祐徳稲荷神社
ご利益スポットの巡り方を徹底調査

創建は1687年。肥前鹿島藩主鍋島直朝公の夫人花山院萬子媛（まんこひめ）が、朝廷の勅願所であった京都の花山院家、花山院邸内の稲荷大神の御分霊を勧請しました。鹿島藩主鍋島直をはじめとする鍋島家の信仰があつかったため、社殿造営の費用は藩費でまかなわれたそう。祭神は、倉稲魂大神（うがのみたまのおおかみ）、大宮売大神（おおみやのめのおおかみ）、猿田彦大神（さるたひこのおおかみ）で、衣食住の守護神として信仰されています。宮司や権宮司は、鍋島直朝の子孫で、いまも神社を守っています。

祐徳稲荷は、伏見稲荷大社、笠間稲荷神社とともに、日本三大稲荷のひとつで、ブリタニカ国際大百科事典小項目事典にも収録されています。商売繁盛、家運繁栄、大漁満足、交通安全等種々の祈願が絶えず、年間300万人もの参拝者久我訪れる佐賀鹿島で人気の観光スポット。本殿、神楽殿、樓門などは、総漆塗極彩色で鎮西日光とも呼ばれて、高い評価を得ています。

境内は、錦波（きんぱ）川を境として西側に本殿、神楽殿、楼門を配置。楼門から北側には参集殿と日本庭園。庭園では、四季を通してさまざまな草花を眺めることができます。春は桜、夏は菖蒲、秋は紅葉、冬は蝋梅（ろうばい）と、どの季節も魅力があります。

本殿は現在3代目。1949年5月15日深夜に社務所付近から出火し、渡り廊下を伝って山腹の本殿まで延焼。2代目本殿は、総漆塗りで金箔（きんぱく）の天井や壁画が施されて、きらびやかな様子から「鎮西日光」の異名をとりました。

京都・清水寺のような懸造り（舞台造り）は、再建後のもの。設計は、明治神宮再建や伊勢神宮式年遷宮造営を請け負った神社建築の第一人者の角南（すみな）隆氏。防火を意識して鉄筋コンクリートを採用しています。

楼門は、日光東照宮の陽明（ようめい）門（国宝）を模した造りで、日光東照宮の修復職人たちの手により完成。楼門に掲げられている額は、能書家でも知られた秩父宮妃（ちちぶのみやひ）の直筆です。二体の随神は佐賀県伝統工芸の有田焼で作陶。紺色と朱色の衣装で岩尾對山窯（いわおたいざんがま）の作。陶器の随神はとても珍しいものです。

楼門の両脇には、人間国宝の13代柿右衛門作の菊の大磁板と、人間国宝の15代今右衛門作の牡丹の大磁板がはめ込まれています。

奥の院手前の「奥の院命婦（みょうぶ）社」は稲荷大神の使いである白狐を「命婦大神」として祭っています。命婦社の社殿は、1804年から1933年までの本殿を移築したもの。彫刻が素晴らしく江戸時代の神社建築の特徴を残しており、県重要文化財の指定。奥の院までには、赤い鳥居や祠（ほこら）が石壁山の山中に連なり、パワースポットともいえる雰囲気です。

参拝時間は24時間いつでも参拝でき、3000台収容できる無料駐車場を完備。国内、海外問わず、旅行者を意識してwi-fiの無料スポットを境内に2カ所設置しています。

アクセスについては、公共機関を利用する場合は、JR長崎本線肥前鹿島駅が最寄り駅。駅前の鹿島バスセンターから「祐徳神社前」行きの祐徳バスに乗車するとスムーズで、約10分の距離にあります。

バスセンターの１階には、鹿島市観光協会の観光案内所もありますので、バスの時間に余裕があれば、鹿島市内の観光情報を調べたり、パンフレットをもらったりするのもおすすめです。

2016年に本殿北側に完成した地上と本殿をつなぐエレベーター。周囲の景色に溶け込むように鏡のような反射率の高いガラス張り。中からは外の景色を楽しみながら乗り降りできます。

車いす利用者や高齢者の移動がスムーズで、開設2カ月で3000人が利用。人気の秘密は、入場券の代わりに渡される「運気上昇お守り」。天然石入りの開運おみくじが入っています。

本殿真下に鎮座する岩崎社は、鳥居の先のハート型の看板や絵馬が目印です。祭神は岩崎大神。縁結びの神様として祭ってあり、女性の参拝者でにぎわいます。鳥居の額縁にはたくさんのハートマークが刻印。これは「猪の目」といい、火事に敏感な猪の目を模したもので「火よけ」を意味しています。

