福岡発!「ローカル旅行」の楽しみ方から予約まで
更新:2018年11月9日
福岡の定番観光のひとつに挙げられる櫛田神社。参拝後すぐに博多グルメへと向かうのはちょっと待って。櫛田神社内には魅力あるスポットがたくさんあります。まずは体験、そして観光でフカボリするのがおすすめです。
[たびらいセレクション]
櫛田神社は、福岡市博多区の市街地、国体道路の北側で博多川端商店街に隣接する旅行者に人気の観光スポット。キャナルシティ博多や博多座へは徒歩圏内で約5分。祭神は、大幡主大神(おおはたぬしのかみ)、天照皇大神(あまてらすおおみかみ)、素戔嗚命(すさのおのみこと)の三柱。正殿に大幡主神、左殿に天照大神、右殿の祇園宮に素戔嗚命(祇園大神)を祭っています。 櫛田神社の創建は757年で、天照皇大神の奉祀については非常に古いためはっきりとはしていませんが、右殿の祇園社は941年。櫛田大神の名でも呼ばれる大幡主神の奉祀は757年の孝謙天皇の託宣によって、素盞嗚神については藤原純友追討のため、鎮西に下向した小野好古(おののよしふる)の勧請とされています。中世には、鎮西探題の北条氏や大友氏、大内氏など、博多を治めた歴代の武家が崇敬し、社殿の造営などが行われました。 県指定有形文化財の梵鐘(ぼんしょう)は、1573年から1592年(天正年間)のもの。当時治めていた大友氏の家臣、綾部氏が奉納したとの銘文が刻まれています。 江戸時代には、氏子から一層の信仰を受けていた様子がうかがえます。楼門前に建つ石鳥居は、1675年に博多津氏子中が建造。境内に現存する石造物の中では最古です。回廊周囲に置かれた石灯籠の多くは、1600年代後半に町人により寄進されたとの銘が残っています。 櫛田神社は、博多の町人たちとの深い関係性や、文化、生活を知ることのできる貴重な資料を所蔵。「博多津要録」(県指定有形文化財)がそれで、博多年行司として町組織の運営に当たった原田安信(はらだやすのぶ)が編纂した記録。1666年から1759年までの間に博多で起こった事件がまとめられています。1818年~1830年(文政年間)には、町人の協力により日本初の図書館「楠田文庫」を開設。国学関係の典籍が収蔵されました。 境内の博多べいは、石や瓦が埋め込まれた土塀で、太閤町割りによって復興された博多の街には多くあったもの。博多三商傑の一人であった島井宗室の屋敷跡から移築したものです。 また、楠田会館の脇に並ぶ石碑は、町人有志の寄付で飢饉や米価高騰に備えて積み立てられた博多備荒米(びこうまい)に関するものです。 境内にある博多歴史館には、博多祇園山笠にまつわる資料や櫛田神社の社宝を展示しています。博多歴史館に所蔵されている山笠図を代々描いた三苫家の山笠図屏風や、現代の博多人形師が再現した古代山笠は必見。豊臣秀吉が出した朱印状(福岡市指定文化財)や室町時代の松囃子(まつばやし)の古面などが残っています。 博多天神を中心とする福岡観光に訪れたなら、櫛田神社にもぜひ立ち寄ってみてください。 ■博多歴史館 【問い合わせ(TEL)】092-291-2951 【開館時間】10時~17時 【休館日】月曜(月曜が休日の場合翌日) 【料金】大人 300円
櫛田神社の楼門には、金色の文字で書かれた扁額(へんがく)が目を引きます。「稜威(みいつ)」という文字は、「天子・天皇の御威光」という意味。近くには、大きなちょうちん。楼門をくぐる際に見上げてほしいのが、干支恵方盤です。内側に方位、外側にカラフルな干支を配置。毎年大みそかに、新しく迎える年の十二支に矢印を回転させて恵方(縁起の良い方角)を示します。 本殿横には「不老長寿の水」。井戸からくみ上げられた水は、鶴のくちばしを通って出てきます。3羽の鶴に囲まれているため「霊泉鶴の井戸」とも。立札には「この霊泉をいただくには、一口目には自分の不老長寿を、二口目には家族の不老長寿を、三口目には親類縁者の不老長寿を、心で念じながら三口でお飲みください」との記載があります。 現在は飲み水には適さないため、触れる程度にとどめましょう。この水、塩辛いことで有名。櫛田神社が海に面していた時代の名残りです。 櫛田神社の力石は、江戸時代のもので有形民俗文化財。もともと力石は力試しをする石。由来は、神霊がよりついた石を持ち上げることで豊凶・天候・武運等の神意をうかがう石占の信仰にさかのぼると言われています。また、米1俵(60キロ)を担ぎ上げる力が成人の資格と考えられ、証明するために用いられた力石も。 太宰府天満宮に奉納されている力石(県指定文化財)のひとつには、博多の力士の存在や、鰯町(那珂川河口東岸に沿った船問屋)の若者たちの相撲好きが垣間見えます。 博多には相撲を職業とする人たちがおり、雨ごいの相撲や他国への勧進相撲などの興行を開催。博多津要録には、往時の様子が記されています。 2000年には、遷宮を記念して有名力士の力石が奉納され、文化財の力石とともに展示。力石には、貴乃花や若乃花、白鵬、朝青龍などの名が刻まれています。
