雲仙温泉のツウな巡り方を
現地編集部が徹底ガイド

雲仙温泉を楽しみに来た人が必ず訪れるのが、雲仙地獄です。雲仙温泉街の中心にあり、もくもくと立ち込める湯けむりに、温泉地ならではの強い硫黄の香りが漂っています。

雲仙の古湯と新湯の間の白い土（温泉余土）に覆われた独特の景観が広がるここにあるのは、さまざまな由来を持つ「地獄」の数々。噴出する温泉が、まるでチュンチュンと鳴くスズメの鳴き声のような「雀（すずめ）地獄」というかわいらしいものから、かつてキリスト教徒だった清七が拷問されたときに噴出したといわれる「清七地獄」など恐ろしい逸話を持つものまで、その数なんと30あまり。それぞれ個性豊かな地獄の数々を歩道に沿って巡ります。

途中にぜひ立ち寄ってもらいたいのが、「雲仙地獄茶屋」。ここでは、雲仙地獄で蒸した熱々の温泉たまごが楽しめます。「1個食べたら3年長生き、2個食べたら5年長生き、3個食べたら死ぬまで長生き」といわれ、多くの人が買い求める人気商品。小腹を満たすのにちょうどいい温泉たまごは、2個200円。シンプルに塩でいただきます。口に含むとほんのり硫黄の香りが広がり、素朴ながらおいしい雲仙地獄の名物です。

また暑い時期には、地元で湧き出た天然水に島原半島で採れたグリーンレモンを使った「温泉（うんぜん）レモネード」もおすすめ。また販売所の前には、雲仙地獄足蒸しが。地熱や噴気を利用したもので、靴を脱いで、すのこの上に足を置くと地獄の熱を体感することができます。足裏からじわじわと伝わる地獄の熱さは、案外に心地よくクセになりますよ。

雲仙地獄のあとは、すぐ近くの「温泉神社」へ。ここは、「おんせん」ではなく「うんぜんじんじゃ」。小ぢんまりした神社ではありますが、実はパワースポットとして知られています。社殿の隣にある大きな柿の木は「夫婦柿」といわれるもので、樹齢は何と200年以上。2本の柿の木を両手を広げて抱えるように抱いて、下から上へなでながら祈願します。

実際にやってみると、じわじわと大木からパワーがチャージされているような…。特に恋愛成就や子孫繁栄にご利益があるといわれているので、若い女性やカップルはぜひチャレンジしてくださいね。

次におすすめしたいのは、温泉神社から車で5分程の場所にある「小地獄温泉館」。なんと1919年に開館した歴史ある共同浴場で、観光客だけでなく、地元の人にも古くから愛されています。建物のすぐ裏手に源泉があり、湧き出たばかりの源泉をぜいたくにもかけ流しで楽しめます。

木造の趣きある浴室に入ると見えるのは、ふたつの湯船。大きな湯船は温度が高めの45度前後。熱めが好みな地元の方たちに向けてのもので、温度が低いとクレームになることもあるのだとか。そのため、ビギナーは少しぬるめの小さな湯船からはじめるのがおすすめです。雲仙随一ともいわれる白濁したにごり湯は、入るととろりと体を包み込んでくれます。じわじわと体の芯まで温まったころには、肌がしっとりすべすべに。湯上りにほんのり残る硫黄の香りも、お楽しみに。

温泉で旅の疲れを癒やしたあとの街歩きは、「雲仙ビードロ美術館」へ。外国から長崎、そして雲仙へ広がったビードロの工芸品を展示する全国的にも珍しい美術館です。ここでは、江戸時代にビードロと呼ばれた吹きガラスやボヘミアンガラスなどのアンティークガラスをコレクション。さらに、自分だけのガラスアート作りを体験することもできます。ストラップやキーホルダー、グラス、万華鏡などは、世界でたったひとつ旅のお土産にもぴったりです。

■温泉神社
【問い合わせ（TEL）】0957-73-3434（雲仙温泉観光協会）
【開館時間】24時間開放
【休館日】なし
【料金】無料

■小地獄温泉館
【問い合わせ（TEL）】0957-73-3273（国民宿舎 青雲荘）
【開館時間】9時～21時
【休館日】なし
【料金】大人 420円、子ども210円、3歳以下無料

定番観光地の雲仙ですが、皆さんが知っているのは明るい時間の姿だけなんてことはないでしょうか。せっかく、楽しむなら昼とはまた違った魅力がある夜もおすすめです。そこで、雲仙観光は初めてという人もリピーターも楽しめる夜の雲仙観光を紹介します。

