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達人指南
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約300種の花が咲くことから“花の湿原”と呼ばれる道東・霧多布湿原。約3000平方メートルにわたって広がる湿原のミネラルが太平洋に注ぎ出すため、海と湿原の両方に面した浜中町は海産物に恵まれる。霧多布の水は人にとって豊かな恵みのサイクルを生み出す、重要な存在なのだ。この湿原の乙な楽しみ方と浜中町のグルメを紹介!
北海道東部の太平洋に面した浜中町は、人口7千人ほどの漁業と酪農のまち。町の中央に広がる霧多布湿原(きりたっぷしつげん)は約3000平方メートルにわたって広がっている。なんと、これは東京ドーム600個以上の面積。ここに、春から秋にかけて約300種の花が咲くことから“花の湿原”とも呼ばれている広大な湿原だ。 霧多布湿原は、約5000年前までは海底で、その海水が引いて陸地になったといわれている。低層から高層までさまざまなタイプの湿原が見られ、その一部が1922年に天然記念物に指定された。また、国の特別天然記念物のタンチョウをはじめとする約100種類の野鳥も観察でき、自然環境の豊かさから平成5年にはラムサール条約に登録、2001年には北海道遺産に選定されている。 この“花の湿原”と浜中町の魅力とは? 霧多布湿原に精通した自然ガイド・阪野真人さんに詳しく話を聞いた。写真提供/認定NPO法人霧多布湿原ナショナルトラスト、浜中町観光協会ライター/萩 佑 投稿/2016年 3月北海道ローカル案内役が厳選おすすめホテル特集
[たびらいセレクション]
(ばんの まさと) 阪野 真人さんさん
霧多布湿原を見下ろす高台にあるのが、霧多布湿原センターだ。ビジターセンターとして、訪れた人たちへより深く湿原を楽しむための情報提供を行うほか、カフェやミュージアムショップも。センターに入ってすぐ目を引くのが、長さ8メートルもの長昆布の展示だ。実は、浜中町は天然昆布の水揚げ量で日本一を誇るまち。浜中町の自然や産業を分かりやすく楽しく学べるよう工夫された展示は、子どもたちにも人気が高い。このセンターのミュージアムショップには昆布のまちらしく、多くの昆布製品が並ぶ。浜中町でとれるものには長昆布や厚葉昆布(あつばこんぶ)などの道東の有名昆布の他、さまざまな種類 があり、それに応じたおすすめの食べ方があるそう。「他に棹前昆布(さおまえこんぶ)、猫足昆布(ねこあしこんぶ)など多くの種類の昆布があります。例えば、棹前昆布は柔らかいので、昆布巻きなどそのまま食べるのに向いています。猫足昆布はねばりが強いので、とろろ昆布になるんですよ」と、達人・阪野さんは教えてくれた。2階のカフェでは、浜中の海産物や乳製品など旬の食材を使ったメニューを楽しめる。料理をするのは地元出身のシェフ。工夫をこらした時期折々のメニューを味わってもらいたい。また、2階の展望ホールからの眺めはとくにおすすめ。ここではコーヒーも飲むことができ、広大な霧多布湿原を眺めながら一服する時間は格別だ。
霧多布湿原の魅力のひとつが「花の湿原」と呼ばれるほどの植物の豊富さ。春先からフクジュソウやミズバショウなどが咲き始め、その後、初夏には華やかなエゾカンゾウの黄色い群落が見られる。綿帽子のような真っ白なワタスゲが一面に広がるのも、この初夏の時期だ。群落の中にポツンと咲くクロユリなどを探してみるのも楽しい。その後8月中旬ぐらいまでいろいろな花を楽しめるが、秋にはススキの穂が湿原全体に広がり、夏とはひと味違った趣きのある風景となる。湿原だけで300種、町全体を含めると700種もの花が見られる、花のまち・浜中町。特に初夏~夏の霧多布湿原では独特の楽しみ方ができると阪野さん。