櫛田の銀杏は樹齢1000年と言われ、長寿延命のシンボルの御神木。博多祝い唄には「さても見事な櫛田の銀杏、枝も栄ゆりゃ葉も繁る」と唄われています。樹齢の古さ、樹木規模の大きさからも福岡市内の中では群を抜く、風格のある名木。県指定天然記念物で、幹の直径は約190センチ。1918年の保存記念碑には樹齢千年以上との記載も。樹齢が古いため、幹の下部は腐食が進み、空桐化しています。 過去の台風の被害を受けて太枝が折損。事前に枝を詰めたため、本来の姿からはかなり変貌しています。1987年の台風12号では、北東側の太枝3本が損傷しました。樹皮は厚く、太枝の分岐部では樹皮にマサキ、ネズミモチ、キズタなどの低木とツタが鳥の運搬によって種子が落ち成長。これらも老木の風格を強調しています。 イチョウは化石時代に栄えた原始的な樹種。1料1属1種の裸子植物で、雌雄異株(しゆういしゅ)ですが、櫛田の銀杏は雌性で、付近の雄木から花粉を受けて秋にたくさんの果実をつけます。 境内には、樹齢400年以上といわれる雌雄のイチョウの木「夫婦(めおと)銀杏」も。毎年10月の神事「ぎなん落とし」では、夫婦銀杏の実を神職やみこが収穫し、神前に供えます。 夫婦銀杏は高さ22メートル、幹回り6メートル。雌雄の木が根本から寄り添うように立つ姿から名付けられています。夫婦円満や子孫繁栄などの御利益があり、収穫した実は皮をむいて水で浄化。乾燥したものが正月や春の「ぎなん祭」で参拝者に配られます。
2017年にユネスコ無形文化遺産に登録された博多っ子に欠かせない夏のイベント山笠「博多祇園山笠」。櫛田神社の右殿に祭られている素盞鳴尊(すさのおのみこと)の祭りです。平安時代に始まった京都・八坂神社の祇園御霊会(ごりょうえ)が起源で、旧暦6月15日、山鉾(やまほこ)を立てて町中を巡行したのが全国に普及。博多祇園山笠もそのひとつとされており、日本を代表する祇園祭のひとつです。 伝承では、承天寺の開山・聖一国師(しょういちこくし)が、1243年、はやり病の病魔退散を祈願。施餓鬼(せがき)棚に乗って博多の町中を舁(か)き回り、浄水をまいたことがはじまり。 博多祇園山笠の本番まで1ヶ月に迫った6月1日に、博多埠頭に鎮座する櫛田神社浜宮で、山笠の舁(か)き棒を洗い清める「棒洗い」と呼ばれる行事が執り行われます。祇園山笠行事は7月1日から15日まで。1日は山笠に神を招き入れる「ご神(しん)入れ」。9日は各流(ながれ)の舁(か)き手が箱崎浜へ向かい、沈む夕日に柏手を打って安全を祈念。帰りには筥崎宮と櫛田神社を参拝し、箱崎浜では汐井(真砂)を升(ます)やテボ(竹ヒゴで編んだかご)に入れて持ち帰るため「お汐井とり」と呼ばれます。 10日には、舁き山笠が町中に姿を現し、それぞれの流区域内を舁き回る「流舁き」に。12日にリハーサルとなる「追い山ならし」が行われます。福岡市の要請で始まり、著名人が台上がりを務める「集団山見せ」は13日。14日の流舁きを経て、15日にフィナーレの「追い山笠」を迎えます。 櫛田神社に年中展示(6月除く)されているものは、舁き山笠とは別の飾り山笠。期間中は、市内中心部で見ることができ、大きなものでは13メートル近い高さになります。山笠の土台は、舁き山と同じように、釘を1本も使わず、麻縄と部材のみで組み上げ。 熟練の人形師によって細部まで丁寧に作り込まれた飾りは芸術品。見事な出来ばえで見る人を魅了します。飾りの標題は、逸話や歴史上の人物、縁起の良いとされる題材などが中心。 櫛田神社以外の飾り山笠では、近年、見送り(裏)に人気アニメやドラマ、西洋の童話などを題材にした標題を取り入れることも。2017年にはスター・ウォーズが再現されました。 櫛田神社では期間中だけでなく、年間を通して常設展示(6月除く)。毎年7月1日に作り替えられています。 博多座や博多リバレインとキャナルシティ博多とを繋ぐ川端商店街の「甘味処川端ぜんざい広場」も飾り山笠を見学できるスポットのひとつ。金・土・日・祝日および祭りなどのイベント時のみ営業ですので、運が良ければ、唯一の走る「飾り山笠」を眺めながら名物の川端ぜんざいをいただく、ここならではの特別な時間を過ごせます。
