ばんえい十勝 世界唯一のばんえい競馬を楽しむ
パワフル! ダイナミック! 世界でたったひとつ、帯広市でしか見ることのできないひき馬レースが、ばんえい競馬だ。ほぼ通年で開催されている観戦のポイントから多彩な施設ガイドまで、楽しみ方をご紹介。
![坂道を越える瞬間がエキサイティング! ばんえいメイン]()
「競馬」と聞けば、すらりとした馬やスピード感のあるレースを想像するだろう。ところが、ばんえい競馬は、違う。馬の体重は約1トン、サラブレッドの約2倍という巨体! 鉄ソリを曳き、坂の障害を越える馬たちは、騎手や観客と一体となってゴールを目指す。
馬のパワーと持久力、騎手のテクニックを競うこの勝負は、開拓の歴史と深く結びつく。今や世界で唯一、北海道遺産の帯広名物として人気で、平成26年度(2014)には約28万人が訪れた。
帯広競馬場の敷地内には、地元野菜やグルメを味わったり、動物と触れ合ったりと楽しい施設が充実。親子やカップルでも楽しめるばんえい競馬の魅力について、広報マネージャーの徳田奈穂子さんに聞いた。
取材・文/新目 七恵 投稿/平成27年(2015)12月
世界で唯一! ばんえい競馬は農耕馬の力比べに由来
![ばんえい競馬のルーツ、農耕馬2頭が丸太を曳き合う「ケツ引き」 ばんえいルーツ]()
なぜ、わざわざ重い鉄ソリを曳くの? 平地の競馬に慣れた方なら、きっと不思議に思うだろう。徳田さんは「交通や運搬、農作業など暮らしに馬が欠かせなかった開拓時代、馬の価値を競った“力比べ”がルーツなのです」と教えてくれた。厳しい開拓暮らしの中、明治の終わりごろに始まった農耕馬の祭典などに由来するという。
ばんえい競馬は、もとは昭和24年(1949)に北海道が主催し、4年後からは旭川、帯広、北見、岩見沢で運営していた。ところが、平成19年(2007)、帯広以外の3市が撤退。廃止の危機を迎えるも、帯広市が単独開催することに。そうして今や世界で唯一、北海道の馬文化を伝えるものとして「北海道遺産」にも認定された。
そんな歴史や成り立ちに興味があれば、帯広競馬場入口にある「馬の資料館」がおすすめだ。馬と人の深い結びつきを知れば、ばんえい競馬がもっと愛おしくなることだろう。
でかい! 力強い! ばんえい馬のココに注目
![間近で見ると、ばんえい馬の巨大さに圧倒されること間違いなし でかいばん馬]()
「そもそも、ばんえい馬って何かご存じですか?」と徳田さん。てっきり「北海道和種(どさんこ)」かと思ったら、違うのだそう。実は、フランスやベルギーなど外国産馬が主なルーツ。より強く、逞しくなり、今につながるという。ルーツのひとつにフランス北西部に由来する「ペルシュロン種」があるが、地元のフランス人が視察に訪れ、そのつながりに感動していったというエピソードも残っている。
ばんえい馬の大きさや美しさを楽しむなら、レース発走の約25分前ごろ、パドックに行ってみよう。「たてがみから蹄までピカピカになり、最高の状態で登場する馬たちの様子を間近で見ることができます」と徳田さん。馬具やたてがみを編み込む飾りなど、馬ごとのスタイルにもご注目を。頭をグンと上げ、目を輝かせている馬は好調の証し。レース予想の参考にもしてほしい。
「第2障害」をどう越える!? その瞬間を見逃すな!
