スペクタクルな仕掛け、演技に圧巻

兄源頼朝に追われた義経の逃避行とともに、平知盛、権太、佐藤忠信(源九郎狐)を中心に展開する歴史物の三大名作『義経千本桜』。『川連法眼館』は、その四段目にあたる物語です。義経の側室である静御前を警護する佐藤忠信。この忠信に扮した子狐が、義経の鼓につきまといます。じつはこの鼓、父狐と母狐の皮を張ったもので、義経に「親孝行できぬまま、鼓になってしまった両親のそばにいたい、持ち主である義経のために何かしたい」と申し出ます。親子の情愛においては狐も人間も変わりはないことを伝える一番泣かせるシーンです。感動した義経は鼓を子狐に下賜。その恩返しにと義経の敵方を妖術で退治します。欄干抜けや宙乗りを見せ場とする澤瀉屋(おもだかや)型のほかに、ケレンを控え、庭の木にかけ登る型で知られる音羽屋型があります。