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潮騒と松の香りに包まれる「沼津御用邸記念公園」で穏やかな時間旅行を

沼津市|【更新日】2023年8月30日

潮騒と松の香りに包まれる「沼津御用邸記念公園」で穏やかな時間旅行を

沼津御用邸記念公園は、駿河湾の美しい眺望や広大な松林での散策、皇族ゆかりの宮廷建築を楽しむことができる場所。

西附属邸には調度品や家具などが数多く残され、当時の皇族方やそこで働く人達の姿が見えてくるようです。

今回は、沼津御用邸記念公園の見どころについてご紹介します。

目次

明治から昭和にかけて激動の時代を見守った御用邸

大正天皇のご静養先として造営された御用邸の一つ

御用邸1-1

沼津御用邸は、明治26年(1893年)、当時皇太子だった大正天皇のご静養先として造営されました。

沼津駅から南に4kmほどの海岸沿いに立地し、敷地面積はおよそ15万㎡。もともと御料林だった広大な松林に囲まれています。

貴重な宮廷建築と国名勝指定を受けた庭園

御用邸1-2

本邸は太平洋戦争の沼津大空襲によって全焼しましたが、西附属邸・東附属邸学問所などは貴重な宮廷建築として往時の姿を残しています。

また、クロマツ林と芝生地の調和、駿河湾や富士山の眺めなどの美しい景観が評価され、平成28年(2016年)に「旧沼津御用邸苑地」として国名勝指定を受けました。

現在は憩いの場や文化・教養活動の拠点

御用邸1-3

御用邸廃止後の昭和45年(1970年)から公園として一般公開され、市民の憩いの場となりました。

明治36年(1903年)に昭和天皇の学問所として造営された東附属邸は、茶道や華道などのお稽古、結婚式や写真撮影に利用可能。

2021年、2023年には将棋の藤井聡太棋士の対局の場となりました。

藤井棋士が対局中に食べた富士山キーマカリーやオムライスは、「大正ロマン食堂・娯洋亭(ごようてい)」でいただくことができます。

昭和天皇の御用邸「西附属邸」

明治38年に造営された歴史的建造物

御用邸2-1

西附属邸は明治38年(1905年)に昭和天皇の御用邸として造営後、大正11年(1922年)に現在の姿に。本邸が沼津大空襲で全焼した後は、こちらが本邸として利用されてきました。