立春の前日に櫛田神社で行われるのが、「節分大祭」。「節分厄除大祭」には、南神門、北神門、楼門と3つの門に、それぞれ表情が異なる名物の「大お多福面」が登場します。大お多福面は楼門前に1月下旬から2月上旬まで展示。参拝者は面の口の中をくぐって神社境内へ。大きく開いた口をくぐると、商売繁盛や家内安全などの御利益があるとされる冬の風物詩です。 面は高さ5,3メートル、幅5メートルあり、木枠に和紙を貼り付けて制作。地域の氏子たちでつくる櫛田神社氏子青年会のメンバーらが作業にあたり、頭、目鼻、口に3分割された部位を「お多福」の顔に組み上げています。 櫛田神社では毎年2月3日に豆まきがあり、博多座の「二月花形歌舞伎」に出演する歌舞伎役者らが登場。当日は6種類が授与されており、熊手の「福寄せ」や、ひしゃくの「福寿久井(すくい)」が人気です。博多おくんちは、10月下旬に開催される大神宮の祭り。牛車に引かれる神輿(みこし)行列、ブラスバンド、稚児行列などが彩りを添えた豪華絢爛(けんらん)な祭事です。神輿は飾り山笠の見送りの前に展示されています。 櫛田神社から徒歩1分の場所にある「博多町家ふるさと館」。古い伝統文化がいきづく博多の暮らしを紹介する施設です。3棟で構成されており、櫛田神社側が土産処、真ん中が町家棟、大博通り側が展示棟。土産処では、博多の伝統工芸品や地元の銘菓、山笠グッズや書籍、博多町家ふるさと館の関連商品などを販売しています。町家棟は、明治中期に博多織元の住居兼工場として建てられた町家(旧三浦家住宅)を移築復元したもので福岡市の指定文化財。 展示棟では、1階が博多の歴史や文化に関する展示を、2階では商家に伝わる民具を紹介。伝統工芸品の実演も行われています。 町家棟の1階では、毎日(11時~13時、15時~17時)、博多織の実演を開催。リズミカルな職人の手と足の動きとともに織られる様子が見学できます。また、職人の指導のもと、手織りの体験も可能。 春月庵では、中世博多のうどんを再現しています。創業1890年の博多では最も古い製麺工場「平和フーズ工業」が営むうどん店。うどん麺は、小麦胚芽、ふすまが入っていて、食物繊維が豊富です。色は小麦色で、一般的なうどん麺よりも小麦の香りが特徴的。ふわっとした柔らかな麺ですが、モチモチとした食感が楽しめます。 うどんだけでなく、そばも人気。そのわけは、毎日、近隣工場で作られており、親戚のそば粉屋さんが特別にひいているため。荒びきで香りが強く、細めの喉ごしがくせになります。
旅行の際に、地元ならではのグルメを楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。博多観光に訪れる観光客のお目当てもやはり、ラーメンや博多発祥と伝わるうどん、水炊きなど、おいしい食べ物。博多周辺は、個性的なうどんメニューがそろう「博多あかちょこべ」や博多ラーメンが大人気の「博多だるま総本店」などをはじめとする博多グルメの人気店が集まるエリアです。 博多天神や川端商店街へのアクセスも良い櫛田神社は、博多ならではのグルメめぐりを満喫するのに最適なスポットです。
【施設情報】櫛田神社 【住所】福岡県福岡市博多区上川端町1−41 【問い合わせ(TEL)】092-291-2951(櫛田神社)
車(レンタカー)で
JR博多駅から県道43号線(大博通り)、国道202号線(国体道路)で約10分。 西鉄福岡天神駅から国道202号線(国体道路)で約5分。
電車で
福岡市地下鉄空港線祇園駅2番出口から徒歩約5分。 福岡市地下鉄空港線中洲川端駅5番出口から徒歩約6分。 福岡市地下鉄箱崎線呉服町駅1番出口から徒歩約8分。
駐車場はありますか?
参拝は30分無料、祈願は1時間無料になる駐車場を完備。そのほか周辺にコインパーキング(有料)があります。
博多祇園山笠のおすすめの日はいつ?
クライマックスの7月15日の早朝は活気と熱気が最高潮に達します。朝が早いため、昼間に見たい人は、12日の追山ならしや13日の集団山見せがおすすめ。集団山見せは著名人が参加しており、天神地区でも観覧できます。
櫛田神社を案内してもらえるガイドはありますか?
毎日14時に、「博多町家ふるさと館」からスタートする、 ボランティアガイドがあります。約1時間の定時ツアーで、参加費無料で予約も不要。福岡市から認定を受けた「福岡市観光案内ボランティア」が、博多の総鎮守・櫛田神社をはじめ、 巨大な木造座像を誇る東長寺など周辺の寺社を案内しています。参加希望者は、博多町家ふるさと館の展示棟受付へ。 ※博多町家ふるさと館問い合わせ(電話:092-281-7761)
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