雲仙観光で外せないのが「雲仙地獄」。雲仙まで旅行に行ったなら、必ず訪れる定番のスポットですが、この雲仙地獄は夜にも巡ることができます。とはいえ、特別な照明がないため暗く、何も知らないまま奥に進んでいくのはちょっと無理があるのも事実。そこで利用したいのが、雲仙ガイドさるふぁが企画する「雲仙地獄のナイトツアー」です。小さなペンライトの明かりを頼りに雲仙地獄を巡る人気ツアーで、夜の雲仙地獄を知り尽くした佐々木雅久さんがガイドしてくれます。

スタートはあたりが暗くなった20時15分。このころになると多くの観光客は、宿でのんびり食事をしたりくつろいだりしているので、人通りもまばら。すでに昼とは違う雰囲気を感じながら、早速、ガイドの佐々木さんと雲仙地獄に足を踏み入れます。

最初の見どころは、もうもうと湯煙が立ち込める清七地獄。静かな夜の雲仙地獄では、その勢いの良い噴気の音や迫力を一層感じることができます。さらに、ペンライトの小さな明かりを頼りに進んでいくと、夜に見るとキラキラと光る黄鉄鉱のありかを教えてくれたり、都会ではまず見ることができない天の川など満点の星空を楽しめたり。夜ならではの雲仙地獄の魅力を余すことなく伝えてくれます。

そんなナイトツアーのなかでもぜひ楽しみにしていてほしいのが、昼間見ても迫力の大叫喚地獄。この大叫喚地獄の前で耳を澄ますと、地獄につながるといわれる岩場の奥から、夜にしか聞こえない悲鳴が聞こえてくることも……。「刺激が多い昼と違い、静かな暗闇の中でぐっと五感が鋭くなる夜だからこそ体感できるんですよ」と佐々木さん。そのスリルと迫力あるナイトツアーは、体験した人にしか分からない魅力が詰まっています。

雲仙の夜には期間限定のお楽しみも多くあります。そのひとつが、「雲仙仁田峠プレミアムナイト」。毎年、夏と秋に開催される期間限定のイベントで、2018年からは春を追加開催。雲仙を知り尽くした個性豊かなナビゲーターとともに、貸し切りバスで雲仙地獄近くにあるけやき広場を出発。雲仙ロープウェイで妙見岳山頂展望台を訪れます。まるで星空を散歩しているかのように夜空を走るロープウェイ。360度開けた大パノラマで、有明海はもちろん、島原や天草の夜景を一望することができ、春はライトアップしたミヤマキリシマを、そして秋はとりどりに色づく紅葉がまるで絨毯のように目下に広がっています。

雲仙ロープウェイにつながる仁田峠循環線は1956年の開通以来、夜間の通行が禁止されていて、1300年の間、夜に雲仙妙見岳へと立ち入った人はいませんでした。もちろん、今も特別に許可されたプレミアムナイトの専用バスしか通ることはできません。そのため、このツアーはまさに「プレミアム」。そんな神秘的な雲仙妙見岳展望所からの絶景は言葉で言い尽くせない美しさです。

さらに毎年2月に開催されるのが「雲仙灯りの花ぼうろ」。霧や雲が木の枝などについてできる氷「霧氷」をイメージした灯りのイベントで、雲仙の温泉街やツリーがイルミネーションで彩られます。さらに期間中の土曜は、花火が打ちあがり、澄んだ真冬の空に大輪を咲かせます。温泉街ならではの湯けむりと花火のコラボは、ここならではの景色に。

このほかにも、地獄の地熱を使ったエコなこたつ「エコタツ」やあったかグルメを提供するケータリングカーが登場する日も。普段とは一味も二味も違う、街歩きを楽しんでください。

■雲仙地獄のナイトツアー
【問い合わせ（TEL）】0957-73-2626（雲仙ガイドさるふぁ）
【開館時間】20時15分～、21時10分～
【定休日】不定休
【料金】1人500円、小学生以下300円

雲仙といえば温泉ですが、グルメや土産だって旅には欠かせません。そこで雲仙のマストグルメや土産を紹介します。

雲仙グルメの定番といえば、雲仙ハヤシです。明治時代、外国人の避暑地として人気だった雲仙では、海外から訪れた人がおいしく楽しめるようカツ丼をデミグラスソースで洋風にアレンジしたランチメニューが誕生しました。それが雲仙ハヤシのルーツです。

