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家康40歳で悲願の奪還。難攻不落の山城、掛川「高天神城」を歩く

掛川市|【更新日】2023年12月1日

家康40歳で悲願の奪還。難攻不落の山城、掛川「高天神城」を歩く

「高天神城(たかてんじんじょう)」という城の名を聞いたことはありますか?現在の静岡県掛川市に位置し、徳川氏と武田氏による激しい攻防が繰り返された山城です。

今は木々の中にその痕跡を残すのみですが、お城マニアには人気のスポット。今回は高天神城の見どころをご紹介します。

目次

「高天神を制する者は遠江を制する」と称された城

高天神城を巡る武田と徳川の戦い

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高天神城は掛川駅から南へ10kmほど、今はのどかな田園地帯も当時は遠江の要衝。

いつ築城されたのか不明ですが、戦国時代の1513年には今川氏の家臣が城主となっていました。

1560年の桶狭間の戦いで今川義元が討ち死にすると今川氏は徐々に弱体化。1568年の武田信玄による駿河侵攻で今川氏真が掛川城へ敗走し、高天神城は徳川家康の元に属します。

1574年には武田勝頼が2ヶ月の戦いの末に高天神城を奪いました。

武田家滅亡へのカウントダウンがスタート

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勝頼が高天神城を奪う前年、既に信玄は病でこの世を去っていました。領土を拡大しながらも、一枚岩だった武田家中にほころびが生じ始めます。

1575年の長篠の戦いで敗れ、多くの重臣を失うと武田家滅亡へのカウントダウンがスタートしました。

同年、家康は高天神城の補給路であった諏訪原城を陥落させ、1578年に攻撃拠点の横須賀城を築城。翌年から六砦を本格的に築き、1580年には高天神城の包囲網が完成しました。

包囲網をじわじわと狭める家康の執念

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じわじわと包囲網を狭めていく家康。写真上部中央に丸く見えるのは六砦の一つ、火ヶ峰砦です。

準備が整ったところで、1580年10月から城攻めを開始。兵糧攻めで多くの兵が餓死しました。

城主岡部元信は勝頼に援軍を要請しますが、助けは来ません。降伏と兵の助命を嘆願しても、織田信長が家康に拒否させます。

翌1581年3月、耐えきれなくなった城兵が討って出ますが、もはや徳川軍の敵ではなく、高天神城は落城しました。

標高132メートルの鶴翁山を歩く

地形を巧みに使った山城

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高天神城があったのは標高132メートルの鶴翁山(かくおうざん)。

高い山ではありませんが、急斜面をうまく使って曲輪を配置しているため、守りを固めやすい難攻不落の城でした。

また、東峰の本丸、西峰の西の丸と独立した2つの中枢を持つ「一城別郭(いちじょうべっかく)」と呼ばれる構造を持つのが大きな特徴です。

高天神城跡ハイキングマップをゲット

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駐車場は2つ、南口駐車場は追手門、北口駐車場は搦手門近くにあります。

どちらにも大きな高天神城想像図の看板があり、ハイキングマップの入ったポストが設置されていますので、1枚もらってから出かけましょう。

今川氏家臣で徳川氏に従属した城主、小笠原長忠(氏助)や家康公からのお礼と「怪我をしないよう注意され見学してください」との温かいメッセージも見えますね。

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こちらがハイキングマップ。見どころの説明と場所が書かれており、これがないと見どころをもれなく回るのは難しかったかもしれません。

裏面は周辺案内図になっています。城から少し離れたところにある、落城時の戦死者を埋葬した千人塚などの場所が書いてありますので、体力に余裕のある方はぜひ行ってみてください。

歩きやすい服装は必須。飲み物も忘れずに

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道は舗装されていない所の方が多いです。急な階段になっているところもあり、初心者向けではありますが所要時間1時間ほどのハイキングコース。歩きやすい靴と服装で行きましょう。

自動販売機などはありませんので、飲み物は忘れずに。

体力に合わせて無理なく楽しもう

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では、いよいよ搦手門から入場です。貸し出し用の杖もありますので、必要な方は持っていきましょう。

この先には急斜面が待っていますので、ご自分のペースで無理なく楽しんでくださいね。

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こちらが急な階段の一例。息を切らせながら振り向いて撮った写真です。

この階段がなかった頃、重い具足を着けて武器を持ち、急斜面を駆け登ったのかと思うとそれだけでも大変。

さらに上から矢や石が降ってくるかと思うと、戦国時代に生まれなくて良かったと痛感します。

高天神城アプリでAR・VR体験を楽しもう

出かける前にアプリをダウンロード

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高天神城の公式サイトはとても充実していますので、事前にご覧になることをお勧めします。

サイト内で紹介されている「バーチャル攻略高天神城」アプリでAR体験をすることができますので、使ってみたい方はWi-Fi環境があるところでダウンロードして行きましょう。