「本州の一般的な生活圏では見られない花を、平地で観察できるんです」。例えば、ツルコケモモやガンコウランなどは、本州以南では標高の高い山間部にしか生えていない“高山植物”だ。これらの花は霧多布湿原に自生しており、6~7月が見ごろの目安となる。北海道旅行のベストシーズンに、厳しい登山をせずとも平地で見られるのはうれしいポイントだ。霧多布湿原センターでは「花暦カレンダー」を作ってウェブサイトで公開しており、霧多布湿原の代表的な花々の見ごろの時期がひと目で分かるようにしている。花の開花時期はその年ごとに異なることがあるので、公式サイトでチェックをしてから出かけよう。
より深く湿原を知りたい人はガイドツアーに参加してみよう。霧多布湿原センターでは、湿原や周辺の森・海を楽しむためのエコツアープログラムを用意している。特に達人・阪野さんがおすすめするのが「長ぐつトレッキング 」。これはガイドと一緒に、センター近くの湿原上流部の約1キロほどのコースを散策しながら楽しむプログラム。所要時間は、約2時間程度だ。靴やレインウェア、双眼鏡などもセンターで借りることができる。山間部を歩くトレッキングとは異なり、湿原はほとんど高低差がないので、年配の方でも気軽に楽しんでいるという。コースの中では木道ではなく、直に湿原を歩くシーンもあり、川の近くでは泥に少し埋まりながら進むような場所も。「参加者の中には、長靴を履くのは子どもの時以来という人もいるんですよ。童心に帰ったような気分を味わえます」と阪野さん。「木道の上を歩くのとは違い、地面との距離が非常に近くなるので、木道上からは見逃しがちな小さな花や動物なども見られるのが魅力です」。また、道東らしく、プログラムの道中にはシカなど野生生物に出合うこともある。湿原の成り立ち・仕組みなどの解説を聞きつつ、霧多布の自然を肌で感じられるガイドツアー、ぜひ参加してもらいたい。「長ぐつトレッキング」は5月、6月の限定ツアーで、9時と13時の一日2回催行されている。■長ぐつトレッキング【開催期間・時間】5月・6月限定、9時~、13時~【所要時間】約2時間【料金】大人2500円、子ども500円※問い合わせ先、施設情報などは下に記載
霧多布湿原のある浜中町は太平洋に面しており、豊富な海の幸がとれる。日本でも指折りの水揚量を誇る天然昆布の他、ウニ ・ホッキなど、さまざまな海産物が四季を通じて水揚げされる土地だ。浜中の昆布はダシをとるにはもちろん“食べておいしい”昆布。時期になると、町内の海岸付近のあちこちで小石を敷き詰めた平らな「干場(かんば)」と呼ばれる場所にずらりと並べて干す風景が見られ、これはひとつの風物詩にもなっている。また、浜中のウニは全国的にも非常に評価が高く、築地でも高値で取引されているそう。浜中では天然と養殖の2種類のウニがあり、時期は天然ものが11~3月、養殖は9~4月。この時期を中心に寿司屋など飲食店では、地元産のウニをたっぷりと乗せたウニ丼が提供されるので、旅行の折にぜひ味わって。また、地元の散布(ちりっぷ)漁協では、ウニの塩水パックなどの通信販売も行っている。達人・阪野さんは、この海産物にも霧多布湿原が大きな役割を果たしているという。「湿原の豊富なミネラル分が川を通じて海へ流れ込むので、良質な昆布が育つんです」。浜中の昆布は湿原の栄養素をとって育ち、ウニはまたその昆布を食べて育つ。自然が生み出す“豊かな海”のサイクルがあるわけだ。
