
1877年創業の金物店。国の登録有形文化財に認定されている店内に所狭しと並ぶのは、5代目店主の猪原信明さんによって新旧問わず厳選された暮らしの道具たち。そのひとつ1つから、物語と機能美、職人の技が感じ取れます。

「金物屋も日本伝統の職人技も絶滅危惧種なんですよ」と話す店主の猪原さんは、店舗敷地内の湧水でビオトープを作り、水の町島原のまちづくりの先駆けとなった人物。今ある貴重なものを絶やさぬよう後世に伝え、活かし続けようとする猪原さんの理念が、店に独特な空気をもたらしています。

昨年リノベーションした2階ではワークショップや展覧会を行い、文化や芸術の情報を発信。金物店に併設された茶房「速魚川」を繋ぐ中庭の池では、現在ほとんど目にしなくなった日本古来種のニホンイシガメが、のんびりとくつろぐ姿が見られます。
「絶滅危惧種にシンパシーを感じてしまって」と穏やかに笑う猪原さんから伝わるのは、この場所を起点に、本当に価値あるものを周知させようとする意志とポリシー。訪れればきっと必ず特別な学びや出合いがある。そんな博物館のような金物店です。