白の身体に頭の先の赤いアクセント、黒い羽をもつ優雅な姿をもつタンチョウは、誰しもが見ほれてしまう美しさ。タンチョウは一年中同じ場所で生活する留鳥であり、翼を広げると2メートル40センチほどの大きさになる非常に大型の鳥類です。釧路空港の名称が「たんちょう釧路空港」であるほか、釧路湿原を代表するシンボルとして地域の人に愛されています。江戸時代には北海道全域に分布し、冬には関東方面にまで移動して越冬していたという記録も。しかし、明治初期から続いた乱獲と、湿原の水田利用による生息地の減少で明治期にはほとんど見られなくなり、一時は絶滅したかと思われたほどでした。
1952年、タンチョウは国の特別天然記念物に指定され、今なお北海道・道東地方で見ることができます。夏は湿原に入り、ヒナ鳥を育てるため、タンチョウを観察するのに最もおすすめの季節は冬。毎年、12月から2月には世界各国からタンチョウをはじめとした野鳥の愛好家が道東を訪れます。
一時、絶滅が危ぶまれたタンチョウは、1924年、釧路湿原で10数羽の生存が確認され、国の天然記念物に指定されましたが、戦後しばらくは依然10数羽前後と危機的状況に置かれたままでした。しかし、1950年頃の猛吹雪の日。数羽のタンチョウが畑に置かれた冬の保存用トウモロコシを食べに来たのをきっかけに給餌活動が盛んに。長年の保護活動の結果、現在では釧路・根室地方に、約1800羽までに復活しています。
タンチョウの生息域は、風蓮(ふうれん)湖と釧路湿原を中心に、霧多布(きりたっぷ)湿原、別寒辺牛(べかんべうし)湿原など道東の湿原から十勝川流域、オホーツク地域にまで広がっています。なかでも、釧路湿原は国内有数の繁殖地。冬の間は、湿原から離れた釧路市阿寒町や鶴居村(つるいむら)の給餌場で過ごしますが、3月頃に湿原へ戻ります。