![ゲートの開く音や金具の音など、生の観戦は臨場感がいっぱい 第2障害]()
さぁ、いよいよレース観戦だ。コースは直線200メートル。約2分間のレース中、最も盛り上がるのは、高さ1.6メートルに盛られた坂、「第2障害」を馬たちが乗り越える瞬間だ。
初めてなら、この坂の手前で馬が一旦停止するので戸惑ってしまうかもしれない。けれど、ここが、レース観戦の醍醐味。騎手の腕の見せどころでもあり、馬の呼吸とほかの馬の動きを見ながら、どう仕掛けるか。人馬一体となって駆け抜ける、まさにスリル満点の駆け引きが行われる。
「5番、5番!」「○○○(馬の名前)、いけー!」など、スタンドの興奮も最高潮に。徳田さんは「初心者の方も恥ずかしがらずに声を出してください」と言う。「騎手の心得として、レース中、お客様に反応しないことになっていますが、実際はよく聞こえているそうです」。声援が大きければ、その分、馬や騎手に気持ちは伝わる。ゴールの瞬間まで思いっきり応援し、高揚感や一体感を味わってほしい。
もっと楽しむなら、バックヤードツアーや朝の調教見学ツアーへ
![レースの舞台裏を見学できる人気のバックヤードツアー ばんえいバックヤード]()
時間に余裕があれば、バックヤードツアーに参加しよう。これは、普段入れないレースのウラ側を案内してもらうもの。出走前の馬が集まる装鞍所や厩舎地区を巡った後は、見晴らし抜群の旧実況室でレースを楽しめる。「装鞍所では、闘志マンマンの馬もいれば、退屈そうな馬も(笑)。リラックスムードの厩舎も含め、馬たちの意外な素顔が覗けます」と徳田さん。参加はレース開催日の14時までに1階総合案内所で直接受け付け(受付時間は開催時間によって変更するため、要問い合わせ)。約45分間で、大人500円のお土産付き。小学生以下は無料だ。
また、冬に人気なのが、朝の調教見学ツアーだ。日の出で周囲がオレンジ色に染まる中、馬体の汗が蒸気となって立ち上る幻想的な風景を作り出す様子を見ることができる。12月~翌3月は毎週日曜日、春~秋は重賞レース日に予定。一人2000円。カメラマンのリピーターが多く、冬場は申し込みが殺到するので、予約はお早目に(帯広競馬場/0155-34-0825)。
まるでテーマパーク! 馬の資料館やふれあい動物園…施設ガイド
![親子で楽しめる「ふれあい動物園」 ふれあい動物園]()
ばんえい競馬の楽しみは、レースのほかにもいろいろ。歴史に興味のある大人なら、競馬場入口の「馬の資料館」がおすすめ。農具や写真などを数多く展示するほか、競馬の成り立ちなどを分かりやすく紹介。十勝の観光パンフレットも充実しており、観光情報の拠点としても活用できる。
また、子ども連れに人気なのが、スタンド裏手の「ふれあい動物園」だ。ばんえい十勝の人気者・リッキー号&ミルキー号、キング号と触れ合えるほか、可愛いポニーやウサギたちも。平成27年(2015)にリニューアルしたばかりで、「休憩所も設けているので、ゆったり過ごせます」と徳田さん。
競馬場スタンドの手前には、年中無休の観光交流拠点「とかちむら」がある。レストランやカフェ、産直市場があり、食の宝庫・十勝の美味しさを実感できるグルメスポットだ。見て、触れて、食べて。旅のひとときを、のんびり過ごしてほしい。
帯広競馬場への交通アクセス
帯広駅からタクシーで約8分、バスで約10分の場所にある帯広競馬場。車の場合、JR帯広駅から白樺通を西へ真っ直ぐ進めば、右手に見えてくる。看板が目印になる上、スタンドや厩舎地区は広く囲みがあるので、迷うことはないはずだ。
帯広競馬場の施設情報
【住所】
北海道帯広市西13条南9丁目
【営業時間】
毎週土・日・月のばんえい十勝のレース開催に合わせて営業。
※レース開催時刻は要問い合わせ
一方、とかちむらは年中無休(営業時間は定休日は店舗で異なる)
【駐車場】
約1100台分あり(無料)
【入場料金】
100円
【問い合わせ(電話番号)】
0155-34-0825
【公式サイト】
http://www.banei-keiba.or.jp/
車(レンタカー)で
帯広空港から約40分。道東自動車道「音更帯広IC」、もしくは帯広広尾自動車道「芽室帯広IC」から約15分。JR帯広駅南口からタクシーの場合、約7分(690円程度)。
帯広空港の格安レンタカーを予約できます!
バスで
JR帯広駅バスターミナル12番乗り場から約10分、「競馬場前」で下車。とかち帯広空港・空港ビル玄関前から約50分、競馬場前で下車。