熊本発!「ローカル旅行」の楽しみ方から予約まで
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達人指南
現地の達人が旅行の楽しみ方を伝える観光コラムです。人気の観光地から知る人ぞ知る穴場まで、達人だからこそ分かる一歩踏み込んだ“通”な情報を紹介しています。
今や全国を代表する米焼酎となった「球磨焼酎(くましょうちゅう)」。熊本県の南端にある人吉・球磨地方には球磨焼酎の28蔵元が点在し、多彩な味わいの米焼酎が造られている。製法や味の違いから、地元ならではの味わい方、歴史などを紹介する。
良質な水と米に恵まれた熊本県の人吉・球磨地方は、米焼酎「球磨焼酎」の産地。ここでは約500年前の室町時代から、米焼酎造りが行われてきた。現在も28の蔵元が点在しており、伝統の製法と味を守り続けている。杜氏たちの手で丹精込めて造られた球磨焼酎は、芳醇な香りと深いこくが楽しめるのが特長。しかし、球磨焼酎の中でも、焼酎初心者でも親しみやすい軽い飲み口のものから、通好みのこく深いものまでキャラクターはさまざまだ。球磨焼酎のことを知り尽くした達人に、その魅力を聞く。取材/熊本の編集プロダクション「ポルト」、2016年 5月九州ローカル案内役が厳選おすすめホテル特集
[たびらいセレクション]
(とりごえ ひでお) 鳥越 英夫さん
ひと口に“球磨焼酎”と呼んでも、28の蔵元で造られる銘柄は全200種類以上にも及ぶ。それぞれの蔵元の原料や製造方法などへの工夫が、味わいや香りに蔵ごとの個性を生み出している。製造工程の違いの一つが蒸留方法だ。米や麹を蒸留して造られる球磨焼酎の製法は、主に「減圧蒸留酒」と「常圧蒸留酒」の二つに分類される。蒸留器内の空気を真空ポンプで抜いて減圧し、低温でゆっくりともろみを蒸留して造るのが減圧蒸留酒。こうすることで、マイルドで軽快な味わいが生み出される。減圧蒸留酒の製法は昭和50年代から普及し、近年の主流となっている。一方、水の沸点が100度の状態である地上の大気圧で蒸留するのが常圧蒸留酒。こちらは球磨焼酎の伝統的な製法で、減圧蒸留酒とは異なる独特な香りと芳醇な味わいが生まれる。ちなみに、減圧蒸留酒や常圧蒸留酒をさらに樫樽(かしだる)で貯蔵した「樽熟成酒」は、淡い琥珀色となり、甘い香りや味わいが加わる。
同じ球磨焼酎でも、蒸留方法や貯蔵法によって個性が大きく異なる。まずは自分の好みの香りや味わいを見つけてみよう。例えば、日本酒などのすっきりした口当たりが好みなら、「減圧蒸留酒」がいいだろう。くせがなく飲みやすいので、焼酎初心者にもおすすめできる。これに対して芋焼酎など、こくが強い焼酎が好きな人には、濃厚な味わいの「常圧蒸留酒」がおすすめ。さらにウイスキーなどの洋酒を好む人には「樽熟成酒」がおすすめで、洋酒に負けない華やかな香りと甘みが加わっている。球磨焼酎を存分に堪能するなら、さまざまな飲み方を試すことも大事。割り方や温度などに特別な決まりはなく、自由に楽しめる気軽さも球磨焼酎の魅力だが、球磨焼酎で最もポピュラーな飲み方は「お湯割り」。また、じっくりと味を楽しみたいなら、薄めずに少量を口に含む「ストレート」となる。その他の一般的な飲み方でもオーケー。水割りにすれば焼酎の香りや風味を水の量で調節しながら飲むことができ、もちろんロックもソーダ割りも可能。一般的な傾向としては、ライトな減圧蒸留酒などは水割りやソーダ割り、ロックなどに合いやすく、濃厚な味わいの常圧蒸留酒などはお湯割りやロックに、樽熟成酒などの香りが特徴的なタイプはストレートやロックなどに合いやすい。
日本人の主食である米が原料の球磨焼酎は、食前酒としてだけでなく、食中酒としてもいい。すっきりとした飲み口は和洋中どんな料理とも相性が良く、日本人に馴染み深いうま味や甘み、香りなどは料理の味を引き立てる。また、焼酎を注いだ酒器を直火にかける「直燗(じきかん)」は、球磨焼酎の伝統的な飲み方だ。立ち上る香りやまろやかな口当たりは、他の飲み方では味わえない。さらに近年では新感覚の飲み方も登場している。氷を入れた酒器に燗をした焼酎を注ぐ「燗・ザ・ロック」は、燗のまろやかさとロックの清涼感が同時に楽しめ、不思議な感覚に。また、冷凍庫で冷やした焼酎をカクテルグラスで味わう「クールショット」では、グラスに注ぐ瞬間にシャーベット状に変化するので、好みでシロップをかければデザート感覚で味わえる。
