熊本発!「ローカル旅行」の楽しみ方から予約まで
更新:2018年11月9日
熊本城と並び、熊本市内の定番観光スポットとして知られる水前寺成趣園。阿蘇の伏流水が静かに湧き出る池を中心に、園内をぐるっと一周することができる桃山様式の優美な回遊式庭園です。正式名称は「水前寺成趣園(すいぜんじじょうじゅえん)」。熊本の市街地の近くにありながらもほっと一息つくことができる緑あふれるスポットを紹介します。
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ローカル案内役 藤田 秀樹(たびらい編集部)
福岡県出身。九州内の食べ歩きスポットを探し続ける編集スタッフ。カメラ片手に友人・知人を巻き込んで観光スポットにも出没。
ブリタニカ国際大百科事典日本語版も発刊された英語の百科事典としては最古のブリタニカ国際大百科事典小項目事典をはじめとする著名な事典にも名を記されている細川藩主の細川忠利によって作られた水前寺成趣園。阿蘇伏流水の湧水が満たす池を中心とする桃山式回遊庭園で、忠利や細川家歴代藩主ゆかりの地として、熊本地域での旅行で人気の観光地です。 歴史は古く、江戸時代にまで遡ります。1632年、肥後細川家三代細川忠利公は初代熊本藩主となります。その後、熊本城東南の地に豊前(大分県中津市)羅漢寺から熊本に来ていた住職・玄宅のために、一寺を設けて「水前寺」と号します。また、同地に御茶屋を建て「水前寺御茶屋」と呼ばれるようになります。これが水前寺成趣園の始まりです。 初代藩主細川忠利の長男である二代藩主光尚公、三代綱利公によって作庭が行われ、特に、綱利公の時代である1671年に築山や泉水が作られ、現在とほぼ同じ規模の庭園ができあがりました。名前は、中国の六朝時代の文学者である陶淵明の詩に由来するもの。陶淵明によって書かれた詩「帰去来辞」の中の一節「園日渉以成趣」からとって「成趣園」と名付けられます。阿蘇の伏流水をたたえる「回遊式庭園」で、1929年、国の名勝・史跡に指定されています。 江戸時代の浮世絵師、歌川広重が描いた「東海道五十三次」を模して作庭されたといわれており、阿蘇の伏流水が静かに湧き出る池を中心に築山、浮石、松などで表現された東海道五十三次の景勝を眺め、時代に思いを馳せながら優雅に散策できます。 敷地内には細川家の歴代藩主が祀られている出水神社や、京都から移築されたかやぶき屋根の建物「古今伝授之間(こきんでんじゅのま)」、「能楽殿」などが点在しています。細川藩から江戸将軍家への献上品でもあった、国の天然記念物「水前寺のり」の発祥地としても知られています。 肥後細川藩初代忠利公が鷹狩りに訪れた際、こんこんと清らかな水が湧くこの場所を気に入り、1636年頃に「水前寺御茶屋」と呼ばれる休息所をこの地につくりました。細川家の3代目綱利公が治めていた時代に完成。 「回遊式庭園」は、室町時代から江戸時代にかけて多くつくられ、日本庭園の集大成とも呼ばれます。ゆっくりと回遊しながら庭園の風景を楽しめます。面積は約7万3000平方メートルで1周約30分。立ち寄りスポットが多く、休憩を取りながらゆっくりと庭園を散策することができます。 正面入り口のすぐ左手に見えてくる出水神社。1878年に建てられた細川家の歴代藩主が祀られています。出水神社へとつながる橋を渡るとすぐに二つの手水鉢があり、そのひとつ「長寿の水」は飲めば長生きできると有名です。この水を目当てに遠方から訪れる人もいるほど。 出水神社は、熊本の街を繁栄させるために建てられた神社でもあり、商売繁盛のご利益も。毎年、春と秋には流鏑馬(やぶさめ)式、夏には祭りも開催されています。正月の三が日は入場無料で、参拝客でにぎわいます。 能楽殿では、春秋の大祭には神事能が奉納。また、毎年8月第1土曜の夕刻から薪御能が催され、熊本の夏の夜の風物詩として定着しています。月行事も開催されているので訪れる前にはイベントもチェックしてみてください。 池のほとりには、庭園を眺めながら落ち着いた時間を過ごせる「古今伝授の間」。