天岩戸神社 “神話”の聖地&パワースポットを巡る旅
日本神話の中でも有名な一節・天照大神(アマテラスオオミカミ)の岩戸隠れの神話に登場する洞窟「天岩戸(あまのいわと)」。その天岩戸が地上に実在・現存するとして祭られているのが、宮崎県高千穂町にある「天岩戸神社」です。「天岩戸神社」から、はやり同神話の聖地でありパワースポットしても人気の「天安河原」など高千穂周辺には神秘的かつ幻想的な雰囲気の聖地や観光スポットが点在しています。
![天岩戸神社西本宮の拝殿。この向こう側に「天岩戸」がある 天岩戸神社西本宮の拝殿。この向こう側に「天岩戸」がある]()
「天岩戸(あまのいわと)」は、日本神話の中でも有名な一節・アマテラスオオミカミ(天照大神)の岩戸隠れの神話に登場する洞窟(または、その扉)の名。その天岩戸が地上に実在・現存するとして祭られているのが、宮崎県高千穂町にある「天岩戸神社」だ。
神話の聖地であることに加え、神社の由緒について神職直々の説明を受けられることもあり、神話の町である高千穂でも人気の高い神社となっている。その近くには、はやり同神話の聖地でありパワースポットとして知られる天安河原(あまのやすかわら)、また独自の信仰を集める八大龍王水神などがある。高千穂の神社めぐりでは外すことのできないエリアだ。
取材/鉱脈社『jupia』編集局、平成28年(2016)8月
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太陽神アマテラスオオミカミと、天岩戸をめぐる物語とは?
![岩戸神話が描かれた天岩戸神社の絵馬 岩戸神話が描かれた天岩戸神社の絵馬]()
天岩戸は、日本神話の有名な一場面である“岩戸神話”の舞台と伝えられている。
太陽の神であったアマテラスオオミカミは、弟神・スサノオノミコトの粗暴な振る舞いを避けるように洞窟(天岩戸)の中に隠れこもってしまった。そのため、世界は暗闇となり、困った八百万(やおよろず)の神々たちは天安河原(あまのやすかわら)に集まり策を練った。
知恵の神であるオモイカネの妙案に従って、天岩戸の前で芸能の女神ウズメが乱舞すると、衣をはだけさせて舞うその姿に周りの神々たちが騒ぎ立てた。この騒々しさに、アマテラスオオミカミが何事かと天岩戸を少し開けて外の様子をうかがったところ、剛力の神タヂカラオノミコトが重たい岩の戸を取り払い、太陽神を連れ出すことに成功。こうして世界は光を取り戻し、めでたしめでたしとなる。
天岩戸神社の西本宮は、隣接する岩戸川の対岸の断崖にある洞窟「天岩戸」を御神体として祭る神社。また、この500メートルほど上流の河原には別の洞窟があり、その一帯が、八百万の神々が策を練った「天安河原」だといわれている。岩戸エリアには他にも、神楽尾や天浮橋など、神話ゆかりの神跡が残っている。
西本宮から、身も心も引き締めて“御神域”へ
![天岩戸遥拝所へ入る前におはらいを受ける参拝者たち 天岩戸遥拝所へ入る前におはらいを受ける参拝者たち]()
天岩戸神社「西本宮」の拝殿は、御神体である「天岩戸(あまのいわと)」を拝む位置に建てられている。そのため、拝殿前で通常通りに参拝すれば形式的には天岩戸を拝んだことになるのだが、この位置からだと拝殿に遮られているため、実際に天岩戸を目にすることはできない。
天岩戸神社の西本宮には、一般的な神社であれば欠かせない「本殿」(御神体を納める最も奥の建物)が存在しない。その代わりに、天岩戸を直接拝むための「天岩戸遥拝所(あまのいわとようはいじょ)」(離れたところから天岩戸を拝める場所)が、拝殿の裏に設置されている。天岩戸を直接拝みたい場合は、神職の案内を請い、おはらいを受けた上で、この遥拝所に通してもらう必要があるのだ。
とはいっても、それほど敷居の高い話ではないのでご安心を。お守りなどを販売している社務所の窓口で、案内をお願いしたいと申し出れば大丈夫。混雑時には多少待ったり、他のグループと一緒になったりすることもあるが、一人での参拝でもきちんと神職が対応してくれる。神社で神職の説明を受けられるというだけで、貴重な体験となる。
由緒についての説明を聞き、おはらいを受けたら、指示に従って拝殿横の木戸をくぐり御神域に足を踏み入れる。ここから先は、写真やビデオの撮影は一切禁止となる。ぜひ自分の目で、御神体の様子を確かめてみよう。
