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熱海の三大別荘「起雲閣」名だたる文豪が愛した歴史ある名邸

熱海市|【更新日】2024年4月10日

熱海の三大別荘「起雲閣」名だたる文豪が愛した歴史ある名邸

熱海の市街地にある、熱海の三大別荘と呼ばれた名邸・起雲閣。

歴史的・文化的遺産と認定された施設で、美しい洋館や緑豊かな庭園を見ることができます。今回は起雲閣の見どころを紹介します。

目次

別荘、旅館、有形文化財と形を変える「起雲閣」

起雲閣

起雲閣の表門。昔は公家の屋敷の門形式に使われたそう。

起雲閣が別荘として建築されたのは1919年。海運王・内田信也氏が「内田別荘」として竣工し、現在もある「麒麟」や「孔雀」はそのときに建てられました。

その後、1925年に鉄道王・根津嘉一郎に売却され「根津熱海別邸」となり、徐々に拡大。根津嘉一郎が手放した後は、1947年に旅館「起雲閣」として開業しました。

1999年に旅館としての役割を終えましたが、現在は文化と観光の拠点として、多くの観光客が訪れる場所となっています。

大正8年に建築された歴史ある名邸「起雲閣」を巡ろう!

「麒麟」で起雲閣の歴史や成り立ちを学ぶ

麒麟

スタッフによる説明は数分おきに行われる。

まず最初に見学できるのが、受付のすぐ目の前にある部屋「麒麟(きりん)」。1919年に建てられた建物で、1階には起雲閣の歴史を展示。スタッフが歴史や見どころについて、説明をしてくれます。

2階にある部屋「大鳳」も、見学することができます。

根津嘉一郎が建てた洋館「玉姫」と「玉溪」

玉姫

天気のいい日は光が差し込んで明るい雰囲気に。

次にあるのが根津嘉一郎が1932年に建てた洋館「玉溪」と「玉姫」。

「玉姫」には折上格天上と呼ばれる、日本の神社仏閣で見られる建築様式が使われています。床にタイルが敷き詰められた美しいサンルームからは、庭をのんびりと眺めることができます。

写真の「玉溪」はヨーロッパの山荘風なつくりになっていて、大きな暖炉は床の間と床の柱に見立てることも。入り口の天井にも茶室のように竹が用いられています。

熱海にまつわる文豪を知れるエリア

起雲閣で名作を生んだ文豪たちを紹介

文豪の展示室

昔の貴重品預かり袋や箸、タオルなども展示されている。

1947年に旅館となった起雲閣は、たくさんの名だたる文豪に利用されました。なかには作家がここで宿泊して執筆し、生まれた名作も。

例えば太宰治の「人間失格」は、昭和23年に今はもうない起雲閣別館「雲井の間」で執筆されました。展示室では起雲閣と作家の関わりなどが、パネルで展示されています。

また起雲閣で行われたのは執筆だけでなく、昭和23年には山本有三、志賀直哉、谷崎潤一郎による文学対談の場にも。部屋には当時の写真をはじめ、昔の貴重な資料も飾られています。

お宮と貫一で有名な「金色夜叉」の作者・尾崎紅葉

尾崎紅葉の部屋

尾崎紅葉の通夜で参列者が寄せ書きした屏風も飾られている。

熱海市内にも、貫一お宮之像があり有名な小説「金色夜叉」。作家の尾崎紅葉は起雲閣との接点はありませんが、小説の中で出てくる貫一がお宮を蹴り飛ばした場所が熱海です。その縁もありこちらの部屋では、尾崎紅葉の資料などを展示しています。

