大分発!「ローカル旅行」の楽しみ方から予約まで
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達人指南
現地の達人が旅行の楽しみ方を伝える観光コラムです。人気の観光地から知る人ぞ知る穴場まで、達人だからこそ分かる一歩踏み込んだ“通”な情報を紹介しています。
九州のほぼ中央にあたる竹田市(たけたし)は、大分県では南西部に位置し、北のくじゅう連山と西の阿蘇山、南の祖母山系などの山々に囲まれている。豊富な湧水や温泉にも恵まれているほか、城下町の魅力に注目したアーティストたちが、この地での活動を始めている。そんな竹田の“まち歩き”にスポットを当てて紹介しよう。
奥豊後の政治・経済・文化の中心地として栄えた竹田の城下町には、江戸時代から変わらない景観と、岡城址や旧竹田荘をはじめとする歴史的な建造物が残る。竹田市にはここ数年、市や市民、移住者などの働きかけにより、古民家を再生させたギャラリーやレトロな雰囲気の店が多く見られるようになった。多くの“つくり手”たちが活動しているこの小さな町では、歴史や工芸文化、現代アートなど、さまざまな表現が混じり合い、新たな文化を創り出している。そんな竹田の“まち歩き”の魅力を、達人に教えてもらった。取材/おおいたインフォメーションハウス、2016年 10月九州ローカル案内役が厳選おすすめホテル特集
[たびらいセレクション]
(くどう たかひろ) 工藤 隆浩さん
城下町を散策する前に、最初に訪れる場所として達人・工藤さんがおすすめするのが、ここ「岡城址(おかじょうし)」だ。瀧廉太郎が作曲した歌曲『荒城の月』のモチーフとなったことで知られる岡城は、明治の廃城の際に建物こそなくなってしまったが、苔に覆われた石垣の独特な趣を味わえるスポットとして人気がある。山城であるため、必然的に城址にたどりつくまでは上りが続く。兵庫県の竹田城が「虎臥城(とらふすじょう、こがじょう)」と呼ばれたのに対し、ここは「臥牛城(がぎゅうじょう)」と呼ばれるが、これは岡城がかつて巨大な牛が寝ているように見えたことから付けられた名だという。「岡城に登って、木を切って整備した石垣をぜひ見てもらいたい」と工藤さんが言うように、岡城の最大の見どころは、何といっても石垣。特に三の丸の石垣は、角度のある石垣の斜面をびっしりと苔が覆う姿が特徴となっている。“地獄谷”と呼ばれる険しい谷に面した石垣を眺めていると、工作機械の存在しない時代に、どうやってこの石を積んだのだろうと考えさせられる。『荒城の月』のイメージを狙うなら、冬枯れの時期か夏草の茂った時期がしっくりくるが、紅葉の名所でもあるなど、季節を問わずに風情を味わうことができる。ちなみに工藤さんの一押しは、「桜もいいですが、秋の紅葉の季節が個人的におすすめ」だという。そして、もう一つ注目してほしいのが“音”だ。岡城址では耳を澄ませると、風に吹かれた松の葉音を聴くことができる。この音は「岡城跡の松籟(しょうらい)」として、環境省の「日本の音風景100選」にも選定されている。現地を訪れたら、まずは岡城を訪れて、この音に耳を澄ませてみてほしい。
周囲を切り立った断崖のような山に囲まれた竹田の市街地へは、トンネルを通らなくてはたどり着くことができない。この小さな城下町の景観は、市と市民によって長年にわたって守られてきたものだと工藤さんは言う。工藤さんによれば、竹田の街の魅力は「その小ささ」であり、「歩いて回れるからこそ、じっくりと街を散策できる」という。時間の流れがある時点で止まってしまったかのような、現代とは全く違った雰囲気が町全体に漂っている。中でも工藤さんが好きな景色は、八幡川通りから見る商店「塩屋荒物店」。ここに限らずとも、竹田の城下町をのんびり歩いていると、街の至る所で絵になる風景を見つけることができる。古い風情のある街並みの中で、自分のお気に入りのフォトスポットを見つけてみよう。
