吉野ヶ里遺跡で
邪馬台国ロマンを体感する3つのコツ

ブリタニカ国際大百科事典にも紹介されている吉野ヶ里遺跡は、吉野ヶ里町と神埼市にまたがり、丘陵地帯に広がる大規模なⅤ字型の溝に囲まれた日本最大の環壕集落跡です。佐賀平野東部は段丘が多く発達し、そのいずれにもかつて弥生人が生活していた竪穴住居や物見櫓などから成る環壕集落跡をはじめとする遺跡が多く立地していることが、古くから知られていた地。1986年の発掘調査開始から3年経った1989年に、日本屈指の規模の環壕集落が発見された際には「邪馬台国の出現」と話題になりました。

日本の様子を記した最古の記録、「魏志倭人伝」に出てくる邪馬台国の時代を思い起こさせるもので、国の特別史跡に指定されています。1992年には、国営公園として公園整備することが閣議で決定。更に、周辺の国営公園化も進められ、国営公園と県立公園を持つ国営歴史公園として、平成13年に一部が開園したのを皮切りに、現在では面積約104ヘクタールの敷地が開園しています。

遺跡は、福岡県と佐賀県の県境の丘陵にまたがる脊振山地南麓から平野部へ伸びた帯状の段丘に位置。弥生時代の700年間の移り変わりを知ることができ、長く続いた時代のそれぞれの時期の特徴をよく表す遺構や遺物なども見つかっています。吉野ヶ里遺跡には、日本の古代の歴史をひも解く、貴重な資料や情報が集まっており、当時の社会がどう変化していったのかの情報を元に専門家が研究し、吉野ヶ里集落や建物、人々の様子を推測してきました。

甕棺墓から弥生時代中期から弥生時代後期にかけての絹布片や管玉などが出土。これまでに多数の土器、石器、青銅器、鉄器、木器が出土しており、遺構や出土品は、九州北部をはじめとする日本各地のものだけでなく、中国大陸、朝鮮半島のものとも共通・類似した特徴を持っています。有柄銅剣やガラス製管玉などの出土品は、国の重要文化財に指定。遺構や出土品やそのレプリカが歴史公園内に展示されています。

吉野ヶ里歴史公園は、「弥生人の声が聞こえる」がテーマ。国の特別史跡に指定された吉野ヶ里遺跡の保存に加え、当時の施設の復元や発掘物の展示などを通して弥生時代を体感できる歴史スポットです。およそ50ヘクタールにわたって残る弥生時代の大規模な環壕集落（周囲に堀をめぐらせた集落）跡としても知られた現在では、子どもから大人まで多くの人が訪れています。

公園内は、入口ゾーンと環壕集落ゾーン、古代の原ゾーン、古代の森ゾーンという4つのエリアで構成。JR長崎本線吉野ヶ里公園駅・国道385号線側からの入口で、公園利用の情報が分かる歴史公園センターのある「入口ゾーン」。階層の高い吉野ヶ里の有力者たちが暮らしていたといわれる南内郭や当時のまつりごとに大きく関わる人がいたとされる北内郭、遺跡から発見された貴重な資料が見られる展示室などもある「環壕集落ゾーン」。

「環壕集落ゾーン」の南内郭には、竪穴住居11棟や4棟の物見櫓などが復元されており、物見櫓は南内郭への侵入を監視する役割があったとされています。約20ヘクタールの広さがあり、さまざまなレクリエーションが楽しめる「古代の原ゾーン」などがあります。全長300メートル、約500基の復元された墓が並ぶ甕棺墓列（かめかんぼれつ）のある「古代の森ゾーン」は、さまざまな学習や生活体験などが楽しめるエリアです。

吉野ヶ里歴史公園では、弥生時代のくらしを体験できるさまざまなプログラムが用意されています。環壕集落ゾーンにある弥生くらし館、または南のムラでは毎日開催されており、やわらかい高蝋石（こうろうせき）を使用して作る「勾玉づくり」や、舞い切りという道具で杉の板に摩擦を起こして火をつける「火おこし体験」（雨天強風時は土笛づくり）は当日受付で体験が可能です。そのほか、土・日曜限定で「鏡製作体験」、「親魏倭王印製作体験」なども受けられます。

古代の森ゾーンにある古代植物館でも体験プログラムが実施されており、「組ひもづくり」では色とりどりに染めた麻ひもから2～4色を選び、ひもを結んだ重りを道具に掛けて順番に動かし、ストラップにも使える組ひもが作れます。2週間前までに電話またはFAXで申し込むと、ムラの祭りに欠かせない楽器づくりと「南のムラ唄」を覚えて、棒ささらを作って歌いながら演奏する「楽器製作と演奏」、南のムラ唄に合わせて踊れるよう稽古を受け、実際に祭りの時の化粧をして踊る、「舞いの稽古」などの体験も可能です。

時間はプログラムによって異なり約40分〜2時間、料金は100円～1500円ほど。小さな子どもは大人同伴で体験可能です。体験プログラムのほかにも、時期によって楽しいイベントが随時開催されていますので、公式サイトチェックしてみてください。

南内郭・北内郭において随時、弥生人にふんしたスタッフが、吉野ヶ里遺跡に関するガイドも無料で行われています。また、決まった時間に行う「定時ガイド」もあり、東口から園内（遺跡エリア）をまわるガイドも。毎月第1土曜、第3日曜の月に2回、10時から、13時からの2回に分けてスタートします。

