1. 夕張観光 ぶらり「映画の街」の名所めぐり

達人指南

現地の達人が旅行の楽しみ方を伝える観光コラムです。人気の観光地から知る人ぞ知る穴場まで、達人だからこそ分かる一歩踏み込んだ“通”な情報を紹介しています。

夕張観光 ぶらり「映画の街」の名所めぐり

  「幸福の黄色いハンカチ」をはじめ、数々の映画の舞台となった夕張市。冬には映画祭が開かれ、多くの映画人やファンでにぎわう人気の観光地だ。映画好きはもちろん、誰もがきっと笑顔になる〝映画のある街〟の楽しみ方を紹介する。

幸せの黄色いハンカチ

  札幌から車で約1時間半。山間にある夕張市は、人口1万人弱の小さなまち。けれども冬の「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」には、人口と同じくらいの人々が集まり、映画の世界を満喫。市内でロケされた作品は30本以上を数え、映画人の〝故郷〟として愛されている。

街角のレトロな映画看板など、映画好きにはたまらないスポットだが、最大の魅力は「人」にあり。そもそも炭鉱街として栄えた夕張には、映画館が数多く存在。市民に根付く〝映画愛〟が、映画によるまちづくりを支えているのだ。映画祭参加者や観光客にリピーターが多いのも、笑顔で迎えてくれる地元市民の温かさゆえ。映画と夕張をこよなく愛するガイドの達人に、まちの魅力を聞いた。

ライター/新目七恵 投稿/2015年 10月


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松宮さん
(まつみや ふみえ)
松宮 文恵さん

夕張“映画”ガイドの達人
  夕張出身の夕張観光案内センター長。映写技師だった祖父のおかげで幼い頃から映画館に入り浸り、大の映画好きに。映画館なき後、「映画のある街の灯をともし続けよう」と自主上映団体の運営に参加し、映画祭も応援する。夕張市の財政破綻後、地元の良さを再認識。父は炭鉱の支柱夫で、炭都の栄枯を体感した経験も含め、「正しいまちの姿を伝えたい」とガイドを続ける。

最盛期は17館! 炭都・夕張は映画の都だった

往時の夕張

  そもそもなぜ、夕張は「映画のある街」なのか。実は、かつてこのまちは、映画館がずらり建ち並ぶ〝映画の都〟だったのだ。夕張地域史研究資料調査室室長の青木隆夫さんによると、明治期から数えた劇場・映画館の数は40館以上! 最盛期の昭和36年頃は、17館もあったという。

山深いまちに映画館が林立したワケは、炭鉱による繁栄が大きい。1960年、夕張市の人口は最多の約12万人。炭鉱マンの安らぎとして、家族の楽しみとして、映画は大いに喜ばれた。父が炭鉱に勤め、祖父は映写技師だった松宮さんも「まるで『ニュー・シネマ・パラダイス』のように、よく映写室から映画を観ました」と懐かしげ。また、当時の映画館は芝居や講演にも使われ、「小さい頃、遠幌会館という劇場で日本舞踊を踊ったこともある」とか。夕張市民にとって映画は、炭鉱の記憶と強く結びつく。今でこそ映画館はないけれど、そんな映画への熱い想いが、このまちには連綿と息づいているのである。

懐かしくて新鮮! 映画看板の並ぶ「キネマ街道」を歩こう

映画看板

  夕張を訪れたなら、まずは本町地区の「キネマ街道」を歩いてほしい。これは、夕張駅からホテルシューパロ付近までの約1.2キロを結ぶメインストリート。商店街のあちこちに昔ながらの映画看板約50枚が掲げられ、昭和の映画黄金期を彷彿とさせる風景が楽しめる。作品は「太陽がいっぱい」「猿の惑星」「男はつらいよ」…など名画ばかり。「任侠ものからおしゃれな洋画までいろいろ。好みの作品を探したり、〝自分の青春〟を見つけたりしてほしい」と松宮さん。ちなみに、彼女のお気に入りはホテルマウントレースイにある「長崎ぶらぶら節」。主演の吉永小百合さんのファンで、デビュー作から応援しているそうだ。

看板はどれも、職人による手描きなのも味わい深い。昔を知る人には懐かしく、知らない人には新鮮に映ることだろう。夕張駅からのんびり歩いて1時間程度の道のりなので、気軽にぶらり散策して、映画の街ならではの光景を目に焼き付けよう。

