九重“夢”大吊橋
日本一高い吊り橋を現地編集部が徹底ガイド

大分県を代表するおすすめの観光スポットのひとつとして、多くの記事に取り上げられる九重“夢”大吊橋へは、格安ツアーなどでも気軽に行くことができます。歩道専用として日本一の高さを誇る九重“夢”大吊橋は、鳴子川渓谷に架けられた観光用の橋で、2006年に完成。長さ390メートル、高さ173メートルの吊り橋。

2004年5月より本体の着工に入り、2年半の工事期間を経て、2006年10月30日に落成式、同日正午から開業しました。総事業費は周辺整備費などを含めて20億円。国・県の補助金はなく、町の観光振興計画の一環として建設されました。

橋の高さは173メートル。九重“夢”大吊橋の要所には、その、大きさをほこるように、ピラミッド（約146メートル）やゴジラ（100メートル）、自由の女神（約93メートル）、ヤフオクドーム（約84メートル）などとの比較が見られます。

橋を吊っているメインワイヤーは、直径53ミリのワイヤーが7本束ねられています。荷重は大人（65キロ）が一度に約1800人乗っても大丈夫。風速65メートル、震度7までの地震にも耐えられる設計。

開業後は予想を上回る来場者数を記録するほど、多くの人でにぎわっています。オープンした翌年（2007年）に100万人を達成。その後、順調に入場者を増やし、開業から3781日目の2017年3月１日に1000万人を超えました。2006年の完成から12年を経た今もなお人気が衰えることはなく、2018年の11月には、入場者数1100万人達成しています。

九重“夢”大吊橋（ここのえ“ゆめ”おおつりはし）という名称は、一般応募により5890点の中から命名。眼下には、鳴子（なるこ）川渓谷の原生林が広がり、季節ごとに移ろう自然の姿を楽しめます。橋の中程まで進むと、日本の滝百選に選ばれた「 震動の滝（しんどうのたき）」の勇壮な姿が観賞可能。

落差83メートルの雄滝と、落差93メートルの雌滝からなり、水量の多い時期には振動を感じるほど。視線を遠くに向ければくじゅう連山も望め、360度を大自然に囲まれた「天空の散歩道」は、写真の撮影スポットも多く、シャッターポイントが無数にある撮影スポットです。

滝の勢いが周囲の山々を震動させるかのように流れ落ちることから、震動の滝という名がつけられています。震動の滝には、竜神伝説が残っています。その昔、滝には竜神が住んでいて、年々神通力が衰えてきた竜神は、不老長寿の薬として、若い女を食らうことに。釣りにことよせて、北方集落のある里人を招きよせ、「お前の娘を差し出せ。さもないとお前を食べる」と迫ります。里人は恐ろしさのあまり、娘をささげる約束をして逃げかえりました。

しかし、約束を果たさずにいると、竜神は怒り、神通力で集落の底を抜いて水を干上がらせます。田畑の作物は枯れ、井戸水もなくなり、集落は大干ばつに。竜神は最後の力を振り絞って断崖をよじ登り、集落に火を吹き始めました。このとき、娘の恋人は一計を案じ、集落総出で懸命にわびて、不老長寿の薬として餅をささげて竜神の怒りを鎮めます。

このときから、天災や大火のたびに集落では餅を滝つぼにささげて、竜神の機嫌をうかがう風習が習わしとなりました。年老いた竜神に水を元に戻す力はなく、集落の難儀をみかねて、日田代官、塩谷大四朗によって、1832年千町無田（せんちょうむた）から水路が設けられ、昔のように稲を作ることができるようになりました。水路記念碑は北方集落の白鳥神社境内に現存。

竜神が岩や木をかきむしってはい登った跡が白鳥神社のそばに残り、「竜神崩え」「白崩え」と呼ばれ、いまも集落の人からは恐れられています。毎年7月第1日曜の滝開きでは、竜神餅が地元の人たちのほか、 九重“夢”大吊橋の来場者にも。

