武雄温泉の
ツウな巡り方を現地編集部が徹底ガイド

日本の名湯のひとつにも数えられ、約1300年の古い歴史をもつ「武雄温泉」。入り口に立つ朱塗りの「楼門」は国の重要文化財にも指定されています。明治から大正にかけて、日本の建築界の第一人者として活躍し、東京駅や日本銀行を設計した建築家の辰野金吾氏［1854年～1919年］によって「天平式楼門」と呼ばれる釘を1本も使用しない方法で1915年に建てられました。

楼門2階の天井にある、子（ねずみ）・卯（うさぎ）・午（うま）、酉（とり）はそれぞれ東西南北を表しており、東京駅の南北ドームに同じくレリーフとして描かれている、寅（とら）や申（さる）など8つの干支合わせて十二干支となることが話題にもなったそう。

楼門を入った奥には、同じく国重要文化財に指定されている「武雄温泉 新館」も。この建物も辰野氏によって同じ年に完成されており、2003年3月には新たに復原もされています。どちらも竜宮を連想させるような鮮やかな色彩と形が特徴です。

また、約1300年前に書かれた佐賀の歴史や文物を記した地誌「肥前風土記」の中に記されている「郡の西の方に温泉の出る巌（いわや）あり、・・・」とは武雄温泉を示しているとされており、長い歴史を重ねてきたこの温泉には、神功皇后も入浴したと伝えられています。

1590年代には、「文禄・慶長の役」で豊臣秀吉が朝鮮を訪れる際、多数の兵士たちが現在の佐賀県唐津市にあった名護屋城に集められ、武雄温泉を訪れ、その際に、他の入浴客に迷惑をかけないようにと兵士たちに対して秀吉が示した朱印状「入浴心得」が今も残されていることでも有名。 温泉は、さらっとしたやわらかな湯ざわりが特徴の弱アルカリ単純泉。しっとりと肌になじみ、保湿性にも優れていることから『美人の湯』と呼ばれています。一方、疲労回復効果もあることから、歴史上の人物では宮本武蔵や伊達政宗、シーボルトなどが入浴した記録も残されている、まさに『名湯』です。

温泉のほか、食や焼き物など魅力であふれる武雄の町。春夏秋冬、それぞれの季節によって魅力的な景色を見せてくれる一方、地元に根ざしたさまざまなイベントも多く開かれています。古くからその土地の人だけでなく、偉人たちにも愛されてきた温泉に浸かり、新しい文化とともに今も少しずつ進化している観光地「武雄」を今、旅しませんか。

楼門干支見学会
【料金】大人400円、子ども200円
※文化財保護協力費として（入浴付き）
【営業時間】2017年4月1日（土）～2019年3月31日（日）（毎週火曜日は除く）
【定休日】毎週火曜日
【公式サイト】http://www.takeo-kk.net/news/001350.php

元湯
【入浴時間】6時30分～24時（受付は1時間前まで）
【料金】 大人400円、小人（3才～小学生）200円

鷺乃湯
【入浴時間】6時30分～24時（受付は1時間前まで）
【料金】 大人600円、小人（3才～小学生）300円

蓬莱湯
【入浴時間】6時30分～21時30分（受付は1時間前まで）
【料金】 大人400円、小人（3才～小学生）200円

殿様湯
【入浴時間】10時～23時（受付は1時間前まで）
【料金】 1室1時間3800円　※平日割引料金：3300円

武雄温泉までは車のほか、電車、高速バスなどの公共交通機関でもアクセス可能です。車の場合は無料駐車場が用意されています。また、電車の場合は最寄りの「武雄温泉駅」で下車して徒歩約12分ほどで到着。高速バスの場合も各地から観光地最寄りのバス停まで行くことができます。