浜中町を歩いていると、あちこちで「ルパン三世」の登場人物と出会うはず。実は、この町は原作者であるモンキー・パンチ氏の生まれ故郷。浜中町では「ルパン三世宝島プラン」と銘打ち、さまざまな取組みを行っているのでこちらも要チェック。町内の「ルパン三世通り」には、登場人物にちなんだ看板を掲げた「JIGEN’S BAR」や「PUB FUJIKO」があり、雰囲気十分。町内にあるふたつのJR北海道の駅舎「茶内駅」「浜中駅」にも、ほぼ等身大のパネル・ポスターが設置されており、こちらは並んで記念撮影するのにおすすめだ。また、浜中周辺のJR・くしろバス・霧多布中央ハイヤーでは、それぞれラッピング車両も運行している。旅の途中で乗車できたなら、特別な思い出になるはず。さらに「霧多布温泉ゆうゆ」では、浜中町でしか手に入らないオリジナル「ルパン三世」グッズも販売するなど、まさにまちぐるみのプロジェクトなのだ。2012年から、毎年夏の8月に開催されている「ルパン三世フェスティバル」には全国から毎年大勢のファンが集まる。このイベントでは、「ルパン三世」にまつわるコンテンツだけでなく、充実のグルメにも注目。「寿司の富士美」「寿し ひらの」といった海鮮店舗や、スイーツも提供する浜中町・海野牧場の直営レストラン「ファームデザインズ」が出店しており、まちが誇る“食”を味わえる。観光を楽しむならホテル選びも重要!ホテル・宿を見つけて、旅行に行こう!
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霧多布湿原はJR茶谷駅、最寄りの温泉である「霧多布温泉ゆうゆ」から車で約10分と若干の距離がある。列車・公共交通機関で旅行する人は、徒歩で向かわず、各所から霧多布中央ハイヤー(TEL:0153-62-3141)を使うのがおすすめだ。また、釧路中心部から車を利用する場合、移動時間の目安は約1時間30分。“道東”の距離感からすれば、決して遠くはない。
【住所】北海道厚岸郡浜中町四番沢20【開館時間】9時~17時【休館日】5月~9月の間は無休、10月~4月は毎週火曜日休館※冬季休館あり、12月20日~28日、1月2日~31日【入館料】無料【問い合わせ(電話番号)】0153-65-2779【公式サイト】http://kiritappu.mond.jp/center/
【釧路空港から】国道38号線を経由し、約100キロ、約1時間40分。【釧路中心部(駅)から】国道38号線を経由し、約75キロ、約1時間20分。
釧路駅より「くしろバス」で約2.5時間、1日4本の便が出ている。最終停留所「霧多布温泉ゆうゆ」から車で約10分。※「ゆうゆ」からはタクシー(霧多布中央ハイヤー)を利用。
JR根室本線・「茶内駅」が最寄駅。駅からは約6キロ、車で約10分。※駅周辺にレンタカーはないため、タクシー(霧多布中央ハイヤー)を利用
“炉端焼き”や和商市場の“勝手丼”などの名物グルメや、釧路湿原のタンチョウ、阿寒湖のマリモなど、豊かな自然と海産グルメを同時に楽しめるのが、釧路・阿寒エリア。たびらい北海道では大手の格安プランをまとめて比較! この地域の「人気ツアー」「最安値ツアー」を検索することができます。⇒釧路・阿寒の旅行プランを見る
貴重な湿原を次世代へ。霧多布湿原ナショナルトラストの取組み
「ナショナルトラスト」とは、資金や力を出し合うことで貴重な自然や文化遺産を残していこうという趣旨のもと、19世紀にイギリスで始まった市民運動だ。 霧多布湿原ナショナルトラストでは、「この湿原を未来のこどもたちへ」をコンセプトに、全国から支援を募って、湿原の民有地の買取りを進めるトラスト活動や、湿原の環境調査や再生事業、地域の子どもたちの勉強会や、企業や市民のボランティアによる木道整備や森の手入れなどを行ってきた。貴重な自然を保全し、次世代につなげるための取り組みだ。これらの地道な努力により、全国に霧多布湿原ファンは増えており、その活動は一歩ずつ着実に進んでいる。(写真提供:認定NPO法人霧多布湿原ナショナルトラスト)
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