城下町・日出を
現地編集部が徹底ガイド

大分県中部に位置する日出（ひじ）町は、豊後国3万石の城下町として栄えた歴史あるエリアです。歴代の日出藩藩主は、豊臣秀吉の縁戚にあたる木下家が務め、そのシンボルともいえる日出城は、関ケ原の戦いの後に築城されました。現在では、城壁やお堀跡などが当時のまま残っています。

日出城の大きな特徴は、別府湾を望む海岸沿いに建てられていること。晴れた日は、城壁を背に真っ青な海を眺めることができます。そして一番目を引くのが、高々とそびえる城壁。築城の名手といわれた穴生理右衛門（あのうりえもん）が指揮し、自然石をあまり加工せずに積み上げる野面積の製法が大きな特徴です。また、城の北東側には、当時の姿を復元した隅櫓（鬼門櫓）があります。北東の位置は、昔から鬼や悪霊が出入りする鬼門の方角といわれていました。そこに建てられた鬼門櫓は、鬼門をさけるためか、北東側の隅を切り落とした形で建てられていて、全国的にも珍しいといわれています。

さらにディープに歴史のことを知りたい場合は、ガイドによる案内を受けることもできるので、詳しくは二の丸館で確認しましょう。二の丸館は日出城址に隣接していて、日出観光の拠点として活用できます。町の観光パンフレットが豊富に揃うほか、観光協会のスタッフが常駐しているので、旅のおすすめを教えてもらうことも可能。ガイドツアーや各種体験プログラムの申込み、レンタサイクルの貸出も行っています。

なかでも人気なのが、着物を着て城下町を散策できるプログラム。毎月第1・第3土曜（その他の日時でも相談応）には、好きな着物を選んで着付けをしてもらえます。年齢問わず豪華な振袖の着物が着られることもあって大人気です。特定のイベント日には、着物を着て抹茶体験もできます。館内には軽食が食べられる休憩スペースやお土産コーナーも。

お土産物では、海の町・日出ならではの海産物の加工品が人気です。日出城址の周辺には、歴史ある町並みが今も残り、神社仏閣や美術館など見どころが点在しています。レンタサイクルでのんびり巡るのもおすすめです。

日出町は、知る人ぞ知るアートの町。正当派から個性派まで、多くのアートスポットが点在しています。

日出城下町の中にあるのは、白壁の建物が美しい「二階堂美術館」です。地元の酒造メーカーである二階堂酒造が運営する私設美術館で、代々受け継がれ収集されてきた美術品を広く一般に公開しています。横山大観や川合玉堂、上村松園など代表的な近代日本画の作品を展示してあり、その数は1000点を超えています。明治以降の近代日本画の展開がみられる、全国的にも数少ない日本画専門の美術館。落ち着いた雰囲気の中で、美しい絵の世界と向き合えます。

城下町を離れ、自然豊かな大神エリアへ。ここには、作家の個性を色濃く表現した美術館が点在しています。日出町出身の画家・佐藤俊造さんの絵画を展示している「花の木美術館」もそのひとつです。豊かな色彩と自由な発想の作品が魅力で、年2回の頻度で作品が入れ替わります。不定期で開催されているワークショップや演奏会などにも注目です。

もうひとつは「石ころたちの動物園」。加工していない自然の石を、そのままの形を活かしながらストーンペインティングされた作品たち。作家・阿部いづみさんによる動物をモチーフとした石ころの芸術品400点以上が、館内や屋外に展示されています。

木彫家である安藤光平さんによるつげを使ったアクセサリー工房「開（かい）工房」も見逃せません。木の魅力を最大限に引き出したデザインで、帯留めやかんざし、ブローチなどの一点物の作品が並んでいます。大神エリアでアートスポットを巡った後は、自分でアート作品をつくる体験はいかがでしょうか。

約200種類のハーブやバラを栽培する「おおがファーム」では、植物を使った体験型のワークショップが開催されています。毎日開催されているのが、「香りのゼリーキャンドルづくり体験」。海沿いの町らしく、貝殻やシーグラスなどをガラス容器内に飾り付け、選べるアロマオイルを垂らして、ゼリー状のアロマキャンドルをつくります。アートゴコロが満たされる日出町なら、感性を磨く時間を過ごせますよ。

日出町の名物といえば、なんといっても「城下（しろした）かれい」です。日出城址に近い別府湾の海中に湧き出る真水で育ったマコガレイは、清水の環境で育つため泥臭みがないのが特徴で、「城下かれい」として全国に知られています。毎年4月から9月くらいにかけてシーズンを迎え、特に5月から7月にかけておいしくなるのだとか。

城下かれいを提供する町内の店舗の中でも、ぜひ一度訪れてみたいのが「的山荘（てきざんそう）」です。馬上金山（杵築市）の経営者・成清博愛（なりきよひろえ）が大正4年に建築した邸宅で、建物は国の重要文化財、庭園は国登録記念物に指定されています。高崎山と別府湾の借景とした庭園は見事で、食事や喫茶で利用した際には見学がきるのも魅力。館内には歴史ある建築技法が今も残り、見どころが多いのが魅力です。城下かれいを使った料理は事前に問い合わせのうえ、懐石コースでいただくことができます。

他にも、別府湾に面した日出町ならではの海の幸グルメは外せません。カジュアルに地の物をいただくなら、鮮魚と惣菜の店「魚商　福住也（ふくすみや）」がおすすめです。大神エリア産の新鮮な魚を使った惣菜や加工品が手頃な値段で買えるとあって、地元の人からも愛されています。店主の父が獲った魚のフライや刺身ほか、古くから地元で“漁師飯”として親しまれた「タイみそ」などもイチオシです。

海の幸ならぬ「卵の幸」を召し上がれ！　日出町は養鶏業が盛んな町でもあります。なかでも鈴木養鶏場の卵は、飼料や飼育方法に徹底的にこだわっているので、その味わいも独自のおいしさ。直営販売所の「すずらん食品館」では、採れたて新鮮な卵を買うことができるとあって、地元の人を中心に多くのお客さんが来店します。

お土産におすすめなのは、養鶏場の卵を使ったスイーツです。特に人気なのはシュークリームで、多い時は1日500個が完売することもあるのだとか。通常のレシピの1.5倍もの卵を使っているので、卵の風味がぜいたくに味わえます。