吉野ヶ里の歴史をより楽しく、深く知ることができるのでおすすめです。東口インフォイメーションでは日本語、英語、韓国語、中国語の4言語に対応した無料または有料の音声ガイドを借りることもできます。

事前に公園について知りたい人は、公式サイトから「たびのしおり」をダウンロードできます。吉野ヶ里遺跡の歴史や年表から各場所の紹介などがまとめられていて、大人用と子ども用があるので親子でしおりを持って歴史公園を回るのもおすすめです。

吉野ヶ里歴史公園を単なる歴史遺産を持つ公園と侮ることなかれ。歴史公園内には遺跡のほか、遊具エリアも。古代の原ゾーンの「遊びの原」には物見櫓風の展望台やローラー滑り台、アスレチック、トランポリン、ふわふわドームなど10種類の遊具があります。ビッグボールを満喫できる6ヘクタールほどの芝生広場、ラウンド・ゴルフやディスクゴルフなどを楽しめるスペースも完備。笑顔で遊びに興じる人たちの姿を目にすることも珍しくないとか。遺跡の雰囲気を感じられる無料スポットでも十分に楽しめます。太古のエネルギーに満ちたパワースポットである吉野ヶ里歴史公園は、文化や歴史が息づいたおすすめ観光スポットなのです。

2018年には、親子で参加のキャンプイベント「吉野ヶ里CAMP2018」を開催。キャンプ参加者は、弥生時代の衣服「貫頭衣」を作ったり、集落合戦というチャンバラ合戦を行ったり、火起こし体験をしたりと、弥生人になりきった暮らしを楽しんでいる様子がサイトにも投稿されています。

園内では無料バスが巡回しているので、広い園内を無理なく回ることができます。バスのルートは、環壕入り口、古代植物館、北墳丘墓、北内郭下、西口の5つのルートを循環する「園内循環ルート」、古代博物館と北口の間を往復する「古代博物館～北口ルート」があります。滞在時間や目的に合わせて利用するのがベストです。

公園内東口のメインゲートには、佐賀県産の和牛や野菜などの地元食材を使った料理を味わえる「吉野ヶ里歴史公園レストラン」があります。料理についてくるご飯には古代米のひとつ「赤米」が使用されており、古代の味も楽しめます。店内で持ち帰り用の赤米が販売されているので、土産物にも最適です。

メニューは、佐賀県産和牛ハンバーグ定食（1380円）、佐賀県産和牛コロッケ定食（980円）、有明海産のあさりを使った貝汁定食（950円）などの通常のものに加え、春には春の四季彩釜飯御膳（1200円）、夏にはシシリアンライスセット（1080円）、秋には松茸の釜飯御膳（1480円）など季節限定のメニューが並びます。その時期に合った新鮮な旬の料理を楽しむことができますよ。通常メニューには子ども用のメニューもあるので幼児から大人まで家族での食事が楽しめます。

売店では、歴史公園のマスコットキャラクター「ひみか・やよい」のマグカップやハンカチなどのグッズのほか、佐賀の酒蔵の銘酒や焼酎、有田焼や唐津焼などの陶芸品が揃っています。なかには公園内に復元されている甕棺墓列（かめかんぼれつ）の甕棺を型どった土産物も。デザイン性のあるおしゃれな縄文柄のボックスに入っているので、吉野ヶ里の思い出として一緒に持ち帰ってみてください。

吉野ヶ里歴史公園周辺の注目スポットとして、車で来園する人におすすめは、吉野ヶ里歴史公園から車で12分程の距離にある「道の駅吉野ヶ里さざんか千坊館」。三瀬鶏の串焼きややまめの塩焼き、地元で採れた野菜、脊振山系の天然水を使ったグルメやスイーツなどを味わうことができます。

また、2018年1月に道の駅内にオープンした「フルーツガーデン新SUN」では、新鮮なフルーツのタルトやジュレなどのスイーツが味わえて、若い世代にも人気です。脊振の天然水を使って作ったミックスジュレ（300円）、吉野ヶ里店でしか食べられない新SUNの吉野ヶ里ロール（650円）や地元のお茶「栄西茶」を使ったシュークリーム（150円）などがあり、2階建ての店内からは佐賀平野の展望が楽しめます。

道の駅の前には給水所があり、東脊振トンネルから湧き出るおいしい天然水も無料でくめますよ。裏手にある展望所からの景色も見物で 、佐賀平野、筑後の耳納連山、長崎の雲仙普賢岳までを一望でき、夜には美しい夜景も楽しめます。周辺には国指定天然記念物の千石山サザンカ自生北限地などもあり、11月に訪れると、純白の花が咲き乱れます。

毎年秋に開催されるアジアで最大級の熱気球の祭典「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」も外せないイベントのひとつ。イベントの最寄り駅であるJRバルーンさが駅からJR吉野ヶ里公園駅までは普通電車で約15分の距離ですし、イベント期間中には、吉野ヶ里歴史公園に無料の臨時駐車場が設置（公園東口や西口駐車場は有料）されますので、折角でしたら周辺のホテルに宿泊して、泊り掛けで佐賀観光してみてはいかがですか。