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平安時代建立の袋井「冨士浅間宮」。地域で守られ1200年の時を刻む

袋井市|【更新日】2024年1月23日

平安時代建立の袋井「冨士浅間宮」。地域で守られ1200年の時を刻む

静岡県西部、袋井市にある冨士浅間宮は静寂に包まれた古社。

メジャーな観光スポットではない、ローカルな神社だからこそ、地元の方に愛され守られている様子を強く感じる場所です。今回は冨士浅間宮の由緒や、境内の様子をお伝えします。

目次

1,200年前に坂上田村麻呂が建立した古社

御祭神は木花開耶姫命。東国平定の勝利に感謝して建立

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冨士浅間宮の御祭神は木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)、富士山の女神様です。

平安時代、桓武天皇によって征夷大将軍に任じられた坂上田村麻呂は、浅間大神の神力によって東国を平定。その勝利に感謝するため、冨士浅間宮を建立しました。

1572年頃、武田信玄の遠江侵攻を受け、戦乱の中で建物は全て焼失。1590年に地頭の本間重泰が社殿を寄進、1638年に北条氏重が社殿を現在の場所に移したと伝わります。

檜皮葺の本殿は安土桃山時代に再建された建物

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本殿の建物は本間重泰が寄進した当時のまま、安土桃山時代のもの。

檜皮葺の屋根は、建立からおよそ40年おきに葺き替えや修理が行われてきました。

1950年には国の重要文化財に指定され、直近では2018年に屋根の葺き替えが行われています。

東名高速のすぐ隣に広がる静かな異空間

東名高速のアンダーパスを通って駐車場へ

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冨士浅間宮があるのは東名高速道路のすぐ北側。

高速道路をアンダーパスでくぐり、少しくねくねした上り坂を登ると駐車場があります。

駐車場に近い階段から神社に入ることもできますが、せっかくなので正面の鳥居に続く階段まで、歩いて坂を下りましょう。

高速を行き交う車を見ながら階段を登る

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冨士浅間宮の名が刻まれた石柱脇の階段を登ります。

階段の途中で足を止め、左を見下ろすとすぐそこは東名高速。車やトラックがひっきりなしに行き交い、走行音が途絶えることはほとんどありません。

鳥居をくぐって静寂に包まれる

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階段が曲がったところで見上げると、鳥居が見えてきました。ここからは大きく育った檜などの木立に挟まれて階段を登ります。

一礼しながら鳥居をくぐり、ふと車の走行音が聞こえなくなっていることに気付きました。鳥居の外と内ではまるで異空間のよう。距離はそれほど離れていないのに、不思議です。

楼門跡から拝殿、本殿へ

楼門跡に残る礎石に往時の姿を思う

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鳥居の先にある楼門をくぐると、その先にはかつての楼門の礎石が。

1716年の大風で楼門と一の鳥居が倒壊し、1767年に当社を崇敬していた久野彦右衛門宗春が寄付したものとのこと。

奥行三間、間口四間の大きさ、檜の白木作りでとても立派な楼門でしたが、残念ながら1854年、安政の大地震で倒壊してしまい今は礎石だけが残ります。

しばし佇み、当時の楼門とそれをくぐって参拝に訪れる人々を想像してみたくなります。

手水舎で身を清めて進む

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楼門礎石跡からもう少し進むと、手水舎が。訪れた日は1月10日、榊や真新しいしめ縄に初詣の気配が残ります。

手と口を清めて、右へ進みましょう。樹齢を重ねた檜などの木立を見上げながら少し歩いていくと、やがて視界が開けて拝殿が現れます。

拝殿へお参り。今年の平安を祈る

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こちらが拝殿。

木花開耶姫命は日本女性の鑑として敬われてきた女神様。火の中で出産する強さを持ち、火難消除・安産・航海・漁業・農業などの守護神です。

ご挨拶して、この年の平安を祈りました。

ご参拝芳名帳を覗いてみると、ほとんどの方がご近所からいらっしゃっているようです。しみじみと地元で愛されている様子を感じました。

拝殿奥、塀の外から本殿を見上げる

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お参りを終え、塀沿いに奥へ歩いていくと拝殿の後ろに本殿が見えます。塀越しではありますが、美しくカーブする檜皮葺の屋根は全体を見ることができました。

境内を歩いていると皮の下の赤い幹が見えている檜があり、もしかしたら檜皮採取の最中だったのかもしれません。

これからも連綿と続いていく建物の歴史を思い、自分や周りの人の40年後を想像してしまいました。

静けさの中、境内を巡る

本殿裏には8つの小社が並ぶ

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さらに本殿の裏に回り込むと、小社がたくさん並んでいました。

谷田宮社(やだのみやしろ)、秋葉神社、稲荷神社など8つの小社で、国土安泰、五穀豊穣、商売繁盛など、人が望むものは大概ご利益に含まれていそうです。

珍しいところでは、天伯神社の雅日霊女尊(わかひるめのみこと)は織物や繊維、衣料の神様。遠州が綿織物の産地だったことと何か関係があるのでしょうか。

境内摂社、原川浅間宮の御祭神は木花開耶姫の姉

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楼門をくぐって拝殿と反対方向の左に進むと、境内摂社の原川浅間宮があります。

御祭神は磐長姫命(いわながひめのみこと)で、木花開耶姫命のお姉さんにあたる女神様。岩のように頑強、長寿を司るとされています。

地域の人々に大切にされる神社

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拝殿にご挨拶すると、お餅がちょこんと2つお供えされていました。

社殿や鳥居、瑞垣はきれいに手入れされていて、こちらも氏子さん達が大切に管理していることが想像されますね。

このような風景に触れると、自分の普段の不信心を反省してしまいます。

地域に愛され守られる神社、冨士浅間宮の魅力を探しに

冨士浅間宮は東名高速のすぐ隣にありながら、鳥居の内側には静寂に満たされた空間が広がっています。

地域の人々との絆の証を宝探しのように見つけ、人と神社の深い繋がりを感じるのも魅力の一つ。今度の休日、そんな神社巡りに出かけてみませんか?

冨士浅間宮へのアクセス

袋井市周辺の観光エリア

ライタープロフィール

芦馬 実

芦馬 実

静岡県浜松市出身。現在はフリーランスのライターとして静岡県の魅力を発信中。牛乳やヨーグルト、チーズが大好きで、旅先では地元産の乳製品を必ずチェックする。直売所と道の駅にはついつい寄ってしまう。