高天神城周辺にWi-Fiはありません。

各スポットのARマーカーを探せ

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写真の左下に見えるのがARマーカーです。

城内の9つのスポットに設置されていますので、見つけたらアプリの「AR体験」をタップし、スマートフォンをかざしてカメラでマーカーを読み込みます。

当時の高天神城の姿がよみがえる

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すると、今は何もない場所に当時の高天神城の姿がよみがえります。

こちらはバーチャル追手門。3D画像を見ることで、城があった頃の様子をイメージしやすくなります。

高天神城の見どころを巡る

搦手門から三日月井戸へ

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では、高天神城の見どころを巡っていきましょう。

搦手門からの急な階段を登ると、最初に現れるのはこちらの三日月井戸。岩からしみ出た水が滴り落ち、三日月の形に溜まっています。

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山城で何より重要だったのは水の確保。籠城する場合も、水がなければ長く戦うことはできません。今は金魚がのんびり泳ぐ三日月井戸。のどかな光景にほっとするひと時です。

城内守護の高天神社

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三日月井戸からさらに登ると、西峰の西の丸跡にあるのが高天神社。

城があった時は城内守護を担う神社でしたが、廃城になった後も地域住民の信仰を集めました。

以前は東峰の御前曲輪にありましたが、今から290年ほど前に現在の場所に移されたそうです。

馬場平から遠州灘を望む

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こちらは高天神社の裏手にある馬場平で、城の南側を見張るための場所でした。「馬場」は「番場」の当て字で、見張りの番屋があったと考えられているそうです。

今は展望台になっており、遠州灘まで見渡すことができますよ。

大河内源三郎が7年間幽閉された石窟

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こちらは1574年に武田勝頼が城を制した時、最後まで降伏しなかった大河内源三郎が幽閉された石窟。東峰にあります。

狭い石の牢に閉じ込められ、家康が城を奪還する1581年まで耐えた源三郎は、救出された時には歩くことができなくなっていたそうです。

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「バーチャル攻略高天神城」アプリでは、自分の手で源三郎を救出するというゲームを楽しめます。

ひたすら画面をタップして石窟を破壊しましょう。武士の鑑、源三郎の姿を見ることができますよ。

模擬天守があった御前曲輪跡

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こちらは東峰の頂上近くにある御前曲輪。

1934年に地元の方が2層の模擬天守を建てたのですが、1945年に落雷によって焼失してしまったとのこと。今はその基礎部分だけが顔はめパネルの後ろに残っていました。

高天神城にはもともと天守はなかったのですが、幻の模擬天守がどのような姿だったのか、少し気になります。

戦いの気配を感じるスポット

AR画像を見て倒れた兵たちを思う

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こちらは堂の尾曲輪があった場所。「空堀」の標識はありますが、普通の山の中の小道にしか見えません。

この日は晴れていたので木漏れ日が差して明るく、楽しいハイキング気分で歩いていたのですが…

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アプリで画像を見て、ここが激しい戦闘のあった場所だったことを改めて思い知らされました。

大河ドラマでたくさんの兵が命を落とす戦の場面を見ている時のような、悲しく切ない気持ちになります。

武田家の軍監が馬で駆けた「甚五郎抜け道」

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こちらは馬場平の奥から城外に続く甚五郎抜け道。

1581年の落城時、武田家軍監の横田甚五郎は勝頼に報告するため、険しい尾根の道を馬で駆けて脱出しました。命がけで戻った甚五郎に勝頼は褒美を与えようとしましたが、「負け帰って褒美をもらっては筋が通らない」と受け取らなかったと伝わります。

この道は別名「犬戻り猿戻り」と呼ばれる難所。尾根道の脇は険しい崖になっていますので、登山の装備が必要です。

穏やかな田園に佇む城跡に想像力が掻き立てられる

戦国時代には遠江の要衝として争奪戦が行われた高天神城は、徳川家康が廃城とし、以後は横須賀城が政治の中心となっていきました。そのため建物は残っていませんが、森の中には堀切などの遺構が多く残ります。

高天神城アプリの力を借りれば、往時の城の姿を見ることも可能。そこで繰り広げられた戦いに想いを馳せながら、戦国時代にタイムトリップしてみませんか?

高天神城へのアクセス

  • 【住所】静岡県掛川市上土方嶺向3136

    【駐車場】あり、無料

    【公式サイト】https://takatenjinjyo.com/

    ※掲載時の情報です。最新の情報は公式サイトをご覧ください。

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ライタープロフィール

芦馬 実

芦馬 実

静岡県浜松市出身。現在はフリーランスのライターとして静岡県の魅力を発信中。牛乳やヨーグルト、チーズが大好きで、旅先では地元産の乳製品を必ずチェックする。直売所と道の駅にはついつい寄ってしまう。