歴女の気分で巡る中津観光を
現地編集部が徹底ガイド

すぐお隣は福岡県、大分県の北西部に位置する中津市は、歴史と文化の町として知られています。そのシンボル的存在ともいえるのが中津城。豊臣秀吉の天下統一を支えた天才軍師といわれる黒田官兵衛が、九州で初めて築いたのがこの中津城です。中津城は中津川の河口に位置し、北は海、西は川に面しています。

さらに東と南には何重もの掘がつくられていて、外壁に「おかこい山」といわれる土塁をめぐらさせています。中津城は九州では最古の近世城郭のひとつといわれていて、築城当初の石垣を見ることができるのが魅力です。

現在の天守閣は昭和39年に建設されたもので、内部では中津藩歴代藩主の鎧や武具など奥平家の貴重な史料などが展示されています。なかでも徳川家康の直筆の書や、家康から拝領した白鳥鞘の鑓などは珍しく、歴史ファンにはたまらないお宝です。

天守閣に隣接する黒田官兵衛資料館では、官兵衛の生涯とその功績、中津の地でどのような活躍をしたのかを、分かりやすく解説展示しています。また館内では中津名物のお土産物が販売されていて、その中には官兵衛ゆかりのものも。

リアルな目のマークが印象的な「目薬の木　健康茶」は、官兵衛の祖父がメグスリノキという植物を煎じて薬をつくったところ、目の健康に良いと評判を呼んで財を成したという史実によるものです。休憩スペースで実際に健康茶を飲むことができるので、気になる方は是非お味見を。意外にクセがなく、ホットにすると微かな甘みを感じるお茶です。その他にも、戦に長けた官兵衛にちなんだパワーストーン「黒官石」にも注目！勝運を願って持ち歩いてみてはいかがでしょうか。

また中津城周辺には神社も複数点在しています。奥平氏の祖が祀られている奥平神社や、黒田氏に謀殺された宇都宮鎮房を祀った城井神社など、歴史を感じさせる神社が多いのも特徴的です。歴男・歴女はもちろん、歴史に疎い人でも十分に楽しめる中津城周辺にも、ぜひ足を運んでみてください。

中津城内から一歩外に出ると、白壁の町なみや古い日本家屋、老舗の商家が点在していている城下町が広がっています。黒田官兵衛はもちろん、中津が誇るもう一人のスーパースターであり、1万円札の顔にもなっている福澤諭吉ゆかりのスポットもあり、史跡のあるところには案内版が立てられているので、歩きながら歴史の勉強もできます。

また、寺が集中するエリアもあり、観光スポットとして開放されている寺も巡るのもおすすめ。なかでも臨済宗の寺院である「自性寺」は、アートスポットとして有名です。境内にある「大雅堂」には、江戸時代の文人画家である池大雅（いけのたいが）の書や絵画が47点も常設展示されています。

基本的に力強い筆のタッチが印象的ですが、テーマによっては雰囲気が変わり、書と絵画が対になって展開する作品があるなど見ごたえ十分。アートに疎い人でも十分楽しめる内容になっています。別フロアでは、寺に伝わる美術品や史料が展示されているので、こちらもおすすめです。

見た目のインパクトが大きい「合元寺」も外せないスポットです。この寺は、黒田官兵衛方と地元・豪族の激しい合戦が行われた歴史があり、外壁に飛び散った血が何度塗り直しても浮き出てしまうため、外壁を全て赤で塗りつぶしたといいます。

ディープな歴史の息吹を感じる城下町ですが、センスのいいカフェが多いのも魅力です。明治26年創業の茶舗が手掛ける「丹羽茶舗喫茶室」は、元眼科だった建物を改装しているカフェ兼ショップ。自店が扱うこだわりのお茶をもっと気軽に味わってほしいと、日本茶とお茶を使ったスイーツを提供しています。ゆるいイラストが入ったパッケージの茶葉や、店主セレクトの茶器なども購入できるので、お土産にもピッタリです。

もう1店舗、こちらは古い小屋を改装したナチュラルテイストのカフェ「Coquette（コケット）」。店主夫婦が自身の健康のためにつくり始めた酵素ドリンクや生姜ドリンクをカフェで提供したところ大評判に！　旬の時期に採れた生姜だけを使ったジンジャーシロップは予約販売ですぐに売り切れてしまうそう。お店ではそんな人気のドリンクが味わえるので、ぜひとも飲んでみてください。

中津といえば「からあげ」。全国トップクラスのからあげ激戦地であり、からあげの聖地ともいわれるほど、中津を代表するご当地グルメです。醤油や塩をベースに、ニンニクや生姜など各店こだわりのタレにじっくり鶏肉を漬け込み、注文を受けてから揚げたてを提供するのが中津流。市内には60以上のからあげ店があるので、味比べで巡ってみるのもおすすめの楽しみ方です。

豊前海で採れる鱧も有名で、JR中津駅のホームには鱧を模った「日本一長いハモの椅子」が置かれているほど、鱧は中津のご当地グルメとして知られています。栄養価が高く、淡白な味わいが魅力で、主に料亭などでいただくことができます。もっとリーズナブルに鱧を味わいたいなら、「和風味処　鬼太郎」の「元祖鱧かつ丼」がおすすめです。

忘れてはいけないのがスイーツ。中津では、城下町で受け継がれてきた伝統の銘菓が多いのも見逃せません。珍しいものでは、今から約200年前、中津の蘭方医がつくった薬膳菓子である「けんちん」が有名。半透明の羊羹（ようかん）のようなけんちんは、高級な吉野葛に黒キクラゲや栗を入れてつくられてあり、程よい甘さと素材の食感を楽しめる上品なお菓子です。

もともと長崎から伝わった南蛮菓子に発想を得てつくられましたが、今では中津でしか味わえない郷土菓子になっています。和洋専門店「殿畑双葉堂」では、2日間の手間暇をかけてけんちんをつくっているのだとか。さらに同店の看板菓子「ビスマン」も、地元民にはおなじみの菓子です。

ビスマンは65年ほど前、当時珍しかったビスケットと饅頭を組み合わせてつくったもので、製法を変えずに今に受け継がれています。しっとりしたビスケットの皮からは小麦の風味が広がり、中の黄身あんとともにおいしくいただけるのが魅力です。なによりも、発売当初から変わらない「ビスマン」のロゴの文字がかわいい。小さなパッケージの個包装でも販売されているので、お土産にはもちろん旅のお供にもピッタリです。

中津グルメの食べ歩きをするなら、レンタサイクルやレンタカー、公共交通機関を上手に使って巡りましょう。