函館どつく 観光を楽しめる周辺情報を紹介
函館市の「西部地区」と呼ばれるエリアの中で最も西側に位置し、元町やベイエリアに比べるとガイドブックでも紹介されることが少ない函館どつく周辺エリア。「函館発祥の地」といわれるほど古い歴史をもつ、貿易や北洋漁業で繁栄した時代の面影が残る穴場の観光スポットだ。この地区で生まれ育った達人が、歴史的建造物からハイカラな風景、景勝地まで、函館どつく周辺の見どころを紹介する。
![歴史的価値の高い建物が並ぶ 歴史的価値の高い建物が並ぶ]()
函館市の「ベイエリア」や「元町」よりさらに西側に位置する「函館どつく周辺エリア」。「函館どつく」とは、このエリアのランドマークである造船所の名前だ。この辺りは貿易の拠点であったことから、函館の中でも早くから栄えた場所。函館が国際貿易港として開港した当時は、外国人居留地にも指定されていた。そのため現在でも、当日造られたハイカラな建物が数多く残っている。函館山山麓の北西、海沿いに位置し、夕日の名所としても有名。歴史を感じながら景観を楽しめるノスタルジックなエリアだ。
ライター/函館・みなみ北海道観光情報誌「函館comodo」編集部 壁下優子
投稿日/2015年 7月23日
ノスタルジックな雰囲気の、函館どつく周辺エリア
![このエリアのランドマーク「函館どつく」 このエリアのランドマーク「函館どつく」]()
函館どつく周辺エリアは、周辺エリアに行政施設が建ち並んでいたことから、「函館発祥の地」ともいわれる場所。18世紀以降、松前藩が箱館(現在の函館)を交易港に指定したのを機に、その拠点として発展してきた。1859年、箱館が国際貿易港として開港し、異国文化が流入したことでハイカラな街並が形成されてきた。
北方海運の拠点として発展を遂げるにつれ、明治初期から造船所が開業。1896年、幕末の戦い・箱館戦争の拠点となった「弁天台場」の跡地に、「函館どつく」の前身「函館船渠(せんきょ)株式会社」が設立された※1984年に現在の名称に変更。1947年から1987年まで行われた国策「計画造船」により「函館どつく」は好況に沸き、「嫁にいくならどつくのひと」といわれた時代も。造船所の周辺には下請け企業が多く設立され、「函館どつく」はこの辺りの代表的な存在となった。
オイルショックや不況によって街の雰囲気は変わっていったが、当時の面影を残す建物が多く残されている。時代の変遷を感じさせる風情があり、西部地区の元町やベイエリアとはまた違うノスタルジックな雰囲気が味わえる。
ハイカラな街を散策するなら「大正湯」(※2022年8月閉店)
![左右対称な和洋折衷建築「大正湯」は映画のロケ地にもなった 左右対称な和洋折衷建築「大正湯」は映画のロケ地にもなった]()
レトロな建物が残されるこのエリアで、ひと際目を惹くのが、かわいらしいピンク色の「大正湯」。大正3年の創業から、地元の常連に愛され続けている銭湯で、映画のロケ地にもなった。「外観を見たり記念撮影も良いですが、中でもクラシックな雰囲気が感じられるので、散策の途中にゆっくり湯に浸かっていってはいかがでしょう」と達人は提案する。
現在の建物は1928年に建て替えられたもの。初代が銭湯を営む前は北洋漁業でロシアのカムチャッカなどに行っていたため、現地の建造物の洋式を参考に左右対称の和洋折衷建築とした。建物の梁(はり)、脱衣所の仕切り板や舶来性大判の鏡、体重計、初代が手作りした番台など、当時から使われていたものが大切に守られ、今も現役で使われている。男湯・女湯ともに2つの浴槽があり、ひとつは昔ながらの深堀の浴槽。大人でも中腰で入るくらい深いため、もう一方の浴槽は子どもでも入れるように少し底上げしている。
現在は3代目のおかみがひとりで切り盛り。物を丁寧に大切に使い、いつも変わらない笑顔で対応する。歴史と現在が交差する「古き良き」という言葉を体現する場所だ。
坂道をめぐって歴史を訪ね、穴場の絶景ポイントへ
![隠れた絶景ポイント「船見公園」 隠れた絶景ポイント「船見公園」]()
