杖立温泉
ツウな巡り方を現地編集部が徹底ガイド

周囲を取り囲む山々に隠されるようにひっそりとたたずむ杖立温泉は、熊本県と大分県との県境近くに位置する温泉地。温泉街の中央を走る杖立川沿いに立ち並ぶ昔ながらの和室を備えた趣ある旅館やレトロな温泉施設、大型ホテル、ビジネスホテルなど、温泉街の至るところから上る幾筋もの湯けむりなど、ひなびた雰囲気が漂っています。

1800年以上の歴史を誇る杖立温泉は、古くから湯治場として名が知られていましたが、現在の温泉街の原型が形づくられたのは昭和時代のこと。高度経済成長期の温泉ブームなどと相まって、特に賑わっていたそう。

そんな杖立温泉を語る上で欠かせないのは、春の風物詩「鯉のぼり祭り」と地元の生活に溶け込んだ細い路地「背戸屋（せどや）」。春になると、各地の観光地に数多くの鯉のぼりが飾られているのをよく目にしますが、実は「鯉のぼり祭り」の発祥と伝わるのが杖立温泉で、1963年に子供の健康を祈願し、約40匹の鯉のぼりを飾ったのが始まり。例年の4月1日から5月6日にかけて開催される「鯉のぼり祭り」では、約3500匹もの鯉のぼりが杖立川に悠然とたなびいています。

杖立温泉の下流に架けられた屋根付きの「もみじ橋」には、絵馬ならぬ絵鯉を屋根にかけると恋が叶うとの言い伝えもあり、屋根にびっしりと絵鯉が飾られています。杖立温泉を象徴するような鯉の風景と1年中出合えます。

また、温泉街の一歩奥に歩を進めると、まるで別世界に迷いこんだような、階段や建物が所狭しと並ぶ細い路地が張り巡らされています。「背戸屋（せどや）」と呼ばれる人ひとりがやっと通れるほどの狭い路地裏があるのが特徴で、店舗や旅館、民家などが増改築を行った結果、現在のような細い路地が出来上がりました。

迷路のような路地裏には、無添加の竹炭石鹸や独創性豊かな竹細工作品がそろう「ふるや工房」、弘法大師を祀った「薬師堂東林琉璃堂（薬師堂）」や共同浴場の「薬師湯」などの個性的なスポットも点在。ただ通り過ぎるだけではもったいない、地元の人々の生活に根付いた路地裏を散策するのも杖立温泉の魅力のひとつです。温泉街の散策途中で目にする「子育て地蔵」や「恋地蔵」、「健康地蔵」などのお地蔵さん。地元の方や旅人を温かく見守り続けてくれるお地蔵さんにも心が和みます。昭和時代にタイムスリップしたかのような気分を味わいながら、昔日の面影を留めるディープな温泉街をのんびりと散策してみませんか。

日本各地の温泉地で開湯伝説が語り継がれる弘法大師に、「湯に入りて 病なおれば すがりてし 杖立ておいて 帰る諸人」と言わしめた杖立温泉。杖立温泉の歴史は古く、1800年以上前までさかのぼるとされています。長い時間の中で、記紀神話にも登場する神功皇后や江戸時代の肥後藩主、近代の野口雨情など、時代を超えて多くの人に愛された逸話も残ります。

「九州の奥座敷」と称される杖立温泉の湯温は高温の98度ほどで、泉質はナトリウム塩化物泉。疲労回復や神経痛、冷え症、筋肉痛などに効果があるとされています。天然の保湿成分である「メタケイ酸」も多く含んでいることから、肌触りがなめらかで「美肌の湯」としても評判。

杖立温泉と言えば、「蒸し湯」も有名です。「蒸し湯」は、通常のサウナと比べると、湿度が高く、温度が低いため、体への負担が少ないのが特徴で、サウナ効果と温泉効果の両方の良いとこ取りをしたような風呂です。旅館街の中心部に建つ老舗の和風旅館「泉屋」や背戸屋に溶け込むようにたたずむ「旅館白水荘」も満足度が高い「蒸し湯」のひとつ。和風旅館泉屋では、500円の入浴料で、横になるタイプや座って顔を出す箱型タイプなど4種類もの泉屋オリジナルのむし風呂を、旅館白水荘でも500円の入浴料で、蒸し湯を完備した大浴場を気軽に日帰りで利用することもできますので、美肌効果も高い蒸し湯を満喫してみてはいかがですか。

そして杖立温泉の外湯めぐりで外せないのは、昔ながらの趣ある雰囲気が漂う共同風呂。杖立温泉発祥と伝わる杖立川近くの元湯は、神功皇后が応神天皇を生んだ際に産湯として使われた温泉と言われており、半露天風呂のようなこぢんまりとした湯舟は、遊歩道に面していたり、混浴であったりと、開放感たっぷり。入浴するには少し勇気が必要ですが、24時間いつでも入浴することができるので、川のせせらぎに耳を傾けたり、星空を眺めたり。のんびりと堪能してください。

弘法大師ゆかりの薬師堂から少し下った場所にある「薬師湯」は、水色の壁やタイル張りの浴槽が目を引く温泉で、共同湯の中でもノスタルジー感あふれる温泉です。「殿様湯」との愛称でも親しまれる「御前湯」は、かつて肥後藩主が参勤交代の際に立ち寄っていたとされる温泉で、ピンク色のタイル張りの湯舟で温泉に浸かれます。さくら橋近くの「自然湯共同浴場」は、脱衣場と浴場が一体となったシンプルな造りの温泉。普段は鍵がかかっている「流泉湯」にも運が良ければ入浴できます。温泉街周辺は、風呂がついていな家も珍しくなく、銭湯文化が今なお残る地。そのため、個性的な共同湯は、古くから地元の方々に愛され続けており、地元の方にとってなくてはならない温泉でもあります。