武雄温泉には大きく分けて「大衆浴場」と「貸切湯」、周辺の旅館やホテルからでも入ることができます。大衆浴場は、「元湯（もとゆ）」と隣の「蓬莱湯（ほうらいゆ）」、露天風呂とサウナもついた「鷺乃湯（さぎのゆ）」の3つ。地元も方もよく入りにくるという元湯は、明治9年に建てられ、現在使われている温泉施設の建物としては日本最古、高い天井と大きな浴槽が特徴です。44度～45.5度の「あつ湯」と言われるお湯と、42度～43度の「ぬる湯」の浴槽が隣りあわせに並んでおり、自分に合う湯を選んで入れます。

元湯と蓬莱湯の券売機の上では、現在の細かいお湯の温度が確認できるので、入る前にチェックしてみて。武雄温泉の一番奥にあるのは鷺乃湯。武雄温泉の由来のひとつに、けがをした白鷺が傷を癒やしていたころに温泉が湧き出たという説があり、別名「白鷺の湯」とも呼ばれていたそう。レトロな昔ながらの雰囲気が漂う元湯・蓬莱湯と比べ新しい内観と、露天風呂やサウナがあるのが特徴です。営業時間は6時30分～24時で、蓬莱湯のみ、21時30分まで。

貸切湯は、全て大理石のリッチな「殿様の湯（とのさまのゆ）」、4畳半の控え室がついた家族連れにも人気な「家老の湯（かろうのゆ）」、比較的新しく、夜にはライトアップした中庭も望める「天平の湯（てんぴょうのゆ）」、「桜華の湯（はなのゆ）」、「芭蕉の湯（ばしょうのゆ）」があります。営業時間は10時～23時まで。旅の予定や目的、誰と行くかに合わせて訪れる場所を決めたり、余裕があれば湯巡りをするのもいいですよね。

武雄温泉は日帰りでも楽しむことができますが、ゆっくり楽しみたい人は宿泊がおすすめ。周辺には旅館やホテルはもちろんのこと、大浴場「鷺乃湯」に隣接する素泊まりの宿「楼門亭」も。大人は4500円から、小人は3000円から宿泊できるので、宿を利用してじっくりと温泉を楽しんでみて。

また、武雄温泉では、魅力的なイベントも常時行われています。注目したいのは「たけおで朝活」。パワースポットコースや御船山コースなど、4つのコースから選べる「朝散歩」や、楼門の天井に彫られた四干支の絵と東京駅にレリーフとして描かれている残りの八干支の絵との関係をガイドさんが解説してくれる「楼門四干支見学会」など、早朝からさまざまな催しが行われています。毎週日曜には、採れたての野菜やパン、漬物などが並ぶ「武雄温泉楼門朝市」も開かれ、地元の人や観光客でにぎわっています。

武雄温泉のお土産は、楼門から徒歩約15分ほどの距離にある「武雄温泉物産館」で。武雄を中心とした西九州のみやげに加え、物産館オリジナルの手作りスイーツや地元の新鮮野菜が購入できる直売所、地元野菜を使ったセルフサービスの食事処などがあり、お土産探しには充分。観光案内所も併設されているので、行きたいスポットや食事処、宿などの場所をここで訪ねてるのも◎。地元の方ならではの情報が聞けるかも。

早朝のイベントから、温泉にお土産。武雄温泉の観光を満喫したら、おいしい食事処にも。

最寄り駅の武雄温泉近くにあるのは「創作家庭料理 月の音」。日替わりランチやミニコースで肉、魚、野菜を使ったさまざまな創作料理が味わえるとあって、ランチタイムはお客さんでいっぱいになることも。外観は小料理屋らしい和の雰囲気で、店内も広すぎず落ち着く空間。旅先で少し息をつけるような落ち着く場所を見つけると、なじみのない土地でいつの間にか抱えていた緊張の糸がふっと和らぎますよ。