夏はロケ地巡り! 夕張ロケ作品は30本以上

幸せのファミリア

  夏の夕張はロケ地巡りに最適。なかでも人気なのが、夕張駅から車で5分の「幸福の黄色いハンカチ ― 想い出ひろば ―」だ。ラストシーンと同じく、黄色いハンカチが風にたなびき、主演の高倉健さん気分を味わえる。記念写真を撮るなら、ハンカチと炭住が一緒に収まる敷地奥からがベスト。「本町地区にも健さんが登った石造り階段などがあるので立ち寄ってください。ロケ時と様変わりした街並みに、炭鉱がなくなることの意味も考えてほしい」と松宮さんは語る。

夕張のロケ作品は、1953年の「女ひとり大地を行く」から2016年公開の「スイートハート・チョコレート」まで30以上。ロケ地情報は夕張観光案内センターなどで紹介しているが、一番のおすすめは松宮さんにガイドを頼むこと。これまで多くのロケを手伝った彼女なら、たとえば妻夫木聡、佐藤浩市、浅野忠信ら俳優さんとの思い出話も豊富。現場のウラ話を聞けば、ロケ地巡りも一層思い出深くなるはず。

冬は映画祭へ! 話題の大作からインディーズまで多彩に上映

ステージイベント

  冬の夕張といえば、何といっても「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」だろう。上映するのは、ハリウッド大作から日本のインディーズ作品まで80~100本前後。どれを観るか迷うのも楽しみのひとつだが、「日本未公開の招待作品は要チェックです」と松宮さん。2015年の場合、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」を上映したところ、直後の米国アカデミー賞で主要4部門を受賞! 大きな話題となる前に、観客はどこよりも早く観ることができた。また、若手監督の登竜門的コンペ部門も、新しい才能を発見できるチャンス。ここでしか観れない作品もあり、意外な傑作との出会いを楽しみにする映画ツウも多いそう。

映画祭は1990年、行政主導で始まったが、市の財政破綻で2007年は休止。翌年、市民中心に復活して、2015年には25周年を迎えた。初期の頃から携わる松宮さんは「いろんな人と同じシーンで笑い、泣けるのが映画の良さ。ぜひ夕張で、映画三昧のひとときを過ごしてほしい」と語る。

映画祭でまちがひとつに。ゲスト&市民との一体感も魅力

フォトセッション

  夕張市民やゲストとの触れ合いも、映画祭のお楽しみだ。ストーブパーティーは、参加者同士の距離感がグッと縮まる名物企画。日没後、外に用意されたストーブを囲んで、市民手作りの鍋を頬張れば、心も体もほかほか。振る舞い酒を飲みながら、気付けば見知らぬ映画人と映画談議に盛り上がる…なんてことも。寒くて狭いエリアだからこそ生まれる交流が、この映画祭の醍醐味なのだ。

会場は7、8カ所あり、特設テント「ホワイトロック」のほか、旧小学校校舎の「ひまわりの宿ひまわり」や「ホテルシューパロ」など地元施設を活用。これまでメイン会場となっていた「アディーレ会館ゆうばり」は、ミニシアターもあり親しまれていたが、老朽化のため残念ながら2015年で閉館に。それでも、まちぐるみによる映画祭の盛り上がりは今後も続く。2017年は3月2~6日に開催される。

「おかえりなさい」が合言葉の映画祭に来て、「夕張を故郷のように感じてほしい」と松宮さん。もちろん次回も会場で、明るい笑顔で参加者を迎えてくれるだろう。


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夕張 おすすめ観光情報

あの感動を再び! 夕張ロケ地3選

  観てから行っても、行ってから観ても楽しめる。夕張ゆかりの映画とそのロケ地をご紹介。

  • NO1幸福の黄色いハンカチ
  • NO2白い想出の鐘
  • NO3冬の幽霊たち
おすすめポイント
  夕張ロケの代表作「幸福の黄色いハンカチ」のロケ現場は、観光地「想い出ひろば」として大切に保存されている。長屋の中には、実際に使われた車や関連資料を展示。平成26年(2014)に亡くなった高倉健さんを偲んで訪れる人も少なくない。篠原哲雄監督の最新作「スイートハート・チョコレート」は、冷水山山頂の記念碑「白い想出の鐘」が重要なシーンに登場。冬場なら、スキー場を利用すれば映画そのままのロマンチックな雰囲気が楽しめる。知る人ぞ知るオール夕張ロケ作品が、「冬の幽霊たち ウインターゴースト」。松宮さんもバッチリ出演する、心温まるファンタジーだ。