「古今伝授の間」には、熊本藩藩主細川忠利の祖父であり、肥後細川家の基礎を築いた細川藤孝が後陽成天皇の弟である八条宮智仁親王に「古今和歌集」の奥義を伝授したとの逸話も伝っています。 かつての中心の御茶屋「酔月亭」は西南戦争で消失してしまいましたが、由緒あるかやぶき屋根がひときわ趣を感じさせるこの建物が、1912年に京都から酔月亭の跡地に移築。元々、京都御所から現在の京都府長岡京市の神社へと移り、解体保管など紆余曲折を経た後、この水前寺成趣園内にて復元されました。一時閉鎖された時期も経て、1998年4月、熊本土産として人気の高い「陣太鼓」や「武者返し」を生み出す老舗菓子メーカー「お菓子の香梅」によって公開が再開されました。 近年では、白川水源とともに熊本地震によって大きな被害を受けたスポットのひとつ。地震後には一時池の水がほとんどなくなってしまうほどの悲劇に見舞われながらも、半年ほど経った後には、無事に元の状態に復活。再び当時の時代を思い起こさせる姿となって、人々を魅了しています。美しい湧水池に優遊と泳ぐコイ、池に浮かぶ小島や富士山に見立てられた築山の周りの刈り込みの優美さ。熊本復興の象徴的な観光資源として、湧水スポットとしても親しまれています。桜名所としても有名で、美しい桜を愛でたり、写真を撮影したりできる花見スポットとしても知られています。名所が散らばる園内の風景は、季節によって雰囲気を変え、訪れる人を楽しませてくれます。 無料駐車場や利用施設の情報、花見情報などについては、行く前に調べておくと良いでしょう。 日本三名城のひとつに数えられる「熊本城」や宮本武蔵が「五輪書」を書いたとされる「霊巌洞」などの周辺の観光施設と組み合わせて楽しむ旅行者も多く、知識豊富なボランティアガイドによる水前寺成趣園や熊本城見学、観光タクシーによる観光プランなども人気です。
JR熊本駅からは路面電車で約35分、最寄りの水前寺公園駅からは徒歩約4分。中心地からは少し離れていますが、路面電車の駅からは近く、アクセスしやすい環境です。 入場料は大人(高校生以上)400円、小・中学生200円。春から秋にかけての3月~10月は7時30分~18時(入園17時30分まで)、冬の時期の11月~2月では8時30分~17時(入園16時30分まで)と利用時間が異なります。 HISクーポンやトクトククーポンなどの割引クーポンを活用することで、お得に利用することができます。 環境省が選ぶ「平成の名水百選」にも選ばれた湧水池の中では、コイが優遊と泳ぎ、庭園がつくられた時代の趣がそのまま感じられます。水の都とも称される熊本市。水道水は100%地下水でまかなわれており、どの家庭でも蛇口をひねれば、おいしい地下水が飲めます。 美しい水の流れる湧水池とそれを取り囲むようにして広がる庭園は、東海道五十三次の景色を模してつくられたといわれており、湖に見立てられた湧水池と緩やかな起伏のある富士山のような築山の景色で庭園美を存分に楽しめます。 庭園は季節によって景色を変え、春の時期には満開の桜や梅の花も見ることができ、公園の景色はより華やかに。冬は朝霧が水面に広がり、1年を通じて美しい景観が楽しめます。 池のほとりにある「古今伝授の間」は、熊本県の重要文化財にも指定。「古今伝授」とは、日本最初の勅撰和歌集「古今和歌集」の和歌に対する解釈が、身分・器量・人柄などが全てそろった選ばれし人へと秘密に伝授されること。古今伝授の間は、京都にあった時代に「古今伝授」が行われた空間として現存している「日本で唯一の建物」です。 古今伝授の間では、菓子と抹茶と一緒に堪能することができます。座敷席では、優美な池と庭園の景色を眺めながら落ち着いた時間が過ごせますよ。黄身餡(あん)を、卵白で作られた真っ白な淡雪羹(あわゆきかん)でくるんだ「十六夜(いざよい)」は絶品。淡雪羹のふわふわでとろっとした食感と、上品な黄身餡の甘味が口いっぱいに広がります。 同じくこちらで味わえる「加勢以多(かせいた)」は、細川藩政時代より献上品として用いられました。カリンのジャムをもち粉で作ったおぼろ種ではさみ、細川家の家紋「九曜の紋」を焼き付けたほんのり甘酸っぱいお菓子です。 お菓子の香梅は、熊本の歴史あるメーカーで、北海道産の大納言小豆がたっぷりのみずみずしいあずき餡で求肥を包んだお菓子「陣太鼓」でも有名です。 400年以上もの歴史を持つ趣ある空間で、日本の伝統のおもてなしと和の時間を堪能してみてください。