ランチでお腹がいっぱいになったら、周辺の観光スポットにも。武雄温泉駅から車で約5分ほどの場所にあるのは、春は桜やツツジ、秋は紅葉に彩られた庭園の景色などが人気の「御船山楽園」。2010年に佐賀県初の国登録記念物にも認定された池泉回遊式庭園です。広さは東京ドーム約10個分の15万坪ほどあり、数十万本の植物が植えられています。季節ごとに庭園は景色を一変し、桜のピンクや色鮮やかなツツジの色に染まる春、水々しく緑が光る新緑の夏、モミジが色づく紅葉の秋、雪化粧の椿が見られる冬など、一年を通してたくさんの人を魅了しています。

夜はライトアップで日中とはまた違った神秘的な景色を見せてくれるほか、最近ではテクノロジーとデザインやアートを掛け合わせたイベントやスポットを多く手がける「チームラボ」とコラボレーション。鮮やかな映像と歴史ある庭園が組み合わさった新しい演出にも注目が集まっています。また、近くにある「武雄神社」や、数々の名庭園を手がけた中根金作氏の傑作とも呼ばれる「慧洲園（けいしゅうえん）」でも随時、夜のライトアップが行われています。

武雄市内で最も古い神社である「武雄神社」。境内の奥には樹齢3000年を超えるという大楠が。神々しくそびえ立つその姿に圧倒されるとともに、何千年と武雄の地で生き延びてきた神秘を感じます。慧洲園は御船山楽園と同じく池泉回遊式庭園で、約3000坪の敷地内に、この庭園を作った中根氏の「岩こそ庭なり」という言葉の通り、岩を多く用いた庭が広がっています。園内にはお茶屋などもあり、抹茶や菓子などを味わいながらゆっくりと休憩することもできます。ライトアップ時だけでなく、日中にもぜひ訪れてみて。

観光地を回って、少し休憩したくなったらぜひ「喫茶 古都」へ。武雄温泉の近くに佇む、旅館「京都屋」の館内にある、アンティークな喫茶店です。店内は大正ロマンあふれる家具や雑貨でコーディネートされており、ランプシェードからテーブル、ポットに至るまで、こだわりが光る魅力的な空間。ダッチコーヒーと呼ばれる冷水から約8時間かけて抽出した水出しコーヒーが味わえるので、訪れた際にはぜひ。コーヒー豆本来の味と香りを楽しんでみて。また、ここでしか食べることのできないオリジナルの「温泉ヨーグルト」も。大正時代にタイムスリップしたような店内で、おいしいメニューを味わいながらその世界観にどっぷりと浸ってください。

近年では、図書館など新しい文化施設ができたり、企業とコラボレーションしてのライトアップが始まったりと、古い歴史と新しい試みや文化が交差する武雄市。そんなこの町の魅力は観光地や店に加え、小さいものから大きいものまで1年を通して各地で行われているイベント。各季節に行われているものを全て合わせると、その数は100を超え、いつ訪れても観光と合わせて楽しむことができます。季節ごとに開催されているイベントや、注目のスポットを少しだけピックアップ。

春から梅雨の初めにてかけて楽しめるのは、紫陽花（あじさい）。武雄温泉保養村のせせらぎプロムナードと呼ばれる散歩道では、上品な紫陽花の花々を鑑賞できます。この時期は夜、自生する1万匹ものホタルが見られる「ほたる祭り」も開かれます。日中から夜まで、その時期にした見ることのできない自然の景色を楽しんでみてください。

夏には、武雄の陶芸作家による新作器、ビアカップや焼酎カップでビールを味わえる「武雄温泉ハイツのビアホール」も。作家さんのこだわりの器に入れて飲むビールはまた格別。

武雄のお祭りといえば、市内の窯元が灯ろうを展示する「あかり展」。通常夏に行われるこの催しは、近年冬に特別企画として行われていることも。イベントをさらに盛り上げようと、その年によって新しい試みや内容で開催されているので、ぜひ武雄温泉を訪れる前に期間限定のイベントもチェックしてみて。旅がより充実したものになるはずです。