総理大臣を癒やした大磯の暮らし。富士と相模湾を望む「旧吉田茂邸」
大磯町|【更新日】2024年11月29日

内閣総理大臣として活躍した吉田茂は、自邸を神奈川県・大磯に構え、激務の中でも土日は必ず大磯で過ごしていたといいます。
大磯の海や暖かさに癒やされながら、戦後の日本の舵取りという大きな使命を担った吉田。火災による焼失から再建され、一般公開されている「旧吉田茂邸」でその暮らしを覗いてみましょう。
目次
「大磯城山公園」内の旧吉田茂邸地区へ
園内は美しく整備されています
旧吉田茂邸へは、大磯駅前からバスと徒歩で11分ほど。「大磯城山公園」内にある「旧吉田茂邸地区」を目指します。
道路を挟んで向かい側には、旧三井財閥本家の別荘地跡を利用した「旧三井別邸地区」があり、広大な敷地の中に大磯の自然と歴史を学べる「大磯町郷土資料館」や茶室、横穴墓、展望台などの施設を有します。
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咲き誇る菊が堂々とした兜門を彩ります
旧吉田茂邸は平成21年3月、火災により焼失してしまいましたが、こちらの「兜門」は建てられた当時の姿を残す貴重な建造物として、国登録有形文化財に登録されています。
取材当時は色とりどりの菊が観覧客を出迎えていました。
広々として心が落ち着く日本庭園
門をくぐると美しい日本庭園が広がり、豊かな木々を背にした旧吉田茂邸が見えてきます。
この日本庭園は吉田が晩年散策していた当時の雰囲気を感じ取ることができるよう、昭和四十年代の景観を復元し、その姿を維持できるよう整備されているそう。
「吉田御殿」と呼ばれた邸宅を探訪
客人と談話する「楓の間」
棚には吉田に関わる人物の写真が飾られています
欧米旅行で宿泊した私宅に感化された吉田茂は、外国貴賓が宿泊できる迎賓館の新築を思い立ち、東京歌舞伎座設計者でもある建築家・吉田五十八に設計を依頼。
京都の宮大工を呼んで完成させた総檜造りの数寄屋風和風建築は「吉田御殿」と呼ばれ、国内外から多くの要人が訪れました。
1階の応接間は「楓の間」と呼ばれ、吉田と客人が談話するためのソファーセットが。昭和54年にはこの部屋で日米首脳会談も行われています。
外交官たちをもてなしたローズルーム
長いダイニングテーブルが壮観!
同じく1階には広々とした食堂、別名「ローズルーム」があります。
豪華なアール・デコ調の装飾に、庭園の緑を望む大きな窓。吉田はここに毎年外交官たちを招待し、もてなしていたとか。
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吉田茂お気に入りの、富士山を望む部屋
賓客を迎える「金の間」
木に金色の装飾が映えています
2階の居間は、部屋の装飾に金を使っていることから「金の間」と呼ばれています。
窓からは箱根山や富士山などの山々と太平洋を一望することができ、吉田は毎日のようにこの部屋から景色を眺めていたそう。
吉田茂が生涯を終えた寝室「銀の間」
天井が銀色の寝室はなかなか珍しいのでは
「金の間」の隣には、寝室として寝起きしていた「銀の間」が。吉田はこの部屋のベッドで89歳の生涯に幕を閉じました。
晩年は「きれいだね、富士は」と呟きながら、この部屋から飽きることなく富士山を眺めていたとか。窓際には執務用の机が置かれ、書斎としても利用していたことが伺えます。
ダイヤルのない黒電話
秘密の黒電話になんだかワクワク
一方、こちらの書斎は限られた身内以外は許可なく立ち入ることのできない、吉田のプライベートなエリア。
掘り炬燵のある四畳半の空間。ガラス棚に置かれたダイヤルのない黒電話は、吉田邸と首相官邸を直接繋いでいたもので、ここでどのような会話が繰り広げられていたのか想像がふくらみます。
平成21年の火災で焼け残ったサンルーム
暖かい陽の光を一身に浴びることができそう
そして「吉田御殿」を象徴する存在がこちらのサンルーム。平成21年の火災で焼け残ったこの建物には吉田の生前、ブーゲンビリアなどの熱帯植物が植えられ、吉田の憩いの場となっていました。
当時はローズルームとつながる廊下があり、寒さが苦手な吉田はここで接客することもあったそうですが、現在は耐震上の問題から外観のみを展示。
外から眺めているだけでも、籐製のソファーでのんびりとくつろぐ吉田の姿が思い浮かびます。
サンフランシスコを向く吉田茂像
天気のいい日は最高の景色!
邸内の見学を終えたら、周辺をゆっくりと散策してみましょう。吉田本人と大久保利通、伊藤博文ら明治維新の元勲を合祀した「七賢堂」や、吉田の好んだ大輪のバラを植栽したバラ園など。
少し坂を登ると、昭和56年に建立された吉田茂の銅像が。顔は講和条約締結の地、サンフランシスコの方向を向いています。
相模湾や西湘バイパスを一望できる見晴らしのいいスポットなので、ぜひ足を伸ばしてみてくださいね。
吉田茂の生活を通して、大磯の魅力を再発見
「吉田御殿」と称された邸宅の豪華さに驚きながらも、寝室や浴室といった当時の生活が垣間見える部屋を見学すると、歴史上の偉人を少し身近に感じることができました。
また、眺望の良さやそこで過ごした吉田のエピソードから、大磯という地の魅力を再発見できるスポット。
土日祝日は大磯ガイド協会による庭園ガイド(一人100円)も行われているので、知識をさらに深めたい方はそちらも合わせてお楽しみください。
「旧吉田茂邸」へのアクセス
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【住所】 神奈川県中郡大磯町西小磯418
【駐車場】あり(大磯城山公園内)
【開館時間】9:00~16:30(入館は16:00まで)
【休館日】月曜日(月曜が祝日にあたる場合は開館し、翌日以降最初の平日が休館)、毎月1日、年末年始(12月29日~1月3日)
【入館料】大人510円 中・高校生210円 小学生以下無料
【お問い合わせ】 0463-61-0355(大磯城山公園)、0463-61-4777(旧吉田茂邸)、0463-61-4700(大磯町郷土資料館)
【公式サイト】https://www.town.oiso.kanagawa.jp/oisomuseum/index.html
※掲載時の情報です。最新の情報は公式サイトをご確認ください。