水前寺成趣園まで続く長さ約100メートルの参道には、昭和レトロな雰囲気が漂う土産物屋やレストランが建ち並んでいます。いきなり団子やからしれんこん、馬刺し、熊本ラーメン、だご汁など熊本の名物グルメを味わえるお店がたくさん。参道にはベンチも用意されているため、店を回りながらゆっくりと熊本名物に舌鼓を打つことができます。 先に熊本の名物でお腹を満たしてから公園内の古今伝授の間でゆっくりお茶をしても、散策後に食べ歩きや土産物を探すのも◎。それぞれの店には熊本ならではの商品がズラリと並びます。 熊本の銘菓にいきなり団子があります。水前寺成趣園では、参道の「はやしのいきなり団子」で味わえますよ。団子に使用するあんこは国産小豆。さつまいもは信頼を寄せる熊本県農家から仕入れており、質にもこだわります。いきなり団子のほか、ほのかな薄紫の生地に包まれた紫芋饅頭も。紫芋を混ぜた生地で、芋餡をたっぷり包みます。小ぶりなサイズでちょっとお腹がへった時にぴったりです。 水前寺成趣園近辺での食事は「料理方秘 神の水」へ。水前寺成趣園近くにひっそりと佇む和食料理店です。メニューには霜降り馬刺し(2592円/税込)や馬レバ刺し(1296円/税込)、この地が発祥の水前寺のり(594円/税込)などがあり、各種懐石や丼ぶり、鍋料理まで幅広く味わえます。10月~3月の秋・冬の時期限定でふぐ料理もメニューに加わります。 店名の「料理方秘」とはその昔、肥後藩主・細川家の料理頭だった村中乙右衛門が藩主のために書き記したレシピのこと。藩主の健康維持を一番に考え、素材そのものの味を大切に生かしつつ、ひとつひとつ丁寧に作り上げました。その想いと料理に感銘を受けたという店主が「料理方秘」の心髄を追求、考案した伝統的な和食でもてなします。(料理方秘 神の水 公式サイト http://kaminomizu.com)
水前寺成趣園 【住所】熊本市中央区水前寺公園8-1 【電話番号】096-383-0074(出水神社) 【駐車場】なし(近くに有料駐車場あり) 【営業時間】 3月~10月……7時30分~18時(入園17時30分まで) 11月~2月……8時30分~17時(入園16時30分まで) 【定休日】 なし 【利用料金】 大人 400円 子ども(小中学生) 200円 【公式サイト】http://www.suizenji.or.jp/
車(レンタカー)で
・熊本空港から……県道36号経由で約15キロ、約30分 ・熊本駅から……県道28号経由で約6キロ、約15分 ・九州自動車道の熊本インターチェンジから……国道57号経由で約8キロ、約15分
電車で(熊本市電)
・JR……九州新幹線・鹿児島本線の熊本駅からJR豊肥本線で約20分の新水前寺駅下車、徒歩約15分 ・熊本市電……九州新幹線・鹿児島本線の熊本駅から健軍方面行きで約30分の水前寺公園電停下車、徒歩約5分
水前寺成趣園の園内に入るには、いくつか入口がありますか?
参道からつながる正面入口と北入口(9時30分~16時開門)の合計2カ所。どちらも近くに有料駐車場があります。
園内を1周するのにどのくらいかかりますか?
約30分です。園内には休憩用のベンチが設置してあるので、途中で休むこともできますよ。
「古今伝授の間」は自由に見学できますか?
開園時間内であれば、別途料金などはかからず見学ができます。「古今伝授の間」でお抹茶とお菓子のセットをいただく場合は、別途料金が必要となります。
年間を通して、どんなイベントがあるんですか?
毎年4月には春季祭典、10月には秋季例大祭が行われ、流鏑馬式や献茶式などに多くの見物客が訪れます。また、8月の第1土曜日は薪能神事。元旦には能楽殿で舞初めの奉納が行われます。