その雲仙ハヤシが、今、雲仙グルメとしてじわじわと評判を呼んでいます。店によりその味や調理方法はさまざまですが、中でも人気を集めるのがお山のカフェレストラン「グリーンテラス雲仙」のオムハヤシです。東京のレストランで経験後、Uターンで長崎へ戻ってきたシェフの塩見正彦さんが手掛けたもので、ベースになるフォンドボーはなんと8～10日間かけてじっくり素材を煮込んで作り上げたもの。さらにスプーンですっと切れ、口の中でほぐれるようにとろけていくまでに軟らかくなった長崎牛が贅沢に使われています。とろとろの卵とともに頬張れば、至福の極み。

またこのぜいたくなフォンドボーを使ったビーフシチューも絶品。どちらも素材の持つ奥深いうま味を感じることができます。素材のほとんどは島原半島を中心に、長崎近郊から取り寄せたもので、採れたての野菜を塩見シェフ自ら農家まで買いに行くことがあるというほど。素材の持つおいしさもさることながら、その魅力を存分に引き出した料理を求めて、ランチタイムは行列ができることもしばしばある人気店です。

グルメといえばスイーツも……となれば、湯せんぺいがおすすめです。湯せんぺいのはじまりは、明治時代。旧島原藩主の松平公が作らせたもので、体に良いといわれた温泉の源泉を生地に練り込んでいます。もちろん、湯せんぺいをただ食べるだけでもいいですが、せっかく雲仙に来たならぜひ、湯せんぺい焼きを体験してみて。

体験できるのは、雲仙では唯一、1枚1枚手焼きする湯せんぺいを販売する「遠江屋本舗」。ひとつ3キロもある熱々の金型に生地を流し込み思い切ってプレスすると、生地がじゅっと弾けるのを手に感じることができます。焼きたての湯せんぺいは、もちろん自分でいただきます。さくっとした軽い食感に、素朴な優しい甘さが広がり思わず笑顔に。

店内では、定番の湯せんぺいはもちろん、グラノーラやシガーロール、チョコバーなどさまざまな湯せんぺいスイーツも並び、若い女性を中心に人気を集めています。おしゃれでセンスの良いお土産を買いたいなら、ぜひチェックしてほしい店です。

もうひとつ欠かせないスイーツといえば、雲仙地獄茶屋などで購入できる温泉（うんぜん）レモネード。かつて雲仙に滞在したノーベル賞作家のパール・バックが描かれたレトロなパッケージがキュートで、爽快な飲み心地。歩いて乾いた喉を潤すのにおすすめです。

スイーツもいいけれど、せっかく雲仙に来たなら手元に残る旅の思い出を手に入れたいという人もいるでしょう。それなら、ぜひ「雲仙焼窯元」に足を運んでみてください。1925年ごろに小浜焼の創始者である本田親基が雲仙小地獄で築窯したのがルーツといわれる雲仙焼は、雲仙の土や釉薬を使って焼き上げるのが特徴です。

雲仙焼窯元では、その雲仙焼を販売。貴重なものはもちろんのこと、柔らかな色や形が愛らしいカフェオレボウルなど2000円代のお手ごろ価格の商品も扱っています。旅の記念に手馴染みの良い一皿を購入してみては。また時間があれば、自分だけの一皿を作るというのもおすすめです。雲仙焼窯元では陶芸体験も受け付けていて、焼き上がった器や皿は後日、自宅まで送ってくれます。スケジュールが合えば、当日の受け付けもOKなのでぜひチャレンジしてくださいね。

■お山のカフェレストラン　グリーンテラス雲仙
【問い合わせ（TEL）】0957-73-3277
【営業時間】11時～17時
【店休日】年末のみ
【公式ページ】http://greenterrace-unzen.jp/

■雲仙湯せんぺい　遠江屋本舗
【問い合わせ（TEL）】0957-73-2155
【開館時間】8時30分～22時
【店休日】不定休
【料金】湯せんぺい手焼き体験　1人1000円（小学生高学年以上から、3～5月・9～11月のみ受け付け、要予約）
【公式ページ】http://www.shokokai.or.jp/42/4236710170/

■雲仙焼窯元
【問い合わせ（TEL）】0957-73-2688
【開館時間】8時～18時
【休館日】不定休
【公式ページ】http://utanooto2015.wixsite.com/unzen