球磨焼酎を堪能するなら、せっかくなら酒器にもこだわってほしい。人吉・球磨には、「ガラ」と「チョク」と呼ばれる伝統的な酒器がある。透き通るような白磁の器は、米焼酎の繊細な味わいによく合う。ガラとは、ポッテリとした形状に細長い注ぎ口が付いた徳利のこと。それとセットになった独特の小さな杯(猪口)がチョクだ。ストレートや割り水、熱燗、ガラを直火にかけて直燗でと、さまざまな味わい方が楽しめる。また、チョクは小さなひと口サイズなので、多くの人と焼酎を酌み交わすことができる。宴席を大切にする人吉・球磨ならではの酒器ともいえ、現在も地元の宴席では球磨焼酎がガラとチョクで振る舞われることが多い。人吉・球磨で球磨焼酎を飲む機会があれば、ぜひこの伝統の飲み方を試してほしい。また、ガラとチョクを販売している蔵元もあるので、球磨焼酎と一緒に購入して自宅でゆっくりと楽しむのも乙だ。
そもそも「人吉・球磨」というのは、熊本県の南端にある人吉市と球磨郡4町5村(錦町・多良木町・あさぎり町・湯前町・球磨村・五木村・山江村・相良村・水上村)の総称。九州山地に囲まれた盆地に、日本三大急流の一つである球磨川などの清流が流れ、美しい自然に恵まれた場所だ。豊かな緑と良質な水に育まれた肥沃な大地は、古くから県内屈指の米どころとして知られている。この良質の米から、球磨焼酎が生み出されている。人吉・球磨の米を原料に、地元の地下水で仕込んだもろみを蒸留し、人吉・球磨で瓶詰めされた焼酎だけが、球磨焼酎と名乗ることができる。人吉・球磨で焼酎造りが始まったのは、16世紀後半の室町時代といわれる。日本人の主食である米を使った焼酎は、昔から贅沢品だった。しかし、なぜそんな高級食材を使って、焼酎を造ることができたのだろうか?人吉・球磨は、鎌倉時代から幕末までの約700年にわたり、人吉藩によって治められていた。深く険しい九州山地に囲まれた盆地は、一見すると稲作には不向きな土地。公称の石高はわずか2万2千石だったが、実際は谷間に10万石以上の隠田があったといわれる。そこで人吉藩では、豊富な米を生かすために藩を挙げて酒造りを奨励したのだという説もある。1995年、球磨焼酎は世界貿易機関(WTO)によって地理的産地表示を認められ、保護指定の対象となった。このことが意味するのは、“酒の味や品質が造られる地域と密接な関わりを持つ”のが認められたということだ。つまり、球磨焼酎は人吉・球磨の気候や水、米でしか造り出せないことが世界に認証されたのだ。フランスのボルドーワインや英国スコットランドのスコッチウィスキーといった世界の名だたる銘酒と同じように、地名の「球磨」を名乗ることが国際的に認められた数少ない酒、球磨焼酎。世界ブランドとなった球磨焼酎の認知は、日本全国だけでなく海外でも少しずつ高まりつつある。観光を楽しむならホテル選びも重要!ホテル・宿を見つけて、旅行に行こう!
人吉・球磨地方には、28の蔵元が点在している。球磨焼酎のことをより深く知るなら、酒蔵巡りを楽しんでみてはいかがだろう。歴史や製法を学んだ後に味わう球磨焼酎は、さらにおいしく感じられるはずだ。
人吉・球磨の土産物が購入できるおすすめスポットを紹介。種類豊富にそろう球磨焼酎はもちろん、地元ならではの特産品を購入できる。
長期貯蔵させたものの中でも、3年以上じっくり寝かせたビンテージ焼酎は“古酒”と呼ばれる。熟成するにつれて濃厚になっていく味わいを、ぜひ通常の焼酎と飲み比べてみてほしい。達人おすすめの古酒を紹介。
・熊本空港から約90キロ、約1時間10分。九州自動車道経由人吉インターチェンジで下車 ・熊本市内から約80キロ、約1時間10分。九州自動車道経由人吉インターチェンジで下車 ・鹿児島空港から約65キロ、約50分。九州自動車道経由人吉インターチェンジで下車
・肥薩線JR人吉駅にて下車
人吉の食とともに、球磨焼酎を楽しむ
球磨焼酎を楽しむなら、ぜひ地元の食とともに味わってほしい。人吉市内の和食店や居酒屋には、球磨焼酎の銘柄が充実。焼酎初心者や、自分の好みの味を見つけられていない人は、気軽に店の人に尋ねてみよう。カウンターでお酒を飲んでいると、常連客から“どこから来たとね?”と声をかけられることも。
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