“湘南発祥の地”の証ここにあり!大磯で300年以上続く俳諧道場「鴫立庵」
大磯町|【更新日】2024年11月24日

「湘南」というエリアの定義は人によって異なるかもしれませんが、神奈川県・大磯町には、大磯が“湘南発祥の地”であることを示す史跡があります。
大磯で300年以上も続く俳諧道場「鴫立庵(しぎたつあん)」。ここで“湘南発祥の地”の所以を紐解いていきましょう。
目次
西行法師の名歌が由来
日本三大俳諧道場の一つ
場内には「俳諧道場」の扁額が
あまり聞き馴染みがない方も多いかもしれませんが、「俳諧道場」とは集まった人たちで俳句を作り、師匠を中心に作品を批評し合う「句会」などを行う場所のこと。
大磯駅から徒歩7分の場所にある「鴫立庵」は江戸時代から続く俳諧道場で、京都の落柿舎(らくししゃ)、滋賀の無名庵と並ぶ、日本三大俳諧道場のひとつ。
江戸時代から代々、師匠となる「庵主」がおり、現在も定期的に句会が行われています。
なぜ“湘南発祥の地”なのか
等身大の西行法師の座像
「心なき身にもあはれは知られけり鴫立沢の秋の夕暮」
この歌は、平安時代末期の歌人・西行法師が、大磯周辺の海岸を吟遊して詠んだといわれています。
江戸時代初期、小田原の崇雪(そうせつ)という人物が西行の歌にちなんで鴫立沢の標石を立て、草庵を結んだのが鴫立庵の始まり。
鴫立沢の標石のレプリカ
崇雪は鴫立沢の景色を、中国湘工の南方一帯の“湘南”の美しい景色に重ね、鴫立沢の標石に「著盡湘南清絶地(意味:清らかですがすがしく、このうえもない所、湘南とはなんと素晴らしい所)」と刻みました。これが“湘南”の名称発祥の地として伝えられる所以です。
実際の鴫立沢の標石は、塩害から守るために「大磯町郷土資料館」に移設。鴫立庵にはレプリカが置かれています。
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80以上もの石造物を安置
崇雪が運んできた「五智如来像」
350~400年もここに鎮座する五仏
鴫立庵は歴代庵主の住まいとして使われていた「鴫立庵室」や俳諧道場のほか、80以上もの石造物を見学することができます。
釈迦・阿弥陀・大日・阿閦(あしゅく)・宝生の五仏からなる「五智如来像」は、崇雪が草庵を結ぶ際に運んできたもの。当初はこれを本尊として、西行寺を作るのが目的だったといわれています。
歴代庵主の句碑
新旧さまざまな句碑に歴史を感じます
現在は俳誌「夏潮」を主宰した本井英さんが第二十三世庵主をつとめており、庭内には歴代庵主の句碑が並んでいます。
句碑には自分の作った句のほか、尊敬する俳人の句を刻むことも。それぞれの庵主が鴫立庵の歴史を大切に紡いできたことがうかがえます。
正岡子規に贈られた「一本足蛙」
拡大復元したオブジェ(実際は高さ7cm)
鴫立庵でもう一つ注目すべきは、第十五世庵主・原昔人(はらせきじん)と俳人・正岡子規の関係性です。
大磯出身の原昔人は鋳金(ちゅうきん)の美術家としても知られ、当時親交が深く、晩年病床にいることの多かった正岡子規に自作の蛙の置物を贈りました。
正岡子規が野球をこよなく愛していたことから、野球選手がフライを取るポーズをモチーフにしたとか。正岡子規はこの置物に対して歌も詠んでいます。
鴫立庵ならではのユニークなお土産も
入庵の思い出にお一ついかがでしょうか
鴫立庵では、大磯や鴫立庵にまつわるお土産も販売。
湘南で採れた石に、西行の歌をしたためたペーパーウェイトはちょっとしたお土産に人気。このほかにも絵葉書やボールペン、しおり、ティーバッグなどオリジナリティあふれる品が揃っていますよ。
「鴫立庵」で日本古来の文化に触れる
俳諧道場は身分など関係なく、みな平等に俳句を作り、批評し合うことのできる場所だそうです。
現在、鴫立庵では毎年3月に開催する「西行祭」へ向けて俳句・短歌を募集中。(取材時2024年11月)
句会以外に座禅や生花教室なども行われているので、気になるイベントに参加してみるのもいいかもしれません。
「鴫立庵」へのアクセス
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【住所】 神奈川県中郡大磯町大磯1289
【駐車場】なし
【開庵時間】9:00~16:00
【休庵日】年末年始
【入庵料】(町外)大人:310円 小人:160円
【お問い合わせ(電話番号)】 0463-61-6926
【公式サイト】https://www.nem-shiteikanri.jp/shisetsu/shigitatsuan/index.html
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