唐津産の食材にこだわりあり。江戸前の職人仕事に舌鼓を

“中町鮨屋のニューウェーブ”として、達人・多久島さんが絶賛するのが、「笑咲喜(えさき)」。すしの名店がひしめく唐津にあって、平成26年(2014)12月開店のニューフェイスながら、地元の食通たちから熱烈に支持される人気店だ。
品書きは「おまかせにぎり」と「おまかせ肴とにぎり」の二つのみで、席はカウンター4席にテーブル4席のみと、実に潔い。顔を合わせて話しながら一人で握るには、これくらいがちょうどいいのだと店主の江崎順二さんは語る。
食材の仕入れでは、通りを挟んですぐ目の前の産栄市場のほか、数カ所をまわって吟味する。唐津は漁師から市場までの距離が近いため、そもそもの鮮度が抜群な上に、さらに店主の目利きが加わっている。
この日の「おまかせにぎり」は、職人仕事が行き届いた白身にはじまり、青もの、赤身、貝……。おおとりは、小ぶりで濃厚な甘みが広がる唐津の赤ウニ。魚種が多彩で、舌を素通りするネタは一つもない。“おまかせ”のため、ネタの内容は日により異なるが、その時々の店主のおすすめを味わうことができる。
こだわりは魚だけではない。つやのあるシャリは、棚田米で知られる上場産コシヒカリと相知産ヒノヒカリ古米をブレンドしたもの。ガリは七山産のお多福生姜、しょうゆはマツキン、そしてお茶も……と全てが唐津産だ。「せっかく唐津の町で握るのだから」と、江崎さんはさらりとそう言う。