定め」が行われる。先山車に選ばれることは大変な名誉であり、同時に大きな責任を担う。2日目の昼頃、13台の山車が神社に集まり、いよいよ渡御行列が出発する。神輿を先頭に13台の山車が町内を巡行する。行く先々で「結構なお祭りで」と挨拶しながら家々に入っていくと、各家々ではごちそうや酒を振る舞うのが習わしだ。この日の一番の見どころが町内を巡り神社に戻った3基の神輿の「宿入れの儀」。午後9時から始まるこの神事には大勢の観衆が集まる。松明を持った8人が左右に分かれ、鳥居から拝殿まで一気に駆け上る。神輿もそれに続くが、一度では拝殿に入ることができない。拝殿の直前まで行っては鳥居まで戻る、を繰り返し、1基目は7回目、2基目は5回目、3基目は3回目でようやく入ることができるという。「とくに3基目の神輿は大きいので担ぐ側も全力を尽くして、非常に迫力があります」と成田さん。最後の神輿が無事に拝殿に入ると、大きな歓声と拍手が沸き起こる。
最終日の11日の夜、祭りは最大のクライマックスを迎える。昼間の町内巡行後、午後9時頃になると13台の山車が次々と繁華街の新地町に集合するとともに、集まった大勢の人々によって沿道が埋め尽くされる。山車が到着するたびに、街頭放送でそれぞれの山車の紹介と「2日間の巡行ご苦労様です」というアナウンスが流れ、沿道からは大きな歓声が沸きあがる。その後、照明に輝く13台の山車が一列に並び、それぞれの祭り囃子を互いに競い合うように奏でる様は壮観のひと言。光と祭り囃子と歓声の渦に包まれる中、見物客も一体となった祭りのクライマックスは約2時間も続くという。町中が熱気に包まれた3日間の祭りが幕を閉じると、また次の年の祭りに向けての準備が始まる。370年もの間、江差の人々の手で代々大切に受け継がれてきた姥神大神宮渡御祭。一度は現地でその熱気を体感したいものだ。
姥神大神宮渡御祭が開催されるのは毎年8月9日~11日の3日間だが、町内にある「江差山車会館」では、全部で13台ある山車のうち2台が1年ずつ交代する形で保管・常設展示されており、その大きさや迫力を直に感じることができる。また、館内には各山車の歴史や特徴を記したパネルや祭りの概要や歴史を映像で紹介する150インチのスクリーンもあり、祭りの全体像を学ぶにはおすすめ。「できれば実際に8月9日~11日の祭りの期間中に来ていただくと良いですが、ここには本物の山車もありますし、祭りの雰囲気の一部を体験していただけます」と成田さん。同じ施設内には、日本を代表する民謡であり江差の貴重な文化遺産である「江差追分」を紹介する「江差追分会館」があり、地元の全国大会優勝者や師匠等が唄う本場の江差追分を聞くことができるほか、訪れた人が気軽に体験できる「追分道場」も人気があり、おすすめだ。観光を楽しむならホテル選びも重要!ホテル・宿を見つけて、旅行に行こう!
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平成27年(2015)現在、檜山管内にJRの駅はない。そこで、都市部からの交通手段は主に車を用いることになる。函館からは約2時間であり、北海道内の移動を考えるとそこまで遠くはない。
札幌からは道央自動車道・国道230号線を経由し、約300キロ、約4時間。函館市街地からは、国道227号線を経由し、約70キロ、約1時間30分。
函館市内からはバス(函館バス江差行き)で約2時間ほど。
函館~木古内まで特急を利用し38分(約40分)。木古内~江差間の路線は平成26年(2014)5月に廃止された。それに代わり、JR函館バスが木古内~江差ターミナル間のバスを運行している。江差までは約1時間25分。
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子どもから大人まで多世代でつなげる祭りの伝統
江差の子供たちは生まれたころから祭囃子を聞いて育つ。小学校から山車を引き始め、高学年になるにつれて、太鼓を叩いたり笛を吹けるようになる。中学・高校生になると山車の上で人形が電線に当たらないように守る「線とり」ができるように。「線とり」は子供たちのリーダー的存在だ。大人が担うのが安全な運行の責任者「舵取り」や全体の責任者である「頭取」。頭取は人望がなくてはつとまらないあこがれの役職でもある。成長とともに祭りの中でより重要な役割を担っていくことは江差の人々にとっての大きな誇りなのだ。
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