部屋の色は旅館の頃のままで、名前の通りまさに“紅葉色”。こけしになった貫一とお宮も飾られています。

数々の戯曲を翻訳した近代演劇の父・坪内逍遥

坪内逍遥の部屋

坪内逍遥の墓は海蔵寺にあるそう。

シェークスピアなどの戯曲を翻訳した坪内逍遥は別荘を熱海に構え、毎年冬は熱海で過ごしていました。亡くなる前の15年間も熱海で生活した、この地に縁のある人物です。

この部屋でも坪内逍遥が翻訳したシェークスピア全集40巻などを展示しています。

浴室や増築された部屋など旅館時代の名残を見学

螺鈿細工が施された美しい「金剛」

金剛

この部屋の隣にローマ風浴室が併設されている。

文豪に関する展示エリアが終わるとあるのが、根津嘉一郎が建てた洋館「金剛」。迎賓の雰囲気がある豪華な空間で、1929年に完成した後も何度か建て替えが行われました。以前は部屋の入り口の石張り部分が、玄関となっていたそうです。

暖炉の上はスペード、ハート、ダイヤ模様が施された、螺鈿細工になっています。

「雪夫人絵図」の撮影も行われたローマ風浴室

ローマ風浴室

以前は脱衣所や化粧室も設けられていた。

金剛に併設されているローマ風浴室は、1929年に根津嘉一郎によってつくられたもの。その後、改築などが行われ天井や壁などが現在の材料になりましたが、ステンドグラスや湯出口などは当時のままだそうです。

1989年には道路拡幅工事が行われ、90度向きが変わりました。浴槽の周囲には転ばないように木製のタイルが敷かれていて、肌触りの良さも配慮されています。

将棋の名勝負も行われた和館「孔雀」

孔雀

以前は麒麟の隣に建っていた。

和館「孔雀」は1919年に完成した、内田信也の別荘の一部です。以前は別の場所にありましたが、1981年に現在の場所に移築されました。

文豪の中にはここで執筆した人も多いそう。近年では1992年に将棋の第5期竜王戦7番勝敗6局がここで行われ、当時の谷川浩司竜王と挑戦者の羽生善治王座が対戦しました。

見学後は喫茶室やお庭でのんびりした時間を

庭園を眺めながらお茶ができる喫茶「やすらぎ」

やすらぎ

旅館時代のBARの雰囲気が残る趣ある空間。

ぐるっと一周まわって入り口に戻ってくるとあるのが、喫茶室やすらぎ。こちらでは熱海紅茶やお抹茶、起雲閣ブレンドコーヒーなどを味わうことができます。

喫茶室は旅館時代はBARだった場所。趣のある調度品はそのままに、庭園に面した落ち着いた空間で、見学後にゆっくりするにはぴったりです。

名邸にぐるっと囲まれた広々した庭

起雲閣庭

庭園内には川などもあり、ゆっくり散策できる。

庭園からはこれまでに巡った洋館などを、外から見ることができます。熱海の市街地にいるとは思えないほど、緑豊かな空間です。

この庭園をつくったのは茶人としても知られた根津嘉一郎。すべての見学を終えた後に、散策して帰るのがおすすめです。

文豪が愛した名邸で熱海の歴史を感じよう

他ではなかなか見ることのできない、歴史ある美しい建築物が残る起雲閣。

建築美はもちろん、名だたる文豪の痕跡など見どころたくさんです。熱海の市街地にあるので、ぜひ観光の途中に立ち寄ってみてください。

起雲閣へのアクセス

  • 【住所】静岡県熱海市昭和町4-2

    【電話番号】0557-86-3101

    【営業時間】9:00〜17:00(入館は16:30まで)

    【定休日】水曜、12/26〜30 ※水曜日が祝日の場合は開館

    【公式ホームページ】https://kiunkaku.jp/

    ※掲載時の情報です。最新の情報は公式サイトをご確認ください。

ライタープロフィール

酒井明子

酒井明子

出版社などでの勤務を経て、現在はフリーランスの編集・ライターとして活動。旅行、登山、お酒をこよなく愛していて、目標は百名山制覇。沖縄の離島巡りも好きで、お気に入りは波照間島のみんぴかカレー。