毎年秋には、「 秋だよ！九重“夢”大吊橋紅葉フェスタ」を開催。会場では多彩なステージイベントのほか、景品付きの「じゃんけん大会」など誰でも参加できるゲームや「餅まき」など企画。恒例の人気イベント「バーガー大食い大会」や、マルシェコーナーでは、豊後牛炭火焼きコーナーもあります。

渡りきった先には北方ゲートがあり、一度外に出ることは可能。すぐ近くには展望広場があり、展望所は九重“夢”大吊橋の全景を見渡せる展望スポットになっています。展望台は渓谷側に突き出るようになっており、紅葉の時期は入場（100円）の価値アリで、人気の写真撮影のスポットでもあります。展望台の位置は、橋よりも高くなっているため、渡っている人たちがとても小さく見えるほど。九酔渓側の景色まで遠望できるため、色づいているころにタイミングを合わせて訪れてみてください。

北方ゲートから歩いて10分ほどのところには、白鳥神社があります。神功皇后三韓征伐で軍功を挙げた浅井藤彦が、玖珠速見両郡の領地をたまわった後、欽明天皇の時代に近江国浅井郡から一族の産土神「白鳥大明神」をこの地に祀（まつ）って尊崇したことが始まり。

白鳥神社の祭神は、日本武尊（やまとたけるのみこと）と、品陀和氣命（ほむだわきのみこと）。神宮皇后の三韓征伐に軍功のあった浅井藤彦（近江国浅井郡）はその功績により、玖珠速見両郡の領地をたまわり、宇佐神宮の神職に。のちに、玖珠郡田野に館を構え、欽明天皇が治めた時代（541～571）には、近江圀浅井郡から一族の産土神である白鳥大明神を勧請し、代々の氏神としました。

用明天皇の治世下（580～587）では、17代浅井長治のときに朝日長者の称号を受け、一族はますます繁栄。白鳥大明神の御恵に感謝するとともに、宇佐八幡大神も合祀し、白鳥神社として末永く祀ってきました。人々は、朝日長者の業績をたたえ、境内に夫妻を祀る祠を建て、白鳥神社と合わせて尊崇しています。

四季折々の自然を望める九重“夢”大吊橋ですが、中でもおすすめの季節は、夏と秋の紅葉シーズンです。チケットを手に橋を進めば、目の前には大パノラマのくじゅう連山をはじめとする緑の絶景が広がっています。

九重“夢”大吊橋の中央には、グレーチングと呼ばれる格子状の金属板になっており、橋の下に広がる風景を眺めながらの空中散歩を満喫できるスリル満点の歩行者専用橋。橋の至るところから目にする観光名所に心が躍るスリルスポットでもあります。

土産物を買うなら観光施設の 天空館がおすすめ。JA九重町飯田が運営している物産直売所で、地元で採れた農産物などが並びます。特に、地元産のしいたけは箱売りされており、特産品土産にぴったり。生産者直出しの採れたて新鮮野菜は、標高1000メートルの高地で育まれた高原野菜。夏季でも冷涼な気候と昼夜の温度差などの影響で、野菜本来の甘味や柔らかさが増してくるのが特徴。

土産菓子も充実しており、九重“夢”大吊橋をパッケージに用いたクッキー、ブルーベリーケーキ、ブルーベリージャムや辛党に喜ばれる大分県の地酒も。見て回るだけでも楽しめます。

お腹を満たすには2号館へ。九重町の豊かな自然で育った牛や豚、豊かな土壌で育った野菜など、素材認定基準をクリアしたものだけで作られる九重“夢”バーガーが自慢。姉妹都市である佐世保市の佐世保バーガーを研究し「九重町のおいしい食材をリーズナブルに。そして多くの人に食べてほしい！」という熱い思いから誕生しました。