天安河原 八百万の神々が集った場所へ
![朝日が差し込んだ天安河原の「仰慕ケ窟」 朝日が差し込んだ天安河原の「仰慕ケ窟」]()
西本宮の裏門から出て、徒歩で岩戸川の畔まで降りると、河原の一角にたどり着ける。ここが、天安河原(あまのやすかわら)だ。その中心部分には、間口30メートル、奥行き25メートルほどの洞窟「仰慕ケ窟(ぎょうぼがいわや)」がある。
仰慕ケ窟は、岩戸神話の中で、困った神々たちが天岩戸に隠れたアマテラスオオミカミへの対応を話し合うために集った地と伝わっている。洞窟の奥には、八百万の神々を祭る社「天安河原宮」がある。
洞窟の中から周辺の河原にかけては、参拝者が積んでいった大小の石積みが所狭しと並んでいる。この独特の雰囲気に飲み込まれそうになるが、これらの石積みは参拝者の願掛けに伴うものだという。また、この一帯はパワースポットとしても有名だ。
「強力すぎるのか、『ここは合わない』と感じる来訪者も少なからずいるようです」と達人・栗原さんは言う。「これは私見ですが、天気の良い日の午前中から昼ごろまでなら東に向いた洞口から日が差し込み、とても明るくて気持ちが良いと感じます。逆に午後の遅い時間、特に天気の悪い日はとても薄暗く、不気味ですらあります」
時間帯や天候によって雰囲気ががらりと変わる場所なので、せっかくなら“気持ちが良い”午前中の来訪をおすすめしたい。また、天安河原までの道のりは、坂道や階段を含む遊歩道で、往復で20~30分ほど。特に復路が登り坂なので、足腰や健康に不安がある場合は慎重に進もう。
東本宮 静かな雰囲気のアマテラスオオミカミのふるさと
![静かなたたずまいの天岩戸神社東本宮 静かなたたずまいの天岩戸神社東本宮]()
天岩戸神社に西本宮があることからわかるように、「東本宮」も存在する。岩戸川の対岸にある東本宮へは、西本宮正面の駐車場から商店街を抜け、橋を渡って徒歩5分ほどでたどり着く。ここからさらに100段余りの石段を登る。
東本宮は、静かなたたずまいの雰囲気の良い社。先に紹介した西本宮は聖地である天岩戸を拝むための社といえるが、東本宮のほうは天岩戸から出たアマテラスオオミカミが最初に鎮座した地とされ、「天照皇大神(あまてらすすめおおみかみ)」として同神自体を祭っている。
いわばアマテラスオオミカミの故郷ともいえる東本宮は、別名を「天岩戸大神宮」という。西本宮の社務所で授与される神札に「天岩戸神社」ではなく「天岩戸大神宮」の銘があることからも、東本宮が格上の扱いであることがわかる。この東本宮こそが、そもそも信仰の中心なのだ。
東本宮の社殿の裏手では、大木の根元に御神水が湧き、さらに森の奥に行くと根元がつながった「七本杉」がある。多くの参拝客でにぎわう西本宮とは一味違う静けさをゆっくりと味わうスポットとしておすすめだ。
天岩戸周辺の神社と、神々を訪ねる
![独自の信仰を集めている「八大龍王水神」 独自の信仰を集めている「八大龍王水神」]()
高千穂町の岩戸地区には天岩戸神社(東本宮・西本宮)のほか、主要な社だけでも石神神社と二ツ嶽神社、鉾神社、落立神社の四つがあり、これらが“天岩戸五社”として総称され、案内地図なども用意されている。
天岩戸五社を車でひと通り参拝して回るだけなら2時間ほどなので、時間に余裕があるなら、山里の風景を味わいながら巡ってみるのがおすすめだ。
また、この周辺でもう一つ忘れてはならない神社に、「八大龍王水神」がある。天岩戸神社から南東に1.5キロほどの「永の内集落」にある水神様だが、駐車場に立つ灯篭に目を向けると、奉献者の中に著名なスポーツ関係者の名があることに気付く。
実はこの八大龍王水神は、いつの頃からか“勝負事の神様”として信仰を集めるようになり、球界などのスポーツ関係者による必勝祈願の名所となっている。現地では神社として祭られている八大龍王だが、元来は仏教系の龍神。参拝に先立っては、備え付けのロウソクを灯し、線香を焚こう。
なお、本堂の裏には古来の拝殿である石社があるが、こちらも撮影禁止のスポット。ぜひ自分の目で確かめてほしい。御神水とされている境内の井戸の水も、あわせて味わってみよう。