ガラスのふるさと西伊豆。涼を運ぶ「宇久須神社」の青い風鈴
西伊豆町|【更新日】2024年6月19日
宇久須神社(うぐすじんじゃ)は、伊豆半島西海岸の西伊豆町にある古い神社。
2022年から、拝殿に青い風鈴を飾り付ける催し「風鈴神社」が行われています。
宇久須を見守り続ける神社での新しい試み。その不思議な魅力をご紹介します。
目次
ガラスのふるさと宇久須を見守る神社
西伊豆町宇久須はガラス原料の産地
今からおよそ1世紀前、1933年のことです。当時の宇久須村で、ガラスの原料であるケイ石の鉱床が発見されました。
小さな村はガラス原料の一大産地になり、採掘は1989年まで続きます。宇久須村で“会社”といえば採掘事業所を指すくらい、たくさんの村人が働いていたそうです。
いつ創建されたかわからない古社
宇久須神社は宇久須地区を古くから見守る神社。
927年、平安時代中期の文献「延喜式神名帳(えんぎしきじんみょうちょう)」に記載があることから、創建はそれ以前と考えられます。
本殿は1598年、安土桃山時代に造営されています。
宇久須の人に愛され続ける総鎮守
明治7年に「宇久須神社」に改名するまで「宇久須大明神・三嶋大明神」と呼ばれ、農業・漁業・商業の神様として親しまれてきました。
本殿入り口の唐獅子と龍の彫刻は、お隣の松崎町生まれの名工、石田半兵衛作。江戸時代のものです。
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人の輪が生み出す古い神社での新しい試み「風鈴神社」
ガラスのふるさとの西伊豆硝子舎
宇久須でのガラス原料の採掘は昭和の時代と共に終わりましたが、それと前後して「ガラス文化の里づくり」がスタート。
町内にガラス作家が移住し、それぞれの工房で創作活動を開始しました。また、ガラス文化の発信拠点として黄金崎クリスタルパークが誕生。
西伊豆のガラスの魅力を伝えるため、3つのガラス工房と黄金崎クリスタルパーク、関係機関がタッグを組み、「西伊豆硝子舎」として活動しています。
神様に風鈴の音色を奉納しよう
西伊豆のガラス文化のシンボル「かも風鈴」。
西伊豆の夕陽や、漁港で使われていた浮き球、海や空などをイメージした風鈴は、各地の風鈴市で人気を集めます。
西伊豆硝子舎は「ガラスのふるさとを見守る神様に風鈴の音色を奉納しよう」と、2022年から宇久須神社拝殿に風鈴を展示する「風鈴神社」を始めました。
西伊豆の空と海の青
神社拝殿を飾るのは、3つのガラス工房が作る240個の青い風鈴。
西伊豆の空と海の色です。
一言で“青”といっても、透明感のある淡い水色、鮮やかなターコイズブルー、深い藍色など、色合いは様々。
時間や場所で色を変える、空や海を見ているようです。
小さな町だからこその一体感
宇久須神社に風鈴を飾る「風鈴神社」は、町の人の協力あってこそのもの。
毎日の拝殿の開け閉めだけではなく、風が強くなれば風鈴が割れないように気を配ってくださるのは、神主さんや世話役さん。
御朱印の台紙を作るのはガラス作家さん。可愛らしい恵比寿様はのぼりや横断幕にも登場します。達筆の毛書も作家さんによるものとのこと。
風鈴の短冊の「風鈴神社」の文字は、近所の習字の先生が書いてくださったそうです。
御祈祷を受けた88個の風鈴は完売
2022年に「風鈴神社」を開催したところ、「飾られている風鈴がほしい」という声がたくさん寄せられました。
そこで2023年は神社で御祈祷を受けた88個の風鈴を販売することに。
御祈祷後、風鈴はこちらのリヤカーで引き売りされながら黄金崎クリスタルパークまで運ばれました。
パークに届くのが待ちきれず、リヤカーを探しに行った方もいらっしゃったとか。6月10日に販売を開始した風鈴は、7月末に完売しました。
全身でそよ風を感じる不思議な空間
目と耳と肌で涼風を感じる
当日はあまり風が吹かない、暑い夏の日。神社の境内は蝉時雨に包まれていました。
拝殿の中で待っていると、一つ、二つ、チリンチリンと小さな音が聞こえてきて、やがてたくさんの風鈴が短冊をなびかせながら鳴り始めました。
不思議なことに、あれだけ大きかった蝉の声が耳につかなくなり、肌に涼しい風を感じます。
しばらくすると風鈴の音はだんだんとまばらになり、代わりに蝉の大合唱が復活。暑い空気が周りに戻ってきました。