達人おすすめ! 夕張グルメ3選

  せっかくならおいしい地元グルメも味わおう。達人がおすすめする故郷の味をチョイス。

  • NO1カレーそば
  • NO2夕張あんかけやきそば
  • NO3のんきのラーメン
おすすめポイント
  「夕張カレーそば」は、炭鉱で栄えた頃から親しまれてきた夕張市民のソウルフード。市内6店舗で「夕張カレーそば協議会」も組織しており、なかでも「鹿の谷3丁目食堂」は元祖・藤の家直伝の味。また、松宮さんが若い頃食べて「都会の味!」と驚いたというのが、「メイプルタウン」の名物「夕張あんかけやきそば」。本町にある「のんき」のラーメンは、「今どき珍しい懐かしい味」と松宮さん。壁中に飾られた映画人のサインが、店の人気ぶりを伝えている。

ここにも立ち寄りたい! 夕張名スポット3選

  映画だけじゃない、夕張をさらに楽しめるオススメの観光名所を紹介。

  • NO1清水沢地区
  • NO2滝の上公園
  • NO3夕張シューパロダム
おすすめポイント
  日本を代表する産炭地だった夕張市。清水沢地区はいまも関連施設が残り、当時の面影を色濃残すエリア。特に、夕張の街並みを一望できるズリ山からの景色は感慨深い。秋に訪れたなら、滝の上公園がおすすめ。見事な渓流と色づく木々の競演が楽しめる。2015年に完成した夕張シューパロダムも絶景スポット。いつでも見学できるので、四季折々の眺めを楽しんで。

北海道にはロケ地がたくさんあります!

  映画・ドラマ・CM・雑誌など、盛り沢山のロケ地を紹介!

  • 鉄道員
  • 探偵はBARにいる
  • 「北の国から」
編集部の視点
  北海道はさわやかな夏、大地が雪に覆われる冬など、特色のある気候風土と、豊かな自然環境に恵まれた映像資源の宝庫。映画やテレビドラマの舞台として数多くのロケ撮影が行われてきた。ここでは夕張以外の土地で撮影された名作をご紹介。

どこまでも広がるラベンダー畑…。

夕張市への交通アクセス

  札幌から車で約1時間半、新千歳空港方面から約1時間と日帰り圏内にあるが、JRの直通便はないのでご注意を。バスも本数が限られているので、乗り過ごさないよう事前にチェックを。「紅葉の時期はJRがおすすめ。車では見れない絶景が車窓から味わえます」と松宮さんはすすめる。

夕張観光案内センターの施設情報

  【住所】北海道夕張市末広1丁目1-4
【電話】0123‐52‐2662
【開館時間】9時~17時
【駐車場】あり

車(レンタカー)で

  【札幌方面から】
道東自動車道・夕張ICを降りて、国道274号・国道452を経由し、約80分。または、道道3号線を利用して約90分。
【新千歳空港から】
道央自動車道・千歳IC、または、道東自動車道・千歳東インターチェンジから高速道路にのり、道東自動車道・夕張ICで下車。国道274号・国道452号を経由して約60分。

バスで

  【夕鉄バスの場合】
新さっぽろ駅前・大谷地バスターミナルから札幌急行線に乗り、夕張で下車
【北海道中央バスの場合】札幌駅前バスターミナル16番乗り場から「高速ゆうばり号」に乗り、夕張で下車。
※マウントレースイスキー場が営業する冬期間のみ、新千歳空港と夕張をつなぐ便が運行。中央バスに問い合わせを。

JRで

  【札幌から】
約2時間10分~。「特急おおぞら」「特急とかち」を利用する場合は「新夕張」で、普通・快速エアポートの場合は「千歳」「南千歳」のいずれかで乗換えが必要。
※特急の場合、「新夕張」に停車しない列車もあるので、ご注意を。
【新千歳空港から】
約2時間~。いずれの列車の場合も「南千歳」で乗換えが必要。

夕張観光のQ&A

Q 市内ガイドを頼む方法は?
A 夕張観光案内センターに、前日までに予約すれば、松宮さんら地元住民のガイドが案内してくれる。ちなみに松宮さんは週4~5日出勤しているので、直接センターに行けば会えることも多い。気軽に顔を出してみよう。
Q 映画のほかに、市内観光のおすすめは?
A レースイスキー場は、新千歳空港から一番近いスキーリゾートとして人気。また、夕張川の川下りツアーやカヌー・ラフティング体験など、夏場のアクティビティも充実。夕張川の自然体験は、「ゆうばり自然体験塾」(0123‐55‐2211)へお問い合わせを。
Q 映画祭に参加したい! コツは?
A 初めてでも、会場で映画を観て、イベントに参加すれば、誰でも仲間になれるのが映画祭の良さ。ただ、映画祭期間中は宿泊施設が満室になることが多いので、早めの予約がおすすめ。数カ所に分かれる会場間の移動が必要なため、くれぐれも滑らない靴と温かい服装を用意してほしい。

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