また、「杖立温泉観光協会」の近くには、共同湯の足湯「御湯の駅」やもあり、底に敷き詰められた砂や石が足ツボを刺激する歩行湯や珍しい砂むし足湯、指湯などで杖立温泉の良泉を気軽に楽しめます。地元の方から観光客や湯治客まで、幅広い方を癒し続ける杖立温泉の共同湯めぐりをするのも一興です。

4人から5人も一度に入れるほど広々とした貸切家族湯を完備した日帰り温泉の「吉祥の湯」や、家族風呂専門の「観音岩温泉」、旅館やホテルなど、周囲に気を使うことなく、杖立温泉の良泉を味わえる施設も充実しています。

杖立温泉周辺で宿泊するなら、「奥日田温泉　うめひびき」の1泊2食付きのうめひびき基本プラン、「わいた山荘 和風オーベルジュ 山荘わいた」の【冬季平日限定】小国フレンチ（鶏の地獄蒸し付）と貸切風呂をお得に愉しむ♪冬季特別1泊2食付きプラン、「やすらぎの宿 まつや」の【公式HP2大特典付】料理ランクUP！あか牛を堪能！『しゃぶしゃぶ』『すき焼き』からセレクト！季節の旬会席プラン、「源流の宿 帆山亭」の★～帆山亭人気№1♪～★スタンダードプランなどのホームページ限定プランが、おすすめプランになります。

予約をする際には、ホテル名を入力すると、各宿の宿泊プラン一覧やクチコミ、おすすめポイント、部屋のタイプ、部屋食の有無などの詳細情報が表示されますので、宿泊施設を選ぶ際の参考にしてください。

杖立旅館組合から川沿いに進んだ場所には、約30台駐車可能な無料の観光駐車場もありますし、ゴールデンウイークなどの混み合う時期には、臨時の駐車場も用意されますので、車で行く際にも便利です。

例年の8月には、杖立温泉夏祭りが開催。杖立名物ござ走りやそうめん流し、杖立盆踊り、手持ち花火大会など、昼から夜まで魅力的なイベントが催されます。また、杖立温泉周辺の小国郷エリアには、「裏見の滝」としても有名で、CMにも登場したことがあるほど美しい「鍋ヶ滝」、10月中旬から11月中旬に見ごろを迎える樹齢1000年超の「下城の大イチョウ」や田の原川の渓流沿いに建つ黒川温泉の共同浴場「穴湯」など、四季を通じて楽しめる人気スポットが点在しています。

湯治場として栄えた杖立温泉では、温泉を生かした「蒸し料理」も外せません。泉温が約98度と高温なことで知られる杖立温泉には、湯気が立ち上る「蒸し場」が温泉街に点在しています。「蒸し場」とは、温泉の蒸気を生かした蒸し釜が備えられた調理スペースのことで、湯治の炊事場のような雰囲気を漂わせています。温泉街の「蒸し場」の多くは、地元の方のみならず、一般の方でも自由に利用することが可能。野菜や卵などお好みの食材を自分で購入して持ち込むも良し、さつまいもやトウモロコシ、卵など日替わりの食材と網かごがセットなったものを自動販売機で購入するも良し。個数などによっても異なりますが、蒸し卵ですと約15分、さつまいもですと約30分、蒸気で蒸し上げると完成です。「蒸し場」で蒸した食材はヘルシーで、ほくほくとした食材を口に運ぶと、素材が持つ本来のうまみを味わえると評判です。

温泉街のほとんどの旅館にも「蒸し場」が備わっており、旅館の食事や素泊まりの湯治客の食事などで古くから愛される郷土料理です。2ヶ月に1度、日曜日の朝開催の「杖立温泉みちくさ市」で登場する「蒸し場」を利用した料理が並ぶ「杖立ほっこり朝定」もおすすめ。「杖立ほっこり朝定」には、朝風呂券のサービスもありますので、都合が合うときには杖立温泉独自の食と温泉を堪能してみるのも良いかもしれません。

杖立温泉で人気のスイーツ「杖立プリン」も、源泉があったからこそ生まれたグルメです。杖立プリンは、元々杖立温泉に伝わっていた、温泉で蒸した「甘玉子」と呼ばれる甘い茶碗蒸しのようなもてなしのスイーツに端を発するもの。十数件の旅館や菓子店などで、プリンの上にあんこのソースをかけた「Ura」の「あんプリン」や、「米屋別荘」のなめらかな口当たりの「杏仁プリン」、ほうじ茶プリン、ティラミスチーズプリン、黒胡麻プリンなど、店それぞれに趣向を凝らした約30種類のオリジナルのプリンを満喫できます。杖立温泉観光協会には、「杖立プリン」を味わえる旅館やホテル一覧などの杖立プリン店まとめのプリンマップをゲットできますので、食べ歩きにも最適です。

また、6月から12までは、杖立温泉を流れる杖立川での鮎漁が解禁。清流として名高い杖立川でとれた鮎は、臭みがほとんどなく、身が引き締まっていて格別な味だとか。旅館や飲食店などでは、天然の鮎本来の風味を楽しめる塩焼きや内臓を塩漬けにしたうるかなどの「鮎料理」を味わえます。温泉を生かした料理から清流の杖立川が育む鮎料理に至るまで、杖立温泉ならではの絶品グルメも杖立温泉の人気を支えています。