天空館のお1号館と2号館で人気の“夢”バーガーは、豊後牛を惜しみなく使った260ｇのドリームバーガー（800円税込）をはじめ、豊後牛と特製ソースが人気の「モモガー」（550円税込）、夢ポークとゆずマヨの「豚ガー」（550円税込）、猪肉と味噌ソースがコラボした「シシガー」（550円税込）、鹿肉としょうがじょうゆのハーモニーが絶妙な「鹿ガー」（550円税込）がそろっています。

食後のデザートに、種類が豊富なソフトクリームも人気。ミルクソフト（320円税込）のほか、抹茶ミルク（320円税込）、ショコラミックス（320円税込）、季節限定のラ・フランス（320円税込）やブレンダーソフト（320円税込）、ショコラサンデー（420円税込）、プリンソフト（同）、ブルーベリーサンデー（450円税込）も。

橋を渡りながらの食べ歩きはできませんが、テイクアウトのB級グルメも充実。豊後牛串焼（600円税込）、焼とうもろこし（370円税込）、から揚げ（330円税込）、椎茸の串揚（280円税込）、たこ焼き（300円税込）、豚まん（160円税込）、酒まんじゅう（130円税込）、いきなり団子（130税込）、牛コロッケ（160円税込）、あげパン（きな粉）（180円税込）などなど。

店内のテーブル席とカウンター席でゆっくり食べられますが、天気の良い日などは店頭のテラス席に。高原の涼風を感じながら橋を眺めながら食べると格別です。

周辺には、玖珠川流域の両岸約2キロにわたり断崖絶壁が直立にそそり立つ「 九酔渓」。ヘアピンカーブの連続する渓谷は、別名「十三曲がり」と呼ばれる新緑と紅葉の名所。高低差は約200メートルのV字谷。モミやツガ、カツラなどの原生林は四季折々にさまざまな姿を見せます。紅葉シーズンには多くの観光客が訪れ、渓谷を見下ろす峠の展望台からは趣のある眺望。九酔渓温泉もあり、多くの観光客が旅の疲れを癒しに訪れています。

九重エリアは、四季の変化がとても鮮やかで、「春は黒色なり、夏は青色なり、秋は赤色なり、冬は白色なり」と古書「九重山記」では表現。大自然の移ろいを季節ごとに満喫できます。中でも「くじゅう連山」の登山基地として知られる長者原をはじめ、 やまなみハイウェイ沿いには雄大な自然景観が広がります。

6月の夏山シーズンの到来を告げる「 くじゅう山開き」の頃になると、くじゅう連山一帯には天然記念物「ミヤマキリシマ」が咲き誇り、まるでピンクのじゅうたんを敷き詰めたかのよう。ラムサール条約に登録されている「タデ原湿原」、出力日本一の規模を誇る「八丁原地熱発電所」と地面から湯気が立ち上る「小松地獄」なども見どころです。

歩行者専用の九重“夢”大吊橋への交通アクセスには、車、バス、JRとバスの3通りがあります。

車の場合、最寄りのICは大分自動車道の九重ICになり、下車後25分ほど走った場所にあります。博多駅や天神方面から向かう場合には、要予約の高速バス「ゆふいん号」で九重ICへ。コミュニティバスに乗り換え、大吊橋中村口で下車するとスムーズです。中村ゲートには普通車約229台、北方ゲートには普通車約46台と、それぞれの入場ゲート近くに無料の駐車場が完備されています。

別府駅前や由布院駅前バスセンターからは、九州横断バスに乗って、長者原のくじゅう登山口へ向かい、そこからコミュニティバスに乗り換え、大吊橋中村口で下車するのがおすすめです。JRを利用する場合は、久大本線の豊後中村駅で下車後、コミュニティバスで向かうのがおすすめのアクセス方法です。

湯量豊富な大分県らしく、アクセスしやすい場所に、11種類ある温泉のうち10種類の温泉を楽しめる別府温泉や川端康成が愛した炭酸水素塩泉が湧く筌ノ口（うけのくち）温泉、炭酸水素塩泉の温泉成分を源泉掛け流しで堪能できる九酔渓温泉などの温泉が点在していますので、帰り掛けにぜひ立ち寄ってみてください。