近年、竹田市には、“つくる”ことを仕事とするアーティストや作家が多く移り住んできている。「昔から町の人たちが大切にしてきた町並みや町の雰囲気を気に入って、それに共感した人たちが、この町を使った表現を始めてくれているんです」と工藤さんは説明する。それを代表するのが、竹田市を拠点に活動する美術ユニット「オレクトロニカ」の二人だ。彼らが開いているギャラリースペース「傾く家」は、築70年の民家を改装した多目的スペース。“その傾きさえおもしろい”という意図から解体をまぬがれ、再生された家そのものが、一つの作品となっている。傾く家は土・日曜を中心にオープンし、“生活に取り入れたいもの”としてオレクトロニカが選んだ作品や生活道具、古道具が常時展示されている。また、企画展やライブなども行われるほか、併設のカフェでは自家焙煎珈琲(350円)や週替わりのケーキ(250円)を味わうこともできる。他にもさまざまなアーティストたちが、それぞれの表現を通じて、この地からアートを発信している。「“歴史”となると伝えることは難しいけれど、アートは万国共通」と語る工藤さん。これまでとは違う竹田の新たな魅力として、現地からの発信が始まっているのだ。
11月中旬の3日間に竹田市で行われる「竹楽(ちくらく)」は、毎年10万人以上が訪れる竹田市の秋の風物詩だ。他の“竹あかり”に比べるとシンプルで、竹のデザインが統一されているほか、明かりの色も火の本来の素朴な光で統一されている。この素朴なデザインの素材が、江戸の雰囲気を残す竹田の城下町に溶け込み、昼間とは全く異なる幻想的な光景となる。特に竹楽のメイン会場となる武家屋敷通り「歴史の道」の周辺は、岡藩7万石の城下町としての雰囲気を色濃く残すエリア。自然で素朴な竹灯籠の明かりとの相性が素晴らしい。また、この竹楽の目的の一つとして、里山保全運動との関わりが挙げられる。豊富な竹資源が自生する竹田市では、近年の竹の需要の急激な縮小にともない、竹林の荒廃が問題になっているという。そんな里山の環境保全や放置林の活用という観点からも、竹楽は役立っているのだ。期間中の街角には、屋台が並ぶだけではなく、昔から芸術活動が盛んだった竹田ならではのイベントも開催される。アーティストの作品が並ぶギャラリーや、『荒城の月』を演奏する音楽イベントなど、町の至るところで催しが行われる。まさに町ぐるみで、幻想的な世界を作り上げている。
竹田の城下町を訪れたら、散策がてらこの地ならではの土産物を見つけよう。工藤さんがおすすめするスポットは、竹田市に在住する作家たちの商品を購入できるショップ「michi(ミチ)」だ。同店を営むオーナーの宮﨑透さんは、「竹田の魅力を、作品を売ることで伝えたい」と語る。店名には“「道」すがら、「未知」なる出逢いを、心「満ち」るひとときを”との想いが込められている。この店では、竹田に住むアーティストの手による竹工芸や藍染め、陶芸などの作品に加えて、竹田の民芸品である「姫だるま」のグッズなどを扱っている。営業するのは土・日曜の休日限定で、竹田の町とアート作家とをつなぐ拠点となっている。michiは竹田市の移住や定住をサポートする施設「農村回帰 城下町交流館『集(しゅう)』」のすぐそばにある。観光を飛び越えて移住に興味がある人は、あわせて訪れてみてもいいだろう。観光を楽しむならホテル選びも重要!ホテル・宿を見つけて、旅行に行こう!
竹田のアート作家たちの作品に触れられるスポット
城下町に溶け込みながらも、イタリアンやフレンチなどが楽しめるおしゃれな店をピックアップ。竹田を愛するオーナーたちのこだわりを堪能しよう。
竹田の町にゆかりのある人物の旧宅や場所を紹介。時間があればぜひ訪れてほしいスポットだ。
・大分市内から国道442号経由で約1時間15分・大分空港から一般道利用で約2時間・大分空港から高速利用(日出インターチェンジ~大分光吉インターチェンジ)で約1時間45分・博多から大分自動車道利用で約3時間
JR博多駅から新幹線、JR特急ソニック、JR豊肥本線を利用して約3時間30分
・大分市内から約1時間15分・大分空港から約2時間
・豊後竹田駅から車で約5分
丘の上の広瀬神社から、竹田の城下町を望む
竹田の城下町を見下ろす高台に立つ広瀬神社からの眺め。新しい文化を創り出そうとしている竹田の城下町だが、街並みに“近代的なもの”は見当たらず、まっすぐに延びる道とレトロな景観が広がっている。平成30年(2018)には九州横断道路が開通予定で、熊本へのアクセスもしやすくなるが、「“せっかくだから竹田の街に寄ってみよう”と思ってもらえるように、発信していきたい」と工藤さん。地元の人と移住者が力を合わせて、新たな魅力を生み出している。
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