函館山の麓に位置しているため、坂が多い函館どつくの周辺エリア。そんな坂道には、観光スポットが点在している。「船見坂」には先に紹介した大正湯。「千歳坂」の突き当たりには、新撰組副長・土方歳三の供養碑や函館の豪商達の墓が並ぶ「称名寺(しょうみょうじ)」等の寺院群がある。観光スポットのない坂でも、古い家屋や商店が並び風情が感じられる。かつて坂の上にあった遊郭にちなんだ「姿見坂」や、坂の上から海が見渡せ魚群が見えたことから名付けられた「魚見坂」など、名称の由来もおもしろい。それぞれの坂のはじまりには名所の由来が紹介された案内板もある。ひとくちに坂といっても、様々な楽しみ方ができるのだ。
達人が特におすすめするのは「幸坂(さいわいざか)」の突き当たりのすぐ手前、旧ロシア領事館の向かいにある「船見公園」から見る景色。「函館どつくのクレーンや往来する船など、西埠頭を見渡すことができる大好きな景観です。人が少なく穴場です」と達人。急勾配の坂道だが、登る価値がある。
「幸坂」の隣の坂「千歳坂」では、秋限定でこんな景観が見られることも。「風が吹きナナカマドの枯れ葉が渦巻くことがあります。一瞬のことですがその様はまるでパリのようです」と達人。達人も2回しか見たことがないというこの瞬間を、運が良ければ見られるかもしれない。
外国人居留地だった歴史を象徴する「外国人墓地」
![外国人居留地だった歴史を象徴する「外国人墓地」 外国人居留地だった歴史を象徴する「外国人墓地」]()
国際貿易港として開港し、諸外国の人々行き交うようになった函館。「この辺りは外国人居留地に指定されました。その歴史を象徴するのが外国人墓地です」と達人は語る。
1854年にペリーが来航した際、亡くなった水兵2名を埋葬したのが外国人墓地の始まり。海側にはプロテスタント、山側にはロシア正教など、宗派や国別に分かれていて、赤レンガに囲まれているのは正式には「中華山荘」という中国人墓地。墓地の中にはキリスト教徒の日本人の墓も。さまざまな形の墓が並び、それらは故郷を思うかのように海を正面に佇んでいる。
函館山の北西側、海沿いの高台にありこの場所は景勝地としても有名。夕日の名所としても知られ、目の前には函館港が広がり、対岸には道南の秀峰・駒ヶ岳(こまがたけ)を見渡せる。その絶景と多くの人々が眠る墓が作り上げる景観は、「美しい」や「キレイ」といった言葉では言い表せないものがある。海側には散策路が整備されているので、安らかな眠りを祈り、歴史に思いを馳せながら散策を。非日常的な雰囲気に浸ることができる。
夕日の美しいカフェでくつろぎのひとときを
![夕日が海面を照らし辺りがオレンジ色に染まる 夕日が海面を照らし辺りがオレンジ色に染まる]()
函館の西側にある函館どつく周辺エリアの海岸線は夕日の名所。外国人墓地から函館山方面に向かって徒歩約5分の「ティーショップ夕日」は、ゆっくりお茶を飲みながら夕日が楽しめる達人おすすめのカフェだ。
ピンク色のレトロな建物は、1885年に検疫所の事務所として建てられたもの。装飾性は少ないが、全国でも数少ない初期港湾施設のひとつ。この建物を再利用して元々カフェが営まれていたが休業。客として通っていた夫婦がそれを知り、日本茶専門のティーショップとしてリニューアルオープンした。店内の作りは、ほぼ当時のまま。年季の入った木造壁や柱が時代を感じさせ、店内に飾られたアンティーク品がクラシックな雰囲気を醸し出す。希望すれば年代物のオルゴールを聞くことができる。
休業する冬期間は、店主自ら茶畑へ足を運び気に入った茶葉を仕入れ。1番人気は、生菓子が付き二服目がおかわりできる「抹茶(宇治茶・京都産)」。「玉露(八女茶・福岡産)」は3~4煎飲んだ後、茶葉にポン酢をかけて食べられる。
夕日のベストタイムの目安は5月が18時30分頃。以降夏至の19時15分頃まで伸び、徐々に早くなる。7月が19時頃、8月が18時40分頃。秋には16時30分頃に日が落ちる。その日によって見え方が変わり、黄金色に輝く海やピンクや赤に染まる空、それらが徐々に青く変わりゆく様はまさに絶景だ。