石壁社は、祐徳稲荷を創建した祐徳院（萬子媛）を祭っています。祐徳院は後陽成天皇の曾孫（ひまご）で、左大臣花山院定好の娘。1705年、石壁山山腹のこの場所に寿蔵（生前墓）を築き、断食の行を積みつつ、読経の中で80歳の生涯を全うし入定（にゅうじょう）しました。

水鏡は、祐徳院（萬子媛）が毎朝のぞいて吉凶を占ったとされ、いまもその逸話が残っています。古老の昔話によると、村人が畑で獲れた野菜を届けにくると、祐徳院は「あながたここへ来ることを朝から知っていた。水鏡に、あなたが野菜を持ってくる姿が映っていた」と語ったといいます。

神社の神事で300年以上続く新嘗祭「お火たき」は、毎年12月8日の日没から夜にかけて行われています。お火たきは、秋季大祭の一環で、豊作と諸行繁栄を感謝する神事。境内の木々を積み重ねて青竹で囲んだ山に点火。立ち上がる炎は20メートルほどで、御神火に参拝者からは歓声があがります。火にあたると病が治り、罪やけがれが清められるといわれています。

門前商店街は、祐徳稲荷神社の参集殿の横から400メートルほど軒を連ねています。参道商店街では名物のこい料理や、神社参拝の土産としてユニークな形の「稲荷ようかん」（1本250円／税込）が定番。地場でとれた農産物や海産物を使った飲食店など多彩な店が立ち並び、神社への参拝客や観光客だけではなく地元の人の利用も。

こいはアミノ酸やタウリン、コラーゲンを多く含む美容と健康に良い薬膳魚として昔から重宝されています。門前商店街では「コイの洗い（刺し身）」や「こいこく（みそ汁）」がメニューに並びます。

稲荷ようかんを作るのは、通りにある新油屋。ようかんは1932年に当時の店主が開発したもの。ようかんを直接手で触ることなく食べることができ、当時のアイデア商品。パッケージは打ち上げ花火のようなデザインです。1本から購入できる店が多いため、自宅用にも重宝されています。

名物菓子は、そのほかに祐徳せんべいとお宝まんじゅうも。祐徳せんべいは、1912年創業の井出商店で焼かれているしょうがせんべい。祐徳稲荷神社のお茶菓子として提供もされている名品です。せんべいにまぶしているしょうがは、風味を損なわないように、機械を使わず丁寧に手ですりおろしたもの。口に入れると、優しいしょうがの風味が広がります。

お宝まんじゅうは、口どけのよい餡（あん）を、しっとりとした黒糖生地で包んだまんじゅうです。

2017年12月に誕生したのが新名物の「稲荷御膳」。神社創建330周年に合わせて鹿島市産業支援課が立案。商店街と協力しメニュー化されました。1080円の均一価格で、各店舗が「いなりずし」とおかず、小鉢二つ、吸い物で計5品を提供しています。稲荷御膳はランチ限定です。

割烹料理店「家督屋」は、明海海の食材がぎっしり詰まった御膳。有明海産のりや神社をイメージし、赤みがかった雑穀米を使ったいなりずし、クチゾコの唐揚げ、干したワラスボの南蛮漬けに加え、ほっこりするだご汁、自家製のごま豆腐を添えています。ごま豆腐はなめらかな舌ざわりが特徴的です。

そのほかの提供店の料理は、立花屋がクチゾコ唐揚げ、赤貝の煮つけ、寿し政はコハダの小鉢、かにまたは肉料理、若松屋はわさび風味いなり、カレイの唐揚げ、三都屋は五目ずしいなり、有明海ウニあえ。ワラスボは、有明海の珍味として親しまれ、鹿島の郷土料理となっています。

商店街の軒先には休憩スペースとしてイスやベンチを用意。雑貨や骨董をあつかう店も多いので、掘り出し物を狙った散策にもおすすめ。

3月下旬から5種類の桜が次々と咲き、一目5万本といわれるつつじが東山を彩ります。桜の時期には商店街が「大お花見会場」に変身。100台を超えるレトロカーが参道を埋め尽くす「なつかしCARにばる」が開催されています。

鹿島市は、寺社や歴史スポット、公園、温泉などの観光資源に恵まれており、スポット周辺には、お土産に相応しい有明海の魚介を生かした特産品がそろう「道の駅　鹿島」、十数軒の酒蔵が軒を連ねる「肥前浜宿」、年中無料で酒造見学や試飲ができる「観光酒蔵肥前屋」、臥竜城跡に作られた「臥竜ヶ岡公園」、日本三大美肌の湯としても名高い嬉野温泉など、参拝後にぜひ立ち寄りたい観光名所や施設も点在しています。