神様のお使いの笑い声?かわいい音色を楽しもう
この日、最初に風鈴の音色を聞いたのは、本殿の神様にご挨拶した少し後のことでした。
240個の風鈴は大きさや形がまちまちなので、音色も違います。
一つずつの音色はチリンチリンなのですが、それがたくさん重なると、目に見えない小さな何かがキャッキャと楽しそうにおしゃべりしているよう。
神様のお使いの笑い声なのでしょうか。
参拝者へのやさしい心遣い
拝殿には、うちわが何枚か置いてありました。
暑いときに使ってくださいということかと思っていたのですが、たまたま居合わせたご家族連れの男の子が気付いて、正解を実演。
待っても待っても風が吹かないとき、うちわで風鈴を鳴らしてくださいねという心遣いです。
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日本の夏の原風景、初めてなのに懐かしい景色
美しい緑に囲まれた境内
神社の境内には相当樹齢が古そうな大木が何本かあり、周りをぐるりと美しい緑が囲みます。暑くても木陰に入ればほっと一息。
周りの山の緑もしたたるように濃く、夏の青空、白い雲とのコントラストが鮮やかでした。
大切にされているお地蔵さん
境内の入り口、大きな鳥居の隣には小さなお地蔵さんが。
いつ頃からいらっしゃるのか、お顔の目鼻は見えなくなっていますが、帽子と前かけの赤い色が鮮やか。大切にされていることが伝わってきます。
これからもずっと、地域の方々や子供達を見守り、神社の参拝者を出迎えてくれることでしょう。
境内社の柴山神社
神社本殿の横には、ちょこんと境内社の柴山神社が佇んでいました。
鳥居もお社もこじんまりとコンパクトサイズ。丸々太った赤い鯉の花入れ、レトロでかわいらしかったです。
清らかに流れる宇久須川
神社の北側には宇久須川が流れています。
赤い鳥居のすぐそばにある鳥居橋から川を見下ろすと、水が澄んでいて川底の石がきれいに見えました。
聞こえてくるのは川のせせらぎと鳥のさえずり、蝉時雨。子供の頃の夏休みを思い出す空間です。
車で訪れるときのポイント
ナビで表示されない場合は…
車のナビによっては、「宇久須神社」や住所を入力しても場所が表示されない場合があるかもしれません。
そんなときは「入谷地区集会所」を入力してみてください。上の写真の右側、神社の南向かいにある白い建物です。
なお、Googleマップでは宇久須神社が表示されます。
国道136号線を「宇久須南」交差点で東へ
伊豆半島西海岸を走る国道136号の「宇久須南」交差点で東に曲がります。交差点の北側にあるセブンイレブンが目印です。
交差点を曲がると県道410号に入り、1.3kmほど東に道なりに進みます。
橋を渡ったら左側に注意!古い鳥居とのぼりが目印
県道410号で大久須川を渡る橋を越えたら、左側に注意!
橋から70mほど進んだ道の左側に変形三叉路があり、木々が茂る中、古く小さい石の鳥居とのぼりがチラリと見えます。
この変形三叉路を鋭角に左折します。
赤い鳥居を車でくぐって境内に駐車
変形三叉路を左折後、40mほど進むと右手に大きな赤い鳥居が見えます。
この鳥居を車でくぐって境内に進入し、空きスペースに整列して駐車しましょう。
静岡県のドライブは レンタカーがおすすめ
写真や動画では伝えきれない!現地で体感しよう
宇久須神社の拝殿の風鈴展示、「風鈴神社」は2024年は9月23日まで開催されています。
なお、2025年の開催については今後検討されるとのこと。
古くから地域を見守る神社の雰囲気や、青い風鈴の音色、風の感触。ぜひ、現地へ行って体感してみてください。
宇久須神社へのアクセス
- 【住所】
静岡県賀茂郡西伊豆町宇久須1269-1
【風鈴神社の開催期間】2024年9月23日まで
【風鈴神社の時間】8:00〜17:00頃(時間はおおよその目安、前後することあり)
【駐車場】あり、無料(神社境内の空きスペースに整列して駐車してください)
【お問い合わせ】0558-55-1515(黄金崎クリスタルパーク)
【公式サイト】https://www.nishiizu-kankou.com/sightseeing/ugusujinjya
(※西伊豆町観光協会)※掲載時の情報です。最新の情報はサイトをご確認ください。





