総面積1,270㎡、部屋数26室に及ぶ広い平屋建て。中に入ると、何度も曲がりながら続く廊下と部屋が迷路のよう。

当日はとても暑かったのですが、邸内はあちこちの窓から抜ける風で不思議に涼しく、昔の日本家屋の機能性を感じました。

和洋折衷の生活空間「御座所」

御用邸2-2

邸内には、謁見所など公式な部屋と居住スペースが混在。

こちらは居住スペースの「御座所」。リビングにあたる10畳の部屋で、隣に10畳の御寝室と8畳の御着換所の2間が並びます。

畳に絨毯、ソファの和洋折衷の組み合わせに、懐かしさと居心地の良さを感じてしまうのは、昭和の人間だからでしょうか。

窓の外には庭が広がり、気持ちのいい風が通ります。

「御食堂」にはどんなお料理が並んだのか

御用邸2-3

こちらは12畳半の「御食堂」。どっしりとした丸テーブルと皮張りの椅子に品格を感じます。椅子の背もたれには金箔の御紋が。

なお、椅子の裏には「食椅其一二第一一号内匠寮」と書かれたラベルが貼ってあり、宮中の食堂で使われていた椅子を運んできたと思われるそうです。

このテーブルにはどんなお料理が並んだのでしょうか。

天皇の料理番が活躍した調理室

御用邸2-4

こちらは調理室。流し台やかまど、天窓などが当時のまま残っています。

机の上の木箱には「大膳寮」の文字。宮内省大膳寮は皇族のお食事や、晩餐会などの料理を担当する部署、ドラマ「天皇の料理番」にも登場しました。

広い調理室にたくさんの食材を並べ、忙しく立ち働く料理番の姿が見えてきそうです。

侍従に女官に警衛内舎人、たくさんの人が働いていた

御用邸2-5

御座所の近くには女官室、それ以外にも邸内には侍従室や警衛内舎人(警備係)の部屋など、皇族の身の回りで働くたくさんの人たちの部屋があります。

皇居を離れて御用邸に来ると、お仕事とはいえ働く人たちも少しのんびりできたのかもしれませんね。

波の音を聞きながら松の木陰を散策

大樹がそびえるクロマツ林

御用邸3-1

公園のシンボルは、昔から引き継がれたクロマツ林。空に向かって高く伸び、涼しい木陰を作っています。

林を歩くと清々しい松の香りに包まれ、アロマテラピーを受けているよう。潮騒も聞こえてきます。

樹齢400年の古木「根上がりの松」

御用邸3-2

西附属邸近くの来園口向かいに立つのは、ひときわ大きな「根上がりの松」。樹齢は推定400年です。

地上に現れた根が横に這い、まるで竜のよう。400年の間、ここでどのような光景を見てきたのでしょうか。

独特の編み方で風に強い沼津垣

御用邸3-3

園内のところどころで見かけるのは、編み目が独特な沼津垣。

冬の強い西風や海岸の砂から家や農作物を守るため、江戸時代以前から作られていました。

風に強いだけでなく見た目が美しく、浮世絵にも沼津の風景として描かれています。

厩舎と官舎が喫茶と食堂に

御用邸3-4

厩舎だった建物は「喫茶・主馬(しゅめ)」に。お抹茶や餅入りぜんざいなどを楽しめます。

官舎だった建物は「大正ロマン食堂・娯洋亭」に。前述の藤井棋士が食べたお食事のほか、おやつに食べたオリジナル和菓子「水神餅」もありますよ。

目の前は海!奥駿河湾の静かな海岸

御用邸3-5

こちらは東附属邸連絡口付近からの駿河湾の眺め。この日は雲で見えなかったのですが、右手奥には富士山を望むことができます。

やさしい潮騒と潮の香りを感じながら波を見ていると、心がしんと穏やかに。

なお、西附属邸エリアの富士見ポイント付近は現在工事中で、2024年2月に完了予定。工事完了後は、富士見ポイントからの眺めを楽しめるようになります。

庶民の暮らしの道具が並ぶ沼津市歴史民俗資料館

沼津内浦・静浦と周辺地域の漁具

御用邸4-1

園内の沼津市歴史民俗資料館1階には、重要有形民俗文化財に指定された「沼津内浦・静浦及び周辺地域の漁撈(ぎょろう)用具」が展示されています。

工夫を凝らした道具でマグロなどの大きな魚を獲っていた様子がよく分かり、沼津の漁業の歴史をしみじみと感じました。

ほっとする庶民の暮らしの道具

御用邸4-2

資料館2階には、高度経済成長期以前の生活用具が数多く展示されています。こちらは井戸端での洗濯で使っていた道具。

手押しポンプができる前は釣瓶桶(つるべおけ)で井戸から水を汲んでいたというのは頭で分かっていても、実物を目にすると改めてその大変さを感じます。

他にも台所、居間、囲炉裏端など、生活の場面ごとにたくさんの暮らしの道具が。

西附属邸と同じ公園内にあっても、こちらはとても馴染み深く感じる空間です。

白樺やハマナス、皇族方のお印が刺繍されたお土産

女性皇族のお印が美しく刺繍されたハンドタオル

御用邸5-1

売店では、女性皇族のお印を刺繍したハンドタオルが人気です。

お印は皇族方が身の回りの品に名前を書く代わりにつけるシンボルマーク。美智子様の白樺、雅子様のハマナスなど、植物が多く選ばれます。

沼津市内の歴史ある特殊縫製会社が手掛ける美しい刺繍。花で染め、お印を刺繍したハンカチーフなどもあります。

御用邸カリーや限定お菓子も人気

御用邸5-2

おいしいお土産もあります。「御用邸カリー」は明治後期の料理本を参考に再現した、御用邸造営当時のカレー。

園内の「大正ロマン食堂・娯洋亭」でいただくことができますが、レトルトパックを購入すれば自宅でも楽しめます。

「園生(そのう)の菊」は、公園の秋を彩る菊をイメージしたオリジナルのお菓子。大正天皇が詠んだ歌から命名されました。

静けさと気品に満ちた「沼津御用邸記念公園」

沼津御用邸記念公園を散策すると、歴史ある建物や庭園を満たす静けさの中、心が穏やかになっていくのを感じます。

明治から昭和にかけて激動の時代を生きた皇族方も、きっとここでは心安らぐことができたのでは。

潮騒と松の香りに包まれながら、沼津御用邸記念公園から時間旅行に出かけてみませんか?

「沼津御用邸記念公園」へのアクセス

  • 【営業時間】

    9:00〜16:30(休園日:12/29〜1/3)

    【住所】静岡県沼津市下香貫島郷2802-1

    【入園料】大人:100円(西附属邸観覧料込410円)

    小・中学生:50円(西附属邸観覧料込200円)

    ※団体料金あり、未就学児は無料

    【駐車場】あり、無料

    【公式サイト】http://www.numazu-goyotei.com/

    ※掲載時の情報です。最新の情報は公式サイトをご覧ください。

ライタープロフィール

芦馬 実

芦馬 実

静岡県浜松市出身。現在はフリーランスのライターとして静岡県の魅力を発信中。牛乳やヨーグルト、チーズが大好きで、旅先では地元産の乳製品を必ずチェックする。直売所と道